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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第18章 雄光
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光明、遥か

登場人物

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。萬軍八極ばんぐんはっきょくの極主。

元緒げんしょ…………方士。介象の師であり、初代の介象。

娄乾ろうかん…………剣の手練者てだれあやかしの虎憑耳こひょうじしもべに持つ。曳影えいえいの剣をびている。萬軍八極の壱。

鄒兌すうだ……医のの生娘。妖しの月兔げっとを僕に持つ。萬軍八極の弐。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極の参。

韋震いしん…………双短剣の使い手。妖しの雷公らいこうを僕に持つ。萬軍八極の肆。

裴巽はいそん…………げきの手練者。妖しの飛廉ひれんを僕に持つ。萬軍八極の伍。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者。妖しの短狐たんこを僕に持つ。萬軍八極の陸。

花艮かごん…………まさかりの使い手。妖しの山操さんそうを僕に持つ。萬軍八極の漆。

丘坤きゅうこん…………美質な弓の名手。妖しの狻猊さんげいを僕に持つ。萬軍八極の捌。

貔貅ひきゅう…………萬軍八極が異界より召喚した戦闘に優れる妖し。萬軍八極の玖。


蚩尤しゆう…………邪神。

 干将かんしょう莫邪ばくやの剣を両翼にしたような介象かいしょうが、蚩尤しゆうを狙い澄まして跳ね飛んだ。

 斬られた蚩尤の腕が、瞬く間に再生する。胸元に合掌を三つ作った。念じる。

 すると――。

 足場がない。からだは宙に浮いたままのようだった。辺りは、漆黒の闇。だが、遠くに綺羅きらとした星星ほしぼし、惑星、そして、銀河が見える。それは、無限の空間だった。

「――――⁉」

 驚きの形相ぎょうそうとなった貔貅ひきゅうは、言葉を失った。

「な、何じゃ――⁉」

 元緒げんしょは、泡を喰ったように慌てふためいた。

「…………」

 干将と莫邪の剣を両手にかざした介象が、蚩尤の頭上を浮遊している。

「いつの世になっても、わしに楯突くと云うのか、介象?」

 蚩尤は、頭上に浮く介象を見上げた。六つの眼が、輝きのくすんだ星のように見えた。

「お前のき散らすよこしまが、世に蔓延はびこる限りな」

 介象の面貌めんぼうが、不敵に歪んだ。

「儂が邪の根源だとでも思っているのか? 邪の根源は人。人というものは性悪だ。かつては純朴だったあやかしでさえ邪に飲まれた。その邪の根源をもてあそんで何が悪い?」

「全ての人が性悪なのではない。性悪が性悪を生んでいるだけだ」

「それを平らげるのが、貴様の仕事ではないのか、介象?」

 薄ら笑った蚩尤は、介象と元緒を交互に見遣みやった。

「左様。じゃが、お前は、性悪が性悪を生むのをしとした上、性悪と性悪、人と人が争うのを愉悦とした。お前を封印せねば、この連鎖が止まらぬということがわからぬか、蚩尤?」

 蚩尤の前方で、横に傾いた元緒の眼差まなざしは、冷然としていた。

「儂が手を下さずとも、人は人をほふる。儂よりも薄汚く、狡猾こうかつな手を使い、人は人をおとしめる。性悪は欲を生み、欲は性悪を生む。過去、現在、未来、いつの時代もおぞましい生き物が性悪、人というものだ」

「それでも、人というものに、俺は、光明を見る」

「…………」

 蚩尤は、憮然ぶぜんとした。

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