西日、赫く
登場人物
介象…………方士。干将、莫邪、眉間尺の三剣を佩びる。萬軍八極の極主。
元緒…………方士。介象の師であり、初代の介象。
娄乾…………剣の手練者。妖しの虎憑耳を僕に持つ。曳影の剣を佩びている。萬軍八極の壱。
鄒兌……医の徒の生娘。妖しの月兔を僕に持つ。萬軍八極の弐。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極の参。
韋震…………双短剣の使い手。妖しの雷公を僕に持つ。萬軍八極の肆。
裴巽…………戟の手練者。妖しの飛廉を僕に持つ。萬軍八極の伍。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。萬軍八極の陸。
花艮…………鉞の使い手。妖しの山操を僕に持つ。萬軍八極の漆。
丘坤…………美質な弓の名手。妖しの狻猊を僕に持つ。萬軍八極の捌。
貔貅…………萬軍八極が異界より召喚した戦闘に優れる妖し。萬軍八極の玖。
蚩尤…………邪神。
「俺は、お前より剛健。それに、萬軍八極も居る。幾度、世を邪に陥れようとも、その度に俺たちがお前を挫く」
「正気か、貴様……?」
「俺は、更に強くなる。お前を封印しては、その差が開くだけだろう」
「…………」
蚩尤の面貌に、微笑が刷かれたように見えた。
「……儂は……常に貴様を見ているぞ、介象」
「望む処」
蚩尤は、介象に背を向けた。
「……赫胥を頼む」
「うむ」
ふっと、蚩尤の姿が消えた。
西日が、原野を赫く照らしていた。
「お願い、月兔!」
十二体が総出だった。
原野を跳ね飛んでいたのは、黄金色に輝く月兔だった。次々と萬軍八極たちの躰に飛び込んで消えている。
鄒兌の傷は塞がっていた。そればかりではない。気力、体力は回復し、同志の治療に惜しげもなく霊気を練り上げている。
介象は、元気な乙女の鄒兌を眼に、干将と莫邪の剣を鞘へ収めた。腰に佩びた三振りの剣の鞘が互いに触れ合うと、カチリと音を立てた。
深手を負った貔貅も、鄒兌に安堵の笑みを向けると、その姿が薄くなって消えた。元緒の胸元の木札に自ら還った。
「……俺たちは、蚩尤に勝ったのか?」
地に胡座した韋震が、誰人にともなく訊いた。
「蚩尤を封印してはいないが、我らは誰人も失っていない……。それが答えだ」
気の抜けたような娄乾が、夕陽に眼を凝らしていた。
「けどよ、またいつ蚩尤が悪さをするかわからねえぜ?」
矛を肩に掲げた欧陽坎が、娄乾に身を寄せた。




