↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【暴力】で全てを破壊する転生悪役令嬢、精霊の加護が全ての世界で婚約破棄される  作者: 殿海黎
第一章 令嬢逃亡編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/34

第十三話 理想と現実




「こんにちは、クリスティーナ様。夜会ぶりですね」


「わたくし、貴女に名前を呼んで良いと認めた覚えはありませんが?」



 クリスティーナの冷たい言葉に、しかしサリアは怯まない。


「申し訳ありません、ブーケンシャー様。


 それで、今日は救貧院に何か御用ですか?」



「ええ、現状をよく知るための視察と――ついでに、貴女の行いについても苦言を呈させていただきますわ」


 クリスティーナが言うと、驚いたような表情を浮かべ、サリアが問う。



「苦言ですか? 何故?」



「無闇な支援に意味が無いことぐらい、貴女も貴族なら分かっているでしょう。


 何故、こんなことを?」


 直球で問うクリスティーナ。


 本来ならばもう少し回りくどく、自身が非難を受けぬよう、かつ相手の意図が汲めるよう、上手く問いかけるものだが、これにはクリスティーナの経験不足と、本人の気質からくる脳筋っぷりが出てしまう。



 少しトゲのある発言に、炊き出しを受けていた入居者達が注目する。



「――意味が無いなんて、そんなまさか。


 見てください、皆さんお腹を空かせて、痩せ細っているでしょう?


