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【暴力】で全てを破壊する転生悪役令嬢、精霊の加護が全ての世界で婚約破棄される  作者: 殿海黎
第二章 辺境浪漫編

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第九話 『お話』




 早朝に発って昼前には村に到着し、冒険者はそれぞれ騎士の指示通り、村の人々に避難指示を出す為に散っていく。


 そして騎士本人と、クリス、カノンを含む数名の若く威圧感の少ない冒険者が、村長――つまり村の代表、有力者と直接会い、より詳細な避難計画について説明をしに向かう。



 だが――ここでトラブルが発生する。


「ワシらは避難なんぞせん!


 村が滅びるなら、ワシらも村と共に滅びる!」


 なんと村長が――そして村長と近い年代の年寄り連中が、避難指示を拒否しだしたのである。



「困ります!


 貴方たちが村に残るとして、それを他の村人全員が納得できるとは思えない!


 混乱を招き、避難に支障が出る恐れがあります。


 大人しく、我々の指示に従って下さい!!」


 騎士はどうにか村長に避難を受け入れて貰おうと説得をするが、しかし聞き入れてはもらえない。



「アンタら余所者には分からんだろうがね、この村はワシらが若い頃に命がけで開拓した大事な村なんじゃ。


 逃げたいもんは逃げればええ、しかしワシらには、村を捨てるなんて、命を捨てるようなもんじゃ!」


 村長と騎士の話し合いは平行線となり、決着がつく気配も無かった。



 これを見て――クリスが前に歩み出て、騎士の肩をポン、と叩く。


「騎士さん、ここはわたくしにお任せくださいな」


「うん? まあ、そう言うなら」


 妙に自信有りげなクリスの表情を見て、騎士もこのままでは埒が明かないと思い、一度任せてみる気となった。



 クリスは村長のすぐ目の前まで近寄ると、まず尋ねる。


「避難、してくださいませんか?」


「ふん、不埒な鎧を着た女で籠絡するつもりか、ワシらはそんなもんに流されはせんぞ――」


 バギャ、と。


 村長が言ったところで――発言を否定するかのように、クリスの拳が顔面へと叩き込まれた。


「は、な、なにを」


「避難してくださいますね?」


「い、いやワシらは――」


 バギャッ、と二発目。


 クリスは村長相手に、老人相手に暴力を振るい、拒否の言葉を言い切らせない。



「な、何をしとるんだぁ!!」


 騎士との交渉に同席していた、他の村人達がクリスの暴挙に声を上げる。



 だが、クリスは一切構わず、村長との『話し合い』を続ける。


「避難してくださいます?」


「い、いやじゃ――」


 三度、打撃。


 今度は村長の鳩尾を突き、その衝撃で胃の中のものを口から吐き出し、えずく村長。



「な、なんでそこまでする必要があるんじゃ!」


 村人の一人が、クリスに文句を投げかける。



「何故、と?


 逆に、何が問題なのです?


 貴方がたは、ここで死ぬのが望みでしょう?


 ――ここでわたくしと死ぬほど『お話』することに何の否やがあるのです?」


 言うと……クリスはえずく村長の頭を叩いて自分に意識を向け直す。



「さあもう一度――避難をしてくださいますね?」


「わ、ワシは……」


「――うわぁぁぁああっ!!」


 村長に対する拷問が再開しようとしたところで、村人の一人……この場に農具を、鍬を持ち込んでいた男が、クリスの背後から襲い掛かる。



 だが、クリスは振り返ることもせずに片手で鍬を握って受け止め、そのまま力を上手く受け流し、鍬を通じて相手の男の体勢を崩して転倒させる。


 そして転倒させた男の顔面――の、すぐ横にストンピング。


 ドギャァッ、と一撃で床板が粉砕され、突き抜けるのを、襲撃者の男は文字通り眼前で見せつけられる。



「不意打ちなら、いつでもどうぞ?」


 クリスは笑顔を浮かべ、村人達を見回しながら言ってやった後には、何事も無かったかのように村長に向き直った。


 力の差を見せつけられた村人達は、抵抗する気力を失い、項垂れるしかなかった。



 そしてクリスは、返事の無い村長に向けて拳を振り上げた。


「――ヤメてくれぇッ!!


 わかった、避難するッ!!


 アンタの言う通りにするから、もう勘弁してくれぇ!!」


 クリスに怯えきった村長は、殴られたくないあまりにバタバタと見苦しく手足を動かし、どうにか逃げようと藻掻きながら、考えを改めた。



 だが――クリスの拳は止まらない。


 バギャッ、と村長の顔面に叩きつけられる。


「にゃ、にゃんでぇ……?」



 これに、冷たい視線を向けながらクリスは答える。


「下らない反抗心を企てたお前達の言葉に一切の信用は無い。


 必要なのはわたくしの納得だけです。


 確かに避難を受け入れ、抵抗する気力の一片も無くなったとわたくしが判断出来るまで、よぉ~く『お話』させていただきますわ」


 言うと、クリスは再び笑みを浮かべて繰り返す。



「では――避難、してくださいますね?」






 その後、十数回は同様のやり取りを繰り返し――居残りを選択した村人達の心は、完全に折れた。


 ボロボロになった村長の姿を見て、もう止めてくれ、と村人たちが懇願し、クリスに縋り付いてようやく『お話』は終わった。


 こうして無事……と評価して良いかには疑問が残るが、ともかく死者は無く、村人全員が避難に同意することとなった。

☆一口メモ☆


これはクリスティーナ式交渉術……ではなく、ブーケンシャー式交渉術です。

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