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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第18章 雄光
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虚と実の世

登場人物

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。萬軍八極ばんぐんはっきょくの極主。

元緒げんしょ…………方士。介象の師であり、初代の介象。

娄乾ろうかん…………剣の手練者てだれあやかしの虎憑耳こひょうじしもべに持つ。曳影えいえいの剣をびている。萬軍八極の壱。

鄒兌すうだ……医のの生娘。妖しの月兔げっとを僕に持つ。萬軍八極の弐。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極の参。

韋震いしん…………双短剣の使い手。妖しの雷公らいこうを僕に持つ。萬軍八極の肆。

裴巽はいそん…………げきの手練者。妖しの飛廉ひれんを僕に持つ。萬軍八極の伍。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者。妖しの短狐たんこを僕に持つ。萬軍八極の陸。

花艮かごん…………まさかりの使い手。妖しの山操さんそうを僕に持つ。萬軍八極の漆。

丘坤きゅうこん…………美質な弓の名手。妖しの狻猊さんげいを僕に持つ。萬軍八極の捌。

貔貅ひきゅう…………萬軍八極が異界より召喚した戦闘に優れる妖し。萬軍八極の玖。


蚩尤しゆう…………邪神。


陽虎ようこ…………三公に仕える国の若き重臣。

「その時は、また、介象かいしょうさまの許に集まれば良いじゃない。ねえ、鄒兌すうだ?」

「合点!」

 丘坤きゅうこんは、鄒兌に笑みを向けた。

「その時まで、何を如何どうすれば良いのだろうか……?」

「何もしないさ、花艮かごん。普通の生活に戻って、悪さをする人やあやかしを見聞きすれば、萬軍八極ばんぐんはっきょくとしてやいばを振るうだけだ。……介象さまのようにな」

 途方に暮れる花艮に、裴巽はいそんが胸を張って告げた。

「……そうだな。それが、私たちの指針だろう」

 長髯ちょうぜんなびかせた藺離りんりが、満足げに頷首がんしゅした。

い」

 集った萬軍八極たちを前に、元緒げんしょは眼を細めた。安堵あんどの溜息をひとつ漏らすと、霊亀の姿に変じ介象かいしょうの肩に飛び乗った。

「俺からも、皆に伝えねばならぬことがある……」

 萬軍八極の視線が集まった。その視線の先の介象には、労いの微笑が浮いていた。


 血生臭い宮廷は、閑散としていた。

 誰人だれも居なくなった玉座の間に、西日を受けた陰がひとつ、長く伸びていた。

 朝服をまとっている。文官にしておくには惜しいほどの巨漢、陽虎ようこだった。まるで、表情がない。その陽虎が、おもむろに腰を下ろしたのは玉座だった。

何故なにゆえ蚩尤しゆうは、彼奴きゃつらに手を下さなかったのだ……?」

 陽虎は、てのひらを組み合わせて前のめりとなると独語した。

 すると――。

 宮廷が揺れた。揺れたと思えば、土台が二段に隆起したような宮廷が沈んだ。いや、宮廷が沈んだのではない。地盤が元の位置に戻ったのである。

 陽虎は、察した。国の三公が平伏ひれふした得体の知れない異形の者が、謎めいた介象と萬軍八極なる者に敗北したということを――。

 微動もせず、組み合わせた手に視線を落としていた陽虎は、きっと、顔を上げた。鋭い眼付きで玉座の奥を睥睨へいげいした。

「虚と実、嘘とまことが定かならぬ世ならば、本音で生きてみるか……」

 横から陽虎を照らす斜陽が、その眼をあやしく光らせていた。

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