第四十四話 犯行声明
翌日、ギルドにて、ギルマスはフロリーナから報告を受ける。
「ギルマス~、昨日の変な集団から犯行声明が届いてますよ~」
まるで昨日の、黒尽くめ達との戦いの現場をその目で見てきたかのようなフロリーナの言い草に、ギルマスは顔を顰める。
「お前……見てたのか?」
「え、見てないとダメでした?」
まるで見て無くても分かるに決まっている、と言わんばかりのフロリーナの言い草に、ギルマスはため息を吐く。
とはいえ、フロリーナの正体は相当な上位の精霊であり、こういった理屈を真面目に考えるだけ無駄である為、ギルマスは諦めて犯行声明とやらを受け取った。
そこには――昨日の黒尽くめ達によるものと思われる、ギルマスへの要求が書かれていた。
「街の一般市民を無作為に人質に取った。
望むことがあるならば、我々の指定する場所に姿を見せろ……か」
言って、ギルマスは犯行声明の書かれた文書の続きに目を通し、指定の場所というのがファウンダリアの一角にある廃工場であることを確認した。
「……しかし、妙だな。
いくらここが辺境とはいえ、帝国暗部が市民を人質に取ってまで、こんなに堂々と暴れるようなことは無いと思っていたんだが……」
違和感を覚えるギルマスであったが、しかし実際、黒尽くめは守るべき民であるはずの人々を、人質にとってギルマスに要求を通そうとしている。
どのような理由があるにせよ、要求を飲み、廃工場に向かう以外の選択を取るわけにも行かなかった。
「全く、だから殺せば良かったのに、逃がしちゃうからこうなるんですよ?」
ほとほと呆れた、といった様子でため息混じりに忠告するフロリーナ。
「人間は、そう簡単に殺し合ったりしないんだよ」
と、フロリーナの価値観のズレに小言を返すギルマス。
「さすがにそれは嘘。
いくら私でも、それぐらいは分かるんですからね、もう!」
プリプリと怒るフロリーナの、しかし無慈悲な一言に、ギルマスは口を噤むしか無かった。
そうして――ギルマスは犯行声明を受け取ってすぐさま、指定の廃工場へと向かった。
施設内には先日の黒尽くめ達と、縛られ自由を奪われた状態の人質が待っていた。
「ふん――ノコノコと一人でやってきたようだな」
黒尽くめの一人が、姿を見せたギルマスを嘲笑うかのように言う。
「悪いな、足手まといを連れて歩く趣味は無いんだ」
暗に、お前達のように弱くないから群れる必要が無い、と挑発するようなことを言うギルマス。
「減らず口もそこまでだ。
我々の要求は単純、貴様も我々に協力し、ある目的の達成の為にその力を尽くせ。
貴様程の力があれば、我々の大義が果たされる日も近い」
黒尽くめの要求に……ギルマスは、首を横に振る。
「従えってんなら、力を示しな。
オレを黙らせられるんなら、ちっとは考えてやるよ」
言うとギルマスは、架空の剣を腰から抜き、魔闘術による力の奔流が形作る剣を構えた。
「我が流派――『義唱剣』は、弱者を救う義を唱う剣。
理念に従い……お前達の要求は飲まないし、暴力にも屈しない」
ギルマスが放つ威圧感に、黒尽くめ達は気圧されるも、すぐに気を取り直し言い返す。
「だがこちらには人質がいるのだ。
どれだけ貴様が強かろうとも、我々に手を出すことは出来まい。
――やれィッ、伝説を屈服させ、従えよッ!!」
黒尽くめの号令で、戦いが――いや、一方的な攻撃が開始される。
弱者を救う義を唱う剣で義唱剣!?
このおじさん、メンヘラな上に厨二病なの!?(錯乱)




