第二話 冒険者ギルドへ
――辺境に突如現れた、獣革に身を包んだ美女。
しかも、巨大な熊の魔物を担いでいる。
視線を集めるのも当然の存在に、多くの人々が、中でも冒険者が注目した。
中でもそんな美女に絡もうとして――紙一重で危機感が働き、命拾いした冒険者が居た。
「最初は、頭のイカレた女が居る、って思ったんだよ。
しかも滅多に見れねえレベルの美人だ、面白がって声を掛けようって冒険者は少なくなかっただろうぜ。
――で、俺もナンパでもしてやろうかと思って、近寄ったわけよ。
お嬢さん、お茶でも一緒にいかが、ってな?
けどまあ、実際にはそんな軽口は出てこなかったね。
結局大したことも言えねえで、冒険者ギルドへの道順を聞かれたから、教えてやって、それで終わりよ。
あん? 何で諦めたのかって?
近づいて、余計に異常さが分かるようになってよ。
傷一つ無かったんだよな、肌に。
綺麗だなぁ、なんつー呑気な話じゃねぇぞ。
あれだけの魔物を狩るだけでも相当な手練れだが、そんなのは探せば居るだろうよ。
でもよぉ、そんだけ戦えるってこたぁ、相応の経験を積んできてるんだよな?
なんで、肌に傷跡一つ無いんだ、って話だよ。
おかしいだろ、いくらなんでも。
生理的なモンっていうかさあ、直感がビンビンに反応したね。
コイツの機嫌を損ねちゃあなんねえ、大人しくしとけ、ってな」
――クリスティーナは、親切な冒険者から道順を教えてもらい『冒険者ギルド』へと向かう。
冒険者ギルドとは名の通り、冒険者を束ねる組合である。
言葉通り冒険が本領であった時代から、定住地を持たない彼らの活動を補佐する代わり、魔物の素材等から利益を得る組織。
その活動内容の一つが、ギルドの組合員証、つまりギルドカードの発行。
これが冒険者の組合員としての身分を証明するものとなるので、定住地無し、身分不詳のクリスティーナにとって、最も入手しやすい身分証明証となる。
さすがに身分不詳のまま暮らしていくつもりは、いくら常識外れのクリスティーナと言えども無かった。
例えば――将来的に、立身出世して別人として実家へと帰還するつもりならば、まずは帝国での身分が必要である。
喫緊の問題としても、人間らしい生活に戻るには、身分だけでなく金も居る。
であれば、冒険者ギルドにてギルドカードを発行するのが手っ取り早い。
「――おうおうネーチャン、面白え格好してんじゃねーか、ええ?」
諸々を考えながら歩いていたクリスティーナに、冒険者の男が絡んでくる。
見渡すと、他にも冒険者は無数に居るのだが、誰も止めに入る様子が無い。
これは単にクリスティーナとかかわり合いになりたくない為なのだが……ともかく助け舟は出ないと悟ったクリスティーナは、ハァ、とため息を吐く。
「わたくし、冒険者ギルドに向かう途中ですので、用が無いなら絡まないで欲しいんですけれど?」
「冷てぇこと言わねぇでよ、酒場でお酌してくんねぇか?
俺が辺境での冒険者の心得っつうもんを教えてやるから、いいだろ? なあ?」
「お断りします」
拒否したクリスティーナは――目にも見えぬ速さで拳を繰り出し、冒険者の男の鳩尾を捉える。
「うっ……」
男は一撃で昏倒し、その場に倒れた。
「……これ以上絡まれても面倒ですわね、少し急ぎましょうか」
――後に、昏倒させられた冒険者の男は語る。
「いやあ、見るからにヤベェってのは分かってたんだけどよ。
我慢するには、美しすぎたんだよな。
まるで天上の女神様が、手の届く場所で無防備にしてやがるみたいでよぉ。
そんなもん眼の前にして、手を出さずにはいられねぇよ。
まあ、いい経験だったぜ。
――気絶させられて、いい経験があるかよ、って?
そうなんだけどよぉ、記憶にも残らねえぐらい手際よくて、怪我も無くてよぉ。
だったら、あんな美女に一時絡めたってだけでも儲けもんだろ?」
☆一口メモ☆
辺境都市ファウンダリアの綴りはFoundaria。




