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【暴力】で全てを破壊する転生悪役令嬢、精霊の加護が全ての世界で婚約破棄される  作者: 殿海黎
第三章 血戦闘技会編

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第十三話 ギルマスの旅路




 ある意味では、和気藹々と旅するスミスとカノンとは打って変わって。


 クリスに引き摺られて旅立ったギルマスの旅路は散々だった。



「――さあ、掛かってきなさいな」


 クリスはギルマスと対峙し、クイッと手を拱いてから言う。



 ギルマスは何も言い返す事無く――架空の剣を抜き、魔闘術を発動。


「義唱剣……秘剣『嵐』」


 そして、義唱剣の技を発動する。



 一瞬の内に、複数の角度、方向から薙ぎ払いを行い、荒れる暴風のような不規則的な連続攻撃を放つ技である。


 この、常人であれば同時に幾つも切られた、と勘違いするほどの剣戟を、なんとクリスは指一本で全て受け止めて見せる。



「遅い」


 言うと、クリスはギルマスの架空の剣を受け止めつつ、グワンッと絡め取り、そのままギルマスごと纏めて地に伏せさせた。



「グッ!?」


 勢いのあまり、地面に叩きつけられそうになったギルマスは、何とか踏ん張って受け身を取り、ドッと背中から着地する。


 そんなギルマスの様子を見ながら、クリスは課題について告げる。



「技の起こりのその前……斬ると意識するその漠然とした気配が先に到達する。


 ギルマスの場合、それがまるで素人同然のレベルで先に到達していますので、どれだけ剣速を高めようとも、容易く防がれ、先読みされてしまうのですわ。


 これだけ技を極めておいて、このようなことは本来ありえないのですが……腑抜けと呼ばれるのも納得の有り様ですわね」


 クリスは呆れるように言うが、ギルマスもこれは自覚しており、反論する気も起きなかった。



 ギルマスは、本心として力を振るうことに迷いがある。


 それも、トラウマと呼んで良いレベルの強い迷いが。


 故に――実際に剣を手にしてしまうと、振ることすら躊躇してしまう程だから、たとえ無手であろうとも、意識に身体が即応するほどの、あるいは意識の発生をギリギリまで抑え込めるほどの、鋭く研ぎ澄まされた感覚に入れないでいた。



 要するに、この期に及んで本気で戦う気が無いのだ。


 だから、意識が研ぎ澄まされておらず、身体を動かすよりかなり早く気配が飛んでいってしまう。


「これは荒療治が必要そうですわね」


 はぁ、とため息を吐くクリス。



 ギルマスは立ち上がり、もう一度手合わせを願う。


「悪いな、嬢ちゃん。


 次は全力でやる、相手してくれねえか」



 これに、クリスはニコリと笑って応える。


「当然です、むしろ覚悟をしておいて欲しいですわね――わたくしがわざわざ、荒療治と言い切ったことの意味について」



 こうして、二度目の手合わせが始まる。


 ギルマスは、半端な技では先読みされ、防がれることを理解した。


 であれば――先読みされようとも当たる、防ぎようのない一撃でクリスを追い詰めることが出来れば良い、と考えた。


 故に、次に選んだ秘剣は。


「――秘剣『星喰(ほしはみ)』」


 義唱剣、奥義の一つとも言える技であった。



 ――通常、人は大なり小なり、気配というものを感じ取りながら生きている。


 何か目で見ておかしなことが無いような状況、場所であっても、なんか嫌だ、気持ち悪いといった直感が働く場合がある。


 このような危機を感じ取る能力に、例えば目に強烈な光を見せて目眩ましをする時のように、強い殺気や覇気をぶつけることで、意識を眩ませる。


 これが、秘剣『星喰』の第一段階。



 そして瞬時に気配を――意識を殺す。


 つまり強烈な光に目が眩んだ後、また暗闇の中に戻るようなもので、これをされることで人の感覚は狂う。


 目が狂って視界を失うなら、危機を感じ取る直感が狂って失うものは何か?


 即ち――危機感。


 この第二段階を経て、相手の危機感そのものを殺すことが、秘剣『星喰』の中核を成している。



 そうして最後の、第三段階、秘剣『一閃』で使うような、爆発的な出力による神速の剣技にて、相手の意識、危機を感じ取る能力を殺すと同時に斬りかかる。


 これは言うなれば、気配をコントロールすることで、正面から、眼の前で不意打ちを行うような技である。


 それも、単に不意打ちをするのでは無く――危機察知能力を殺されている以上、意識的な防御はもちろん、無意識的に発動している身体強化等の防御能力すら失う。



 つまり――秘剣『星喰』とは、危機察知能力を殺すと同時に神速の剣技で斬りかかる、防御無効化の秘剣なのだ。



 ギルマスは、クリスがこれで死ぬような相手ではないと理解していた。


 だが、怪我ぐらいならしても構わない、というぐらいの意識で、全力で技を仕掛けた。


 そして――踏み込み、クリスの眼前で架空の剣を振り抜いた瞬間。


「――温いッ!!」



 なんとクリスは、これにかち合わせるように拳を振り抜いてきたのだ。


 正面からギルマスの架空の剣を、凝集された魔闘術の力を、拳一つで粉砕し――そのまま、ギルマスへと打ち付ける。



 回避も、防御も不可能であったはずの一撃が、正面から打ち破られた。


 そしてギルマスは無様にも……クリスから回避不能、防御不能の拳を受け、吹き飛ばされるのだが、容赦の無い一撃は、とっくにその意識を刈り取っていた。



 意識の無いギルマスは、十メートル以上は吹き飛び、バンッ、バンッと地面で何度も跳ねて、ようやく止まる。


「――さて、この調子でどんどん行きますわよ」


 聞いてすらいないギルマスに向かって、クリスは無慈悲な宣言をするのであった。

☆一口メモ☆


ギルマスの技、グリフォンぐらいなら一撃で殺せるぐらいの威力があります。


そう、あのグリフォンすら一撃でね……

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