第二十四話 暗殺チーム集合!
――『暗殺チーム』と呼ばれる、最強の暗殺者集団の活動は、帝国にて始まった。
当時、腐敗した貴族政治に対する、民衆の我慢の限界が爆発し、皇帝を始め体制側を打倒するクーデターが勃発していた。
そんな中、反体制側の人間が、帝国内の各地から人格、思想を問わず、ただ確実に標的を殺す能力に特化した人物を集め、結成させたのがこの『暗殺チーム』の始まりであった。
革命の最中、暗殺チームの活躍もあり、腐敗した貴族は次々と排除され……その残忍さと、絶対に獲物を逃さないという暗殺達成率の高さは、現在でも暗殺者界隈では伝説となって語り継がれている。
――例えば、当時難攻不落の城塞都市と呼ばれた、戦略的にも最優先で確保すべき要衝が存在した。
だが、革命軍が集めた軍勢では、城塞都市の城壁を突破することは困難であり、城壁内に食料の生産設備も充実していた為、真っ当に攻略するには半年、あるいは一年以上の期間が必要だと、誰もが考えていた。
故に、革命軍の指導者達は、暗殺チームを動かした。
具体的に、どのような手段を使ったのかは誰にも分からない。
ただ結果だけを言えば――当時の城塞都市を支配していた領主一族郎党、皆殺しであった。
それも、単に殺されただけではない。
彼ら領主一族は、皆生きたまま肉を切り裂き、剥がされ、裏返され――顔以外のあらゆる部位が、元々人間であったなどと信じられない肉のオブジェとして弄ばれた。
挙げ句には城塞都市の正門内側に、肉屋が食肉を吊るすかのような形で、身体を縛られ、見せびらかすように吊るして飾られた。
さらに、最も恐ろしいことに……それでもなお、彼らは虫の息ながらも生きていた。
どのような手段を使ったかは不明だが、魔術薬であったり、肉を切り裂く時に、生命維持に欠かせない内蔵だけは丁寧に、傷つけることなく処理をしたこともあったり、ともかく巧妙かつ残忍な目的意識でもって、生命活動を維持させられていたのだ。
今にも死ぬかというような状態で、血を滴らせながら、掠れる声で「殺して下さい」と懇願する領主一族の姿が、城塞都市内の人々の目に晒された。
これに――生き残った者達は震え上がり、途端に降参、降伏すべきという方向へ情勢が傾いた。
結果、僅か数日にして、難攻不落の城塞都市は自ら開門し、革命軍を内側へ招き入れることとなったのだ。
そして暗殺チームは今日――サリア・カスティーリャの要請により、辺境都市ファウンダリアへと集合していた。
黒尽くめの服装の人物が、一処に集まり、顔を合わせて話し合う。
「久々の殺しダァ、腕が鳴るゼェ!!」
片言の男が、興奮した様子でナイフをジャグリングする。
「近頃の標的は、王国の軟弱者ばかりだったからな……今回こそ楽しめる獲物だと良いんだが」
言いながら、大型の狙撃銃を抱え、手入れする女。
「関係ねぇよ。
この手で直接、ぶち殺す感覚さえ味わえたら、他にはなあんにもいらねぇんだ」
これから起こることを夢想し、恍惚とした表情で自分の手を眺める筋肉質な巨漢。
「自惚れるなよ。
革命当時でも、我々より強い個人はいくらでも居た。
協力し、戦略的に事に当たれ」
おそらくリーダー格と思われる、背は高いが身体の細い、痩せぎすの男が言う。
「そうは言うがね、我々から逃げられるターゲットが居るとも思えんよ」
言ったのは――壁から滲み出るかのように、どこからともなく姿の湧いて出てきた老人。
「まあまあ爺さん、隊長が心配性なのは今に始まったことじゃないだろ?」
続けて、老人と似たような形で、床から湧き出るように姿を表す若者。
「――何にせよ、作戦は今まで通り。
俺がターゲットの情報を集め、機会を伺い、殺す。
それだけの話しだろ?」
言ったのは、何の変哲もない、特徴の無い顔立ちをした、ごく普通の町民の格好をしった人物。
これらの人物が、暗殺チームの全容である。
全員が特殊技能を持った、稀有な才能を、人を殺すことにしか使うつもりのない、とびきりの異常者達。
「では――作戦開始だ」
痩せぎすの男の号令により、ついに暗殺チームが動き出す。
ある日――いつも通り、冒険者ギルド前にて訓練をするカノンとクリス。
二人の下に、近寄る気配が三つあった。
「――カノンさん、訓練は中断です」
「あぁん?」
突然のクリスの宣言に、カノンは首を傾げるが、すぐに状況に気付き、気を引き締めた。
近寄ってくるのは――黒尽くめの、見るからに怪しい格好をした三人。
大型の狙撃銃を持った女と、ナイフをジャグリングしながら歩く男と、筋肉質で大柄な男の三人。
まさかの白昼堂々の殺害を試みる、暗殺チームの姿であった。
「どうやら、わたくしに用があるみたいですわね」
暗殺チームとクリスの、衝突の時が来た。
白昼堂々の暗殺!?
なんて大胆な暗殺者なんだ……!!




