性善の灯り
登場人物
介象…………方士。干将、莫邪、眉間尺の三剣を佩びる。萬軍八極の極主。
元緒…………方士。介象の師であり、初代の介象。
娄乾…………剣の手練者。妖しの虎憑耳を僕に持つ。曳影の剣を佩びている。萬軍八極の壱。
鄒兌……医の徒の生娘。妖しの月兔を僕に持つ。萬軍八極の弐。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極の参。
韋震…………双短剣の使い手。妖しの雷公を僕に持つ。萬軍八極の肆。
裴巽…………戟の手練者。妖しの飛廉を僕に持つ。萬軍八極の伍。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。萬軍八極の陸。
花艮…………鉞の使い手。妖しの山操を僕に持つ。萬軍八極の漆。
丘坤…………美質な弓の名手。妖しの狻猊を僕に持つ。萬軍八極の捌。
貔貅…………萬軍八極が異界より召喚した戦闘に優れる妖し。萬軍八極の玖。
蚩尤…………邪神。
「一度だけではない。ひとりの性善、その灯りが、性悪という闇を飲み込むように、隅隅へ押し遣るのを見た」
「――――⁉」
蚩尤の頬が、ぴくりと動いた。
「性悪を平らげる気などない……」
云った介象に慈しみの眼差しを注いだのは、元緒だった。
「性善の人、その灯りを広げてやるのが俺の仕事だ、蚩尤」
「戯言だ――‼」
蚩尤は、呶鳴った。悪鬼の形相となると、空いている掌を全て貔貅に向けた。
「非力な奴が何を云おうと、何も変わらぬ‼」
蚩尤の掌に、鋭い風の蜷局が巻いた。摚っと放たれると、四つの渦のような飛弾が貔貅の躰を穿った。
「貔貅――‼」
元緒が声を荒らげた、その刹那だった。
ふうっと、闇の空間に現れたのは、獅子のような頭だった。
「――――⁉」
それは、蚩尤の意表を衝いた。
「何故、此処に――⁉」
狻猊――。その口が開くと、鋭い飛矢が走った。その矢が、闇の空間に突き立った。そこから亀裂が入ると、闇の空間が硝子のように割れて消えた。
元緒と貔貅の躰が腰から地に落ちた。その衝撃で、貔貅の三つ編みが解れた。
すっくと着地したのは、蚩尤と介象だった。
蚩尤は、辺りを睥睨した。烏号の弓を持った丘坤を視界に入れると、臍を噛んだ。
辺りに倒れ伏した手負いの萬軍八極が、挙って介象に注視する。
「か、介象さま……」
左に掲げた莫邪の剣が、眩いほどの光彩を放つと、共鳴したように右に持った干将の剣も燦燦たる輝きを放った。
百ほどもある。放つ光は神神しかった。朱色に輝く拳大の玉は、旋風の勢いで縦横無人に蚩尤の周りを飛翔している。
「…………」




