第四話 魔物素材の選別
「で、冒険者になるって用事は終わりだ、次はその背負ってる魔物の素材の処理か?」
「ええ、ギルマス自ら鑑定してくださいますの?」
「いいや、そこはオレの専業じゃねえな。
――フロリーナ、頼む」
「はーい、お任せ下さい」
心なしか、ギルマスの言葉には若干面倒そうな声色で返答するフロリーナ。
「よろしくお願いしますわ、フロリーナさん」
「はい、お任せ下さいクリスさん♪」
そして、クリス相手にはウキウキが隠せない声色のフロリーナ。
人によって対応の変わる受付嬢らしい。
「それで持ち込み素材は、そちらの熊――魔の樹海から周辺までに生息する魔物の一種、背甲凶羆ですね。
体毛の一部が角質化して、鎧のようになっている魔物です」
フロリーナは、クリスの背負う魔物の鑑定を進める。
「状態はかなり良さそうですね、狩ってそれほど時間も経っていないようですし、肉も食用肉として卸せそうです」
「ああ、ごめんなさい、分かりづらかったですわね」
言うとクリスは――背甲凶羆を床に下ろし、腹を天に向けて転がして、その腹部の皮に通された『紐』を引き抜いた。
すると――背甲凶羆の腹の中には、内蔵ではなく、無数の魔物の素材が詰め込まれていた。
「斃しすぎて、持ち込む素材に困りましたから、一番新しい魔物のお腹に、価値のありそうな素材をあるだけ詰めて持ち込みましたの」
「まあっ! 素晴らしいです、さすがクリスさん♥」
うっとりした様子で手を合わせて、声を上げるフロリーナ。
対して、ギルマスは明らかにドン引きしていた。
「お前、まさか全部、魔の樹海の素材とか言い出すんじゃねえだろうな?」
「ん? それの何がいけないのです?」
悪びれないクリスの態度に、ギルマスはため息を吐く。
「はぁ……こんな高額素材、山程持ち込まれても一度に支払いきれん。
現金は一部だけ、残りは一旦、手形だけ残しておく。
それでいいな?」
「ええ、否やはありませんわ」
クリスの同意を受けて、ギルマスがフロリーナに視線で合図をし、フロリーナが頷いて鑑定を続ける。
「では……早速ですが、このお腹を縛っていたのは魔の樹海で取れる蔦をそのまま使っていますね。
下手なロープより頑丈なものなので、これも相応の加工をすれば使い物になるでしょう。
ところで、蔦を通す穴はどうやって開けたのですか?」
「そんなもの、指でちょん、と貫けばいいだけですわ」
「さっすがクリスさん、パワー系♥」
些細なことでもクリスを全肯定するフロリーナ。
「さて、次はこっちの、魔物のツノ三点。
それぞれ魔の樹海に生息する雷光箆鹿、銀犀、ブラックオーガのものですね。
一匹目は雷の魔術を扱う箆鹿で、ツノを媒介として雷撃を放ちますが、素材としてはこの性質を利用し魔術の触媒として扱われる、価値の高い代物ですね。
二匹目は土食の傾向が強い犀の魔物で、地中の金属成分がツノや蹄に集まって鈍い金属光沢を放つことから銀犀と呼ばれ、武器や防具の素材にもなります。
最後にブラックオーガですが、ツノ自体の素材としての価値は前二つほど高くありませんが、オーガは群れを作りますので、群れの長のツノであれば美術品として取引されますし、大きければ大きいほど、そして傷の無い美品であればあるほど価値が高まります」
「もちろん、群れで一番強い個体のツノですわ」
「うーん、さすがクリスさん♥
並の冒険者なら百回死んでも足りないぐらいの魔物を相手に、なんてこともないみたいにあっさりと♥」
「んなこたぁいいから、さっさと鑑定を進めてくれフロリーナ」
ギルマスから注意されて、不満げな表情で見返しながら、フロリーナは鑑定作業に戻る。
「で、これらの素材ですが、全部売るのですか?」
「いいえ、わたくし防具を作りたいので……そうですわね、銀犀のツノだけは残しておいてもらえるかしら?」
「もちろんです! では次は皮の素材が六点ですが――」
この調子でフロリーナによる魔物素材の鑑定作業は微妙な遅延を挟みつつ進み、半時間ほど掛かることとなった。
☆なんでもQ&A☆
Q.どうして異世界なのに漢字の名前の魔物が居るの? っていうか漢字の魔物とカタカナの魔物で統一感が無くない?
A.実は……なんとこの世界は、そういうふうに出来ているのです。




