↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【暴力】で全てを破壊する転生悪役令嬢、精霊の加護が全ての世界で婚約破棄される  作者: 殿海黎
第二章 辺境浪漫編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/64

第十七話 喪失




 クリスは――レッサーパンダ拳の構えから、素早く右の拳を振り下ろす。


 標的はカノンではなく……竜牙刃。



 カノンの魔力を受け取り、輝きすら放つ竜牙刃目掛け、ヒッティングの瞬間に拳を握り込みながら、打ち下ろす。



 ギャンッ――と、甲高く鳴くような音が響く。



 それは竜牙刃が、クリスの打撃に耐えきれず、根本からまるで切断でもされたかのように折れた音であった。



 だが終わりじゃあない。


 クリスはもう片方の拳を、横殴りで振るう。


 折れた竜牙刃を、側面からクリスの拳が襲う。



 ドシャッ、と鈍く、重い砂を殴ったような音を立てて、クリスの拳が竜牙刃を粉々に、パラパラに粉砕した。


 ブワァアッ、とクリスの拳が生み出した風に乗って、竜牙刃は塵となって消える。



 ……切り札を、最大最強の一撃を、正面から粉砕された。


 この事実を前にして――カノンは、呆然とするしか無かった。



「そ、そんな……」


 カノンは、悔しさに顔を歪めた。



「こんだけやって、まだ足りねェのかよ……ッ!!」


「足りない、とは?」



 クリスはカノンの嘆きに、首を傾げて疑問を投げかける。


「この程度の有り様で、貴方は一体、何をどれだけやったというのです?」



 怒りに支配されたカノンは、感情的に言い返す。


「アタシはなァ、何でもやってきたんだよッ!


 テメェみてェなヤツを殺す為に、出来ることは何でもやったッ!!


 何も知らねェくせして、ナメた口聞くんじゃねェ!!」



 だが、カノンの怒りすらどこ吹く風、クリスは鼻で笑い、言った。


「何でもやると豪語するなら、それこそ本当に、自由に何でもやればいいではありませんの。


 平和に真面目に働いてもいいし、殺したければ殺せばいい。


 勝てない相手から逃げてもいいし、自分より強い誰かに頼ってもいい。


 師匠を見つけて自分を鍛え直してもいいし、敵の老衰を待ってもいい。



 でも貴方……自分の手で、今すぐどうにか思い通りに殺せないかと、手段にこだわっているじゃあありませんか?



 何でもやるなんて嘘っぱち。


 貴方は本当のところ、自分の都合で道理が曲がるよう祈る――鉢植えの花のように可愛らしい、微笑ましい人ですわ」



 クリスに言われ……カノンは、愕然とした。


 自分の復讐心を、過去に抱いた怒り、憎しみによる現在までの道程を、否定されたような気がした。


 いいや――事実否定されていて、怒りよりも、自分への失望が大きいことに気づいた。



 人を人とも思わぬ貴族は排除せねばならない。


 その為なら何でもする、と誓ったはずだった。



 だが――恨みのある貴族に取り入って近寄るような真似はしてこなかった。


 奴らの仲間になるような真似は死んでも嫌だと思ったからだ。



 同じような理由で、悪徳貴族からの依頼を受けることも避けてきた。



 復讐のためなら、と手を汚してきたつもりだった。


 だが……実際にカノンが起こした行動は一種の癇癪に過ぎず、本当の意味では自分が泥を被る覚悟も、手を汚すつもりもなかった。


 自己満足の出来る範囲で、出来ることだけをやってきたに過ぎないと、悟ってしまった。



 それこそ今回だって……自分で手を下すことにこだわる必要は無かった。


 暗殺者としての縁を活かし、情報を流し、何処ぞの悪徳貴族なり何なりと、クリスが敵対するよう誘導するという手段もありえた。



 だがカノンは、選ばなかったのだ。


 目的よりも、手段を優先していたのだ。



 そう思うと――これまで信念を貫いてきたはずの、暗殺者『邪道』としての人生が、全て足元から崩れ去るようにさえ思えてきた。



 眼の前が真っ暗になって、膝を付き、手を付き、項垂れた。


 決闘の勝敗以前に――戦う前から敗北していたのだ、と打ち拉がれるカノン。



 そこへ、クリスが手を差し伸べる。


「強くなりたいなら――わたくしの手を取りなさい」


 カノンはクリスが伸ばした手を、間抜けな顔で見た。



「今のままでは、何一つ出来やしないのだと理解したなら、立ち上がりなさい。


 わたくしが――その可愛らしい性根を叩き直して差し上げますわ!」



 敵対していたはずの……否、命を狙ってきていたはずの相手にすら、手を差し伸べる。


 それが優しさ等ではなく、カノン程度は敵になりえない、導いてやる必要のある未熟者として、侮っているに過ぎないと分かっている。



 だが……だからこそ、カノンは手を取った。


 バシッ、と強く叩くような勢いで、クリスの手を握るカノン。


「テメェ……言いやがったな?


 これからは、いいや今度こそ何でもする、を本気でやってやる。


 いずれテメェに目にもの見せてやるよ、クリス!」



 こうして無事――決着。


 クリスがカノンの生殺与奪を握り――手下、あるいは弟子として鍛えてやることが決まったのである。

丸く収まったぜ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。





☆Narrative Worksの新連載!☆

【暴力】で全てを破壊する転生悪役令嬢、精霊の加護が全ての世界で婚約破棄される
著者:殿海黎



☆書籍化・コミカライズ作品☆
無能は不要と言われ『時計使い』の僕は職人ギルドから追い出されるも、ダンジョンの深部で真の力に覚醒する-仕事が回らないから戻れと言われても今更もう遅い、SSS級冒険者として自由に生きていきます-
著者:桜霧琥珀

クラス転移に巻き込まれたコンビニ店員のおっさん、勇者には必要なかった余り物スキルを駆使して最強となるようです。
著者:日浦あやせ



☆Narrative Worksの連載作品一覧☆

異世界チーレム転生できたけど、ヒロインが全員ギャグ漫画の世界の登場人物なんだが?
著者:亦塗☆さくらんぼ

盾持ち令嬢の英雄譚
著者:雨降波近

蒼炎の英雄-異世界に勇者召喚された少年は、スキル『火傷耐性』を駆使して成り上がる-
著者:稲枝遊士

吸血鬼な悪役令嬢に転生した私がSSS級国際指名手配犯となり最強チートスキルで婚約破棄王子や元クラスメイトの勇者などを倒していくお話
著者:稲枝遊士

ツルギの剣
著者:稲枝遊士

ゴブリン・コンバット-異世界のゴブリンに転生したので、地上最強の生物を目指してみようと思う-
著者:殿海黎

池袋ボーイズ(大嘘)
著者:亦塗☆さくらんぼ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。