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【暴力】で全てを破壊する転生悪役令嬢、精霊の加護が全ての世界で婚約破棄される  作者: 殿海黎
第二章 辺境浪漫編

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第二十六話 反撃開始




 カノンはまず、ジャグリングの男に迫る。


「コッチに来ルカぁ!!」


 当然、ナイフを、それも次々、計七本を投擲して迎撃する。



 だが――カノンはこれを、容易く回避して見せる。


 複雑な軌道を描く七本のナイフを、足を止めることも無く、前進しながら回避する。



 上手く懐に入り込むカノン。


「――甘イなぁ!!」


 だがジャグリングの男は、まだナイフを隠し持っていた。


 隠しナイフを取り出して、無防備に喉笛を晒すカノンの、首筋を切り裂こうと一閃。



 しかし、ここまでもカノンの読み通りだった。


「悪いね――同業者なもんでさ」


 ギリギリのタイミングで、ナイフの軌道から身を捩って回避していたカノン。


 カノン自身が暗殺者であったからこそ、ナイフ技術に関しては理解があった。


 故に、相手が高いレベルでナイフを扱うと分かっているからこそ、あえて弱点として首筋を晒し、攻撃を誘った。



 完全に騙されたジャグリングの男は、空を切り、態勢が悪く、反撃、防御の手札を失う。


「――ハッ!!」


 カノンは男の鳩尾へと、体当たりするような勢いで肘打ちを叩き込む。



 訓練の成果もあり、カノンの膨大な魔力で強化された身体から繰り出される一撃は、意識を奪うに十分な威力があった。


 ドゴォッ、と音を立て、ジャグリングの男は吹き飛びながら、既に意識を喪失しており、戦線から離脱する。



 ただ、敵は彼だけでは無い。


 決着の瞬間、隙を狙って、女が狙撃銃を発射する。


 跳弾よりも、最短での着弾を狙っての銃撃。



 ドォンッ、と放たれた弾丸は――無念、カノンを貫くことは無かった。


 女が狙撃銃を放つ直前に、弾道を避けるように、身を躱していたカノン。



「チッ、ならば!!」


 女は舌打ちすると、今度は連続で弾丸を放つ。


 全て、跳弾させながらカノンを狙う、直線では軌道を把握できない射撃であった。



 だが……これも、カノンに通用しなかった。



 かつて暗殺者であったカノンは元より、気配に敏感であった。


 これがクリスとの訓練により洗練され――殺気や気配といった類のものを、直感的に感じ取る能力として開花した。


 油断せず、集中していれば、今のカノンには跳弾する銃弾の軌道すらも――射手である女の殺気、意思の描くラインとして見えていた。


 後は発射する直前の機微を読み取り、ライン上から身を避けるだけ。



 言葉にすれば簡単な事だが……高度な技術により、跳弾による射撃を完全に無効化するカノン。


 当たる気配も無いまま、女は弾丸を垂れ流し――カノンは全てを回避して肉薄し、狙撃銃の上から正拳突きを放つ。


「フッ!!」


 短く、鋭く息を吐きながらの突きは、スガァッ、と狙撃銃を砕き、そのまま射手の女の腹へ直撃。


 ジャグリングの男のように吹き飛ぶことは無かったが、だからこそ衝撃は腹に全て伝わり……内蔵へのダメージから、女は意識を失い、その場に崩れ落ちた。



「きっ、貴様ぁぁあああッ!!」


 跳弾に巻き込まれることを恐れ、攻め入るタイミングを失っていた大男が、仲間の惨状に怒りの声を上げる。


 巨躯に由来する耐久力に任せて接近し、手足のどこでもいいから掴もうと駆け寄る大男。



 だが、タネが分かってしまった以上、カノンにも対策があった。


 迫る大男に向かって、なんとカノンも駆け出したのだ。


 そして姿勢を低くして、身体の末端を掴まれるよりも先に、男の腰へと組み付く。



「アンタの技、要は鞭みてェに身体を撓らせて、波を作るのが大事なんだろ?


 こうして組み合ってりゃあ、それも出来ねェだろうよ!」


 言うと――なんとカノンは、力付くで大男を持ち上げる。



「ぬ、ぬぉぉおおッ!?」


「くたばりやがれェえッ!!」


 喚く大男と、雄叫びを上げるカノン。



 持ち上げた姿勢のまま、カノンは勢いよく海老反りとなって――大男を頭から地面へと叩き付ける。


 現代の地球では、プロレスにおける、いわゆるフロントスープレックスに限りなく近い……咄嗟のアドリブで、カノンが編み出した技であった。



 見かけに寄らない怪力を発揮するカノンによって、思わぬ形で頭から勢いよく叩き落された大男は、この一撃で完全に意識が落ちていた。


「――ふぅ、あぶねー、あぶねー」



 どうにか三人を相手に、勝利して終えられた事に、カノンから安堵の声が上がる。


「まあ、一度油断があったとはいえ、合格点は越えていますわね」


 そんなカノンを、クリスは呑気にそう評した。



「てめェ……代わりに戦ってやったアタシに労いの言葉もねェのかよ!!」



「言葉ではなく、結果でお礼いたしますわ。


 さあ、そうと決まれば訓練再開です。


 カノンさんの今のレベルも分かったことですし、さらに負荷を上げていきますわよ」



「うげェ……」



 こうして、暗殺チームによる最初の襲撃は、カノンの手によって失敗に終わるのであった。



 しかし一方――この結果を見届けていた、残る暗殺チームが、更に卑劣な手段を取る結果にも繋がってしまう。

☆一口メモ☆


クリスが強すぎるだけで、カノンもモブには絶対負けないぐらいには強い。

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