第二十話 指名手配
「さすがクリスさん♥
いつの間にか指名手配までされるなんて、やることが豪快すぎますっ!」
ギルドに顔を出したクリスとカノンを迎えたのは、うっとりした表情で何やらのたまうフロリーナと、一枚の手配書であった。
「なになに?
この者、冒険者ギルド前にて公務妨害及び暴行の罪により、捕縛した者には金貨一枚の報奨金を与える、と。
……って、クリスじゃねーか!」
カノンが手配書を読み、内容を確認したところ、そこに書かれている内容は昨日のクリスがスルーノを殴り飛ばした件に違いなく、似姿も痴女じみた鎧、つまりビキニアーマーで描かれていることから、間違いなくクリスが指名手配されていると分かった。
「こんな変態装備してるヤツなんて、この世に一人しかいねェだろうからな、手配書を見た瞬間にクリスだって分かっちまうぞ」
言って、カノンはクリスの様子を見る。
「別に問題ありませんわ。
こんな手配書一枚で、わたくしを捕まえられると思う方が間違いですもの」
「さっすがクリスさん♥
犯罪者扱いされたって、まるで気にせず、どこ吹く風ですね、ちゅき♥」
「……なんか、フロリーナさんってこんな感じの人だったっけ?」
「わたくしの専属受付嬢になったそうですし、こんなものではありませんの?」
「いや、だからって変わりすぎだし、こんなウキウキの笑顔で喋ってるとこなんざ見た記憶がねェよ……」
言われて、フロリーナは首を傾げる。
「カノンさん相手に、見せる必要あります?」
「ほら、やっぱ態度が違うじゃねェか!!
何なんだよ、アンタ!!」
――と、このように、クリスが指名手配を受けたとは思えぬ、和気藹々とした雰囲気が漂っていた。
この時――街には既に、手配書がバラ撒かれており、クリスが指名手配されたことは、街中へと広まっていた。
通常ではあり得ないスピードで情報が広まっているのだが……しかし、影響はほぼ無いと言って良い状況にあった。
ある宿屋を経営する女将さんは、後にこう語る。
「手配書があるのに、どうして手を出さなかったんだって?
そりゃあ、まずクリスちゃんは強すぎたからね、あたしらが手出ししたからって捕まるわけがないよ。
それに、あの子が悪いことをしたなんて、信じる人がいないでしょ?
明らかに貴族出身の、やんごとない身分があった人だろうに、あたしら平民の仕事にも細かく感謝をしてくれるからね、ありがとうございますわ、って。
前にうちの宿でも、成り上がりの若造冒険者が好き勝手言って暴れようとしてたことがあってさ。
それをサッと制圧して、黙らせてくれたのがクリスちゃんなのよ。
他でも、似たような話を聞くわよ?
よく出来た子だよ、ホント。
そんなクリスちゃんが、指名手配されたって?
ないない、ありえないわ。
貧民街の半グレ共を一人で全滅させた、なんて話もあるぐらいだからね。
街に住んでて、あの子に感謝してない人の方が珍しいぐらいさ。
そんな子が犯罪者なんて、何かの間違いに決まってるってもんよ」
「――ともかくっ!!」
ドンッ、とカウンターを叩いて、カノンが話を無理やり遮り、自分の言いたいことを語りだす。
「手配書が出回っちまってることに変わりはねェんだ。
どこでどんな厄介な輩に絡まれるか分からねぇ。
いくらテメェが強いからって、ヘラヘラしてる場合じゃあねェぜ?」
カノンは真剣に、カノンなりの形でクリスを心配しており、故に忠告しているのだが、クリスは不敵な笑みを浮かべて応える。
「カノン、貴方言いましたわよね?
何でもする、と。
良い機会ですから、しっかり見ておきなさい。
本当に何でもする、何でも出来るということを――自由とは何かを、貴方に教えて差し上げますわ」
自信に溢れるクリスの言に、カノンは気圧され、息を飲む。
そうして――指名手配されて最初の夜。
ついにクリスを狙って、事件が起こった。
☆一口メモ☆
フセイン・スルーノ、実は仕事に関してはめちゃくちゃ有能で、高く評価されている。
性欲が我慢できないので色々と悪いことを企むが、企みを実行する為の人脈もしっかりある。