 食べられないことは悲しいことです、それがこうして、お腹いっぱい食べられる日が一日でも増えて、何の悪いことがあるんでしょうか?」



 言い返されて、クリスティーナはハッと気づく。


 明らかに――人の注目が集まるまで一呼吸おいてから、視線を意識しての発言。


 自分がどう見られるか、どう思われるかを意図して、言動を制御している。


 つまりサリアは、自分の支援が本質的な解決に繋がらない、場合によっては解決を妨げると分かっていて、なおあえてこのような行動に出ている可能性が高まった。



 その目的までは察することが出来ないが……意図があって貧困層の注目を集め、評価を得ようとしている。


 彼女は愚鈍な慈善家などではなく、愚かさを演じることすら厭わない、クリスティーナより遥かに政治闘争に優れた人物である。



 これが『本物』か――と一瞬の感心と、危機感を抱くクリスティーナ。


 前世の感覚が抜けきらないクリスティーナにとって、眼の前の聖女なる化け物の対処は手に余る。



「……少し気分が優れません、失礼いたしますわ」


 クリスティーナに選べる最善の選択肢は、撤退のみであった。



 経験不足かつ器も足りないクリスティーナでは、サリアの手練手管を躱すことなど出来ない。


 これ以上の対話は、クリスティーナの立場を悪くするばかりである。


 であれば――明らかに、サリアから言い含められ撤退するように見える状況でも、引くしか無かった。






 撤退した後、クリスティーナは救貧農場の視察に向かった。


 この日はちょうど、新しく拓く農地での開墾作業を始める日であり、多くの作業者と、精霊術を扱う老人が数名集まっていた。


「作業の方、もっと近くでご覧になりますか?」


「ええ、是非」


 クリスティーナは、まさに開墾作業中のところへと近寄っていく。



「今は、何をしているところなのですか?」



「ここは元々農地では無く、人の住んでいた土地ですので。


 建屋はすでに解体しておりますが、瓦礫もあれば、土の中に岩が残っていることもあります。


 まずはそれらを取り除いていきます」


 クリスティーナに問われ、司祭は語る。



「では、瓦礫を退けるぐらいは手伝いましょうか」


 クリスティーナは、腕っぷしで手伝えることもあろうと思い、提案するのだが、これに司祭は首を横に振る。


「いいえ、不要です。御覧ください」



 司祭に引き止められ、作業者達の様子を伺うクリスティーナ。


 精霊術の使い手である老人達が何やらブツブツと呟き、祈りを捧げると――途端に瓦礫や、土に埋まった岩が砂のように崩れて行く。



「こうした作業も、精霊術で行っております。


 貴族様であれば、もっと派手な術をお使いでしょうが、これが我々庶民の知恵なのです」


 司祭の言葉に、バツが悪そうにするクリスティーナ。



「ごめんなさい、わたくし精霊術には詳しくないの。


 才能が無くて、自分で使えるものが一つもありませんので」



「おや、それはそれは……さぞ苦労なさったことでしょう」


 司祭はクリスティーナに気遣いの言葉を掛けると、また作業内容についての解説を始める。



「こうして異物を砂に変えた後、適当な雑草を鋤き込んで、最後に精霊術にて土を良いものに変えるのです。


 鋤き込むところや、畑作業そのものは人の手でやらねばなりませんが、精霊術があるからこそ、このような土地でも手早く農地として利用できるのです。


 これが、魔術と精霊術の違いでもありますな。


 精霊術であれば、よく分からずとも、少しの魔力でこれだけの土地を開墾出来ます。


 同じことを帝国などに多い魔術師に頼ってやろうと思えば、魔力がいくらあっても足りませんし、土に対する理解も深くなければなりません」


 司祭の解説は、この世界に存在する不思議パワー……魔術と精霊術の違いについて、わかりやすく語っていた。



 クリスティーナの前世とは異なり、この世界には魔力がある。


 殆どの人間は魔力を持っており、これを利用することで超常現象を引き起こす。



 一般に――魔術と呼ばれる技術は、魔力を多く必要とし、起こす現象への理解が深いほど強力な術を放つことが出来る。


 対して精霊術は、精霊が代わって超常現象を起こすため、理解も多大な魔力も必要無いのだが、精霊に愛されていなければ力を借りられないし、出来ることにも限度があり、すべては精霊の気分次第となる。



 王国の場合、痩せた大地を開墾し食糧事情を改善する為には、精霊術の方が効率の良い技術であった。


 その為、高い魔力を備えて生まれようとも、貴族は例外無く、精霊術について学び、体得する。


 才能が無く、精霊術を何一つ使えない、フィジカル一辺倒のクリスティーナのような存在は例外中の例外であった。



 そして精霊術が使えないからこそ――クリスティーナは領地の発展に寄与する術が限られている。


 政略結婚に巻き込まれたのも、武力を認められる形でしか軍閥での存在感を示せなかったのも、元を正せば精霊術の才能が無いところにある。


 これがクリスティーナにとっての明確な弱点であり……貴族令嬢として理想的でない、瑕疵の一つでもあった。

なるほど、つまりこの国は精霊の加護が全てってことだな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。





☆Narrative Worksの新連載!☆

【暴力】で全てを破壊する転生悪役令嬢、精霊の加護が全ての世界で婚約破棄される
著者:殿海黎



☆書籍化・コミカライズ作品☆
無能は不要と言われ『時計使い』の僕は職人ギルドから追い出されるも、ダンジョンの深部で真の力に覚醒する-仕事が回らないから戻れと言われても今更もう遅い、SSS級冒険者として自由に生きていきます-
著者:桜霧琥珀

クラス転移に巻き込まれたコンビニ店員のおっさん、勇者には必要なかった余り物スキルを駆使して最強となるようです。
著者:日浦あやせ



☆Narrative Worksの連載作品一覧☆

異世界チーレム転生できたけど、ヒロインが全員ギャグ漫画の世界の登場人物なんだが?
著者:亦塗☆さくらんぼ

盾持ち令嬢の英雄譚
著者:雨降波近

蒼炎の英雄-異世界に勇者召喚された少年は、スキル『火傷耐性』を駆使して成り上がる-
著者:稲枝遊士

吸血鬼な悪役令嬢に転生した私がSSS級国際指名手配犯となり最強チートスキルで婚約破棄王子や元クラスメイトの勇者などを倒していくお話
著者:稲枝遊士

ツルギの剣
著者:稲枝遊士

ゴブリン・コンバット-異世界のゴブリンに転生したので、地上最強の生物を目指してみようと思う-
著者:殿海黎

池袋ボーイズ(大嘘)
著者:亦塗☆さくらんぼ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。