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終章


「契約内容の再確認を要請します。」


「いいだろう。」


ラブラブになった相川と吉塚がイチャイチャしながら濱咲家を去っていった後、花乃と那津は契約書を机の上に置き、真剣な眼差しで話し合いを始めた。


「ではまず第一条。結婚適齢期を迎えた甲乙が周囲からの期待にこたえるため、本契約を結ぶこととする。ここはわかります。第二条の1月15日より一年間とする、というのもわかります。」


「ちなみにこの契約は自動更新だ。契約を打ち切る場合は事前の申告が必要とする。」


「わかった。」


花乃は付箋にメモを取る。そして、契約書の第二条の横にぺたりと貼った。


「問題は次です。」


「そうだな。」


「第三条、互いの自立した経済を保つため、各々管理すること。お金は共有しない。ここは今まで通りでいいですね。」


「ああ。構わない。」


「次です。第二項、性的な行為を強要しないこと。また、恋愛感情による独占はしない。」


「俺が花乃を好きになるのも、花乃が俺を好きになるのも契約で止められるものじゃないだろ。だからそこまでの制約はない。でも好きだから、結婚してるから、と言って相手を束縛することはできない。」


「うーん……。わかった。じゃあ私は勝手に那津の心配して質問する。だからもし契約違反になりそうだったら、言ってね。そうやって見極めていくよ。」


「それはいいな。独占って人によって違うかもしれないしな。」


そして花乃はまた付箋にメモを書いて貼る。


「じゃあ最後は第四条ね。これもまあわかるからいいでしょう。」


「よし。じゃあ契約続行でいいな?」


「はい!よろしくお願いします。」


花乃は元気よくそう答えた。

那津はその答えに満足そうに笑う。


『私も焦ったよ。焦ったから、結婚しちゃったの。だからね、この結婚はみんなが想像するような幸せな正しい結婚じゃないの。』


迷って、悩んで、そして選んでいく。

この契約結婚は、自分が選んだ道。

ならば、自分はこの契約に胸を張って生きていこう。

自分が選んだ道は、自分くらいは信じてあげよう。


そう、思っていたのに。

花乃は那津を見た。

契約書を丁寧にファイルになおしている那津は、花乃の視線に気付いてはいないようだった。那津はファイルにとじた契約書をじっと見つめている。

花乃はもう一度契約書に視線を落とす。


ーーこれがなければいいのに。


気持ちはいつの間にか変わっていく。

契約だけの関係に、いつか満足できなくなるかもしれない。



けれど、それはもう少し先のお話。



青く澄み渡る空。季節はもう春だった。

2人の幼馴染みの指には、指輪がきらり、日の光を浴びて、輝いていた。



幼馴染み2人の結婚生活はまだ始まったばかりである。






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