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【暴力】で全てを破壊する転生悪役令嬢、精霊の加護が全ての世界で婚約破棄される  作者: 殿海黎
第二章 辺境浪漫編

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第三十七話 帰路にて




 戦いを終えたカノンを背負い、獲物である森の主を片手で引きずりながら、辺境都市への帰路につくクリス。


「……助けてくれるなんて、珍しいじゃねェか、クリス」


 既にカノンは意識を取り戻していたが、身体がボロボロであった為、自力で歩くことも難しく、大人しくクリスの世話になっていた。



「いくらわたくしでも、この状態のカノンさんに歩かせるほど鬼畜ではありませんわよ?」


「へへ……そりゃあ助かるぜ」


 軽口を交わしながら進む二人。



 そこで、不意にカノンが疑問を投げかける。


「なあ、クリス」


「何です?」


「アンタ、森の主の死体に、手ェ合わせて祈ってたよな?」


 それはカノンが目を覚ました時に見た光景だった。



 クリスは森の主の死体を前にして、膝を突き、手を合わせて、まるで供養するかのような祈りの姿勢を取っていた。


「それがどうかしたのですか?」


「いや……魔物相手にそんなことするヤツとは思ってなかったからよぉ、どういうつもりで祈ってたのか気になって」



 問われて、クリスは頷いてから答える。


「自分の身になって考えてみると、思うのです。


 もしも自分が、得体のしれない怪物に、獲物として狩られた時、どんな扱いをされた方がいいか。



 どうせ殺されるんだから何をされても一緒だ、という考えもあるでしょう。


 ですがわたくしは、例えば自分の遺体を無惨に弄ばれて廃棄されるよりも、誰かの糧になった方が、よっぽど気が楽ですから。



 祈りを捧げるのも、同じ理屈ですわ。


 どうせ死ぬのは一緒だとしても、こうやって祈りを捧げてもらった方が、まだマシな気分で死ねると思えるから、祈るんですのよ」



 クリスの言葉を聞いて、感心したように声を漏らす。


「はぇ~、お行儀が良いねェ、アンタ」


「フフ、かもしれませんわね」


 苦笑を漏らすクリス。



「……カノンさん、疲れているでしょう?


 今は眠っていて構いませんわよ」


 クリスは、背中で気だるげにしているカノンを気遣い、そう声を掛ける。



「そうかい、悪いね。


 正直、眠くって敵わねェんだわ……」


 言い終わってすぐに、カノンは眠りに落ち、クリスの背中で寝息を立て始めた。



「ふふ。


 今はゆっくりお休みなさい、カノンさん――」


 珍しく……優しげな笑みを浮かべ、カノンを気遣い、ゆっくりと歩くクリスであった。






 一方その頃――辺境都市の、とある一軒家。


 フロリーナの住まう家の中で……凄惨な出来事が起こっていた。



「――頼むッ、俺はこれ以上何も知らねぇんだ!!


 許してくれ、お前のことは何にも、誰にも言わねえ!


 だから――ヒィィッ!?」


 必死に命乞いをする男が、椅子に縛り付けられた状態で、フロリーナの家に監禁されていた。


 しかも、男の手の指は……既に複数が失われており、今もフロリーナの操る精霊術の風の刃によって、指が一本切り落とされた所であった。



「貴方が大したことを知らないことぐらい、とっくに『読み取って』いますから、そこは問題じゃありませんよ?」


 言いながら、何でもないことのように――切り落とされた男の指を拾い上げるフロリーナ。



 そして……なんと悍ましいことに、その指を自ら口に含み、クチャリ、と一撃で噛み潰し、飲み込んで見せた。


「アァアアアッ!?


 もう止めてくれ……頼む、許してくれよぉ……っ!!」


 眼の前で自分の指を食われる、という酷い光景を――これまでに何度も見せつけられた男は、とっくに心が折れていた。



「ううん、そう言われましても、困りますね。


 価値の無いゴミでも、ちゃんと再利用できる範囲で有効活用しないと。


 資源は有限、もったいないですよ?」


 理解できないことを言われた、とでも言いたげな態度で、フロリーナは男へ告げる。



 会話の成り立たない相手に、男は恐怖を乗り越え、諦めが――死を望む思いすら生まれていた。


「だったら……せめて、早く殺してくれぇ……!


 もう、これ以上苦しまずに死ねるなら、それでいいから、頼むよぉ……!!」


 この男の言葉に、フロリーナは目をぱちくりと開いて驚く。



「まあ、だったら最初から、そう言って下さったら良かったのに!」


 言うと、フロリーナは指を振って――男の首へと風の刃を飛ばす。


 一撃で胴体から切断された、男の生首は、まるで一仕事終えたかのような安堵に満ちた、気の抜けた表情をしていた。


「全く、お願いがあるなら正直に、最初っから言ってくれないと分からないじゃないですか、もう!」


 プリプリと怒りながら……フロリーナは男の生首を宙へ浮かせ、無数の風の刃で細かく裁断した後、深呼吸でもするかのように、ズウッ、と吸い込み、クチャ、クチャ、とよく噛んでから体内に取り込んだ。



「さて……手がかりは、この徽章一つだけですけど、ひとまず十分でしょうか」


 フロリーナは言って――残された男の身体から、風の刃で一枚の徽章を切り取り、浮かせて手元に手繰り寄せる。


 それは――龍虎に十字の、帝国を表す紋章を、上下逆さにひっくり返した、奇妙な徽章であった。



 フロリーナが男を拷問し――情報を集めていた目的が、正にここにあった。


 近頃になって、クリスを監視するような動きが急に無くなり、静かになった。


 これを察知したフロリーナは奇妙に思い……最低限残されたと思われる、クリスの動向を監視する人員を捕まえ、拷問して情報を引き出そうとしていたのだ。



 高度な精霊術を操るフロリーナにとって、裏でコソコソを動く人間一人を、誰にも見つからずに捕まえることぐらいは造作もなかった。


 そうして捕まえてみた男が、思いの他、なかなかの悪者であった為、せっかくだから殺しておこう、という理由で生かして帰すのを辞めた。


 これが、監禁、拷問の経緯であった。



 結果として大した情報は得られず……上から一方的に、クリスの監視を終了し、人手を引き上げるとだけ伝えられたことぐらいしか、男は情報を持っていなかった。


 自分がどんな組織にいるのかすらも理解しておらず……完全に利用されているだけの、末端の人間に過ぎなかった。



 とはいえ、末端でも組織の一員であることを表す奇妙な徽章を与えられており――これは逆説的に、帝国の紋章を逆さに掲げた組織を探れば、これまでクリスを狙って暗殺者まで仕向けた輩の正体を暴けるのだとも言える。



 つまり敵は逆さ紋章の組織だということが分かっただけでも、フロリーナにとっては十分な収穫であった。



「クリスさんを狙っている輩の狙いや正体も、いずれ分かることでしょうし。


 ひとまず――今日中に戻ってくるクリスさんをお迎えする為に、ギルドに戻っておきましょうか♪」


 言って、首を失った男の死体を椅子に縛り付けたまま、ウキウキ気分でギルドへと向かうフロリーナであった。

十字に龍虎の帝国紋章が逆さまに?





おっちょこちょいやなあ^^

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