第四十五話 近代兵器VS無刀の剣聖
戦闘開始、黒尽くめによる攻撃が始まる。
彼らは事前に用意していた――地球におけるアサルトライフルに似た銃火器を幾つも構え、ギルマスに向けて斉射する。
点では無く、面を制圧する射撃は……弾丸が特殊な加工を施された魔道具でもある為、魔力と闘気、どちらの身体強化に対してもある程度の貫通力を持ち、防御を貫く。
「秘剣、『斬水』ッ!」
ギルマスは、眼の前の地面を斬りつけ、土煙を上げる。
力を伴った土煙は、弾丸に対する壁となって成立するが、しかし一時的なものに過ぎず、一定数の弾丸を防いだ後は、力が霧散し、一秒にも満たない時間を稼ぐことしか出来なかった。
続けて襲いかかる弾丸を、架空の剣で切り捨てるのだが、それでも全ては排除出来ず、直撃を受けてしまう。
ただ、ギルマスが身体に纏う魔闘術は、並外れた出力を持つ。
弾丸が身体を雨あられのように打ち付けるが、それでも傷を付けるには至らない。
とは言え、断続的に魔力、闘気のどちらも削られ、弾丸が衝突することによるダメージもあるため、いつまでもこの状況を続けるわけには行かない。
そして……人質が居る以上、生半可な打開策を取ることも出来ない。
必要なのは、一瞬にして、一撃で、確実に人質の安全を確保すること。
その手段を、チャンスを探りながら、ギルマスはただ弾丸を耐えるしか無かった。
ここで、続けて黒尽くめがさらなる攻め手を繰り出す。
「今だ、捕縛せよ!」
号令に応じて、銃を手にしていなかった黒尽くめが新たな武器を取り出す。
それは――地球におけるネットランチャーと呼ばれる武器に近いものであった。
ただし、射出されるのは単なる捕縛網ではなく、大型魔物を想定した、電撃等の魔術でダメージを与える、魔道具としての効果を持つ網だ。
これを、黒尽くめ達は弾丸斉射で身動きの取れないギルマスに向けて、幾つも発射する。
「甘いッ!!」
飛んでくる網を、先手を取って次々と切り落とすギルマス。
だが数が多く、銃弾による邪魔もあって一発だけ、網が展開した状態で接近することを許してしまう。
だが、これでもギルマスは慌てて居なかった。
「――秘剣『螺旋』ッ!」
言うと、ギルマスはその場で回転する動きを見せ、同時に架空の剣を切り上げるような動作をする。
素早い回転の加速を剣速に加えることで――超至近距離であろうとも、十分な威力の伴った斬撃を放つ技であった。
眼前まで迫った網を、ギルマスは器用に切り裂き、吹き飛ばす。
とは言え――既に展開していた網の魔道具は、魔物想定の出力の電撃を放っており、魔闘術により形を持った非実在の剣を伝い、ギルマスにダメージを与えることには成功していた。
魔闘術で身体を強化し、守られているとは言え――ビリビリと、腕が震える程度のダメージが通っており、何度も同じ攻撃を受けるわけにもいかない。
いい加減、状況を好転させる一手を撃たねばならず、ギルマスは打って出ることにした。
――秘剣『一閃』、その速さで目にも止まらぬ内に人質周りの黒尽くめを斬り伏せつつ、人質を縛る縄も斬り、解放する。
銃弾は自分の身体と秘剣『斬水』で防げば、人質に当たることを防げるはず。
甘い目算ではあったが……待てば待つほど状況は悪化する為、躊躇い悩む余裕も残されていない。
ギルマスは、意を決して攻めに転ずる。
「――秘剣『一閃』ッ!!」
横一文字に相手を斬り付ける、神速の技でもって、黒尽くめへと迫る。
だが……これを黒尽くめは想定済みであった。
黒尽くめ、そして人質の近くへと踏み込んだ瞬間――ギルマスの足元で、魔術が発動。
強力な指向性を持った爆発を起こす兵器、つまり地雷に相当する魔道具が地中へ仕込まれており、ギルマスはこれを踏み抜いてしまったのだ。
ドォンッ、と爆発に巻き込まれたギルマスは、そのまま攻め込むことも出来ず、咄嗟に後退する。
「……チッ!」
傷は魔闘術のお陰で軽く済んだものの、出血を起こす程度には足を負傷してしまった為、多少なりとも機動力を削がれる形となる。
舌打ちしながらも、次の手を考えるギルマスであった。
この時――人質となっていた人々の中の一人は、後にこう証言した。
「ギルドマスターは、明らかにやりづらそうでした。
多分、私たちの安全を第一に考えてくれているというのが、なんとなく分かりましたので。
素人目に見ても……ギルドマスターは、私たちに傷一つ付けないことを第一に考えて行動していることが分かりました。
恐らく、万が一があっても仕方ない、と割り切ることが出来ていれば、あの一瞬で距離を詰める技で、戦いを素早く終わらせられたんだと思います。
ですが、それだと私たちが見せしめに傷つけられたり、戦いの余波に巻き込まれて、流れ弾で怪我をする可能性を否定できなかった。
だから自由に戦えなかった。
きっと、あのまま自分がどれだけ負傷しようとも、最後まで私たちを無傷で助ける手段を探してくれたんでしょうね。
そういう意味では、見捨てられることは無いんだな、という安心感はありました。
とはいえ、状況が良くないことは、私たちにも分かっていたので……ギルドマスターが勝つことを、必死に祈るばかりでした。
ただ、その祈りは届いたんです。
ギルドマスターが屈する前に――救世主が現れたんです」
☆一口メモ☆
魔力と闘気をあわせて発動する魔闘術は、二つのパワーを足しただけじゃないぞ! さらに大幅アップだ!!




