↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刀を抜いたら、近藤勇でした。  作者: おぶ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/9

動き始める

木刀を握った。


身体が自然に動いた。


足を開く。


腰を落とす。


木刀を構える。


「……え?」


自分でも驚いた。


身体が知っている。


どう構えればいいのか。


どう足を動かせばいいのか。


どう木刀を振ればいいのか。


頭では分からない。


でも身体が分かっている。


これが――

近藤勇の身体。


沖田の目が変わった。


「……なるほど」


さっきまで笑っていた顔が消えた。


「やっぱり近藤先生だ」


俺の背中に冷たい汗が流れた。


沖田が踏み込む。


速い…!


「うわっ!」


身体が勝手に動いた。


木刀を受ける。



ガンッ!


衝撃が腕を走った。


「速っ!」


沖田が笑った。


「まだまだですよ」


「いやいやいや!」


二撃目!


三撃目!!


四撃目!!!


俺は必死で避けた。


身体が勝手に動く。


避ける。


受ける。


下がる。


木刀を振る。


沖田が避ける。


「……すごい」


俺は思った。


これが沖田総司。


本物の剣士。


怖い。


怖いけど――


同時に。


ものすごく楽しかった。


祖父が好きだった世界。

祖父が語ってくれた人。


その本人と、今、刀を交えている。


俺は思わず笑った。


沖田も笑った。


「先生、楽しそうですね」


「……うん」


「じゃあ、もう一度」


「え?」


「今度は本気で」


「いや、待って!?」


遅かった。


沖田が踏み込む。


俺は反射的に木刀を振った。


カンッ!


沖田の木刀が弾かれる。

一瞬の沈黙…


俺も驚いた。


沖田も驚いた。


土方も驚いた。


そして。


沖田が笑った。


「やっぱり、近藤先生は強いですね」


「…………」


俺は木刀を下ろした。


そして心の中で思った。

――俺。


近藤勇になってるんだ。


この人たちの仲間なんだ。


だったら。


絶対に死なせたくない。


沖田総司も。


土方歳三も。


山南敬助も。


みんな。


俺は知らず知らずのうちに、木刀を握る手に力を込めていた。


その時。

道場の外から声がした。


「近藤先生!」


一人の男が駆け込んでくる。


「何だ?」


土方が振り返った。


男は息を切らしながら言った。


「京の都が!京の都が、きな臭いと町中が騒がしくなっています」


「京の都?」


俺は呟いた。


男が続ける。


「浪士たちが、京で何か企んでいるらしい」


俺の背筋に冷たいものが走った。


京都。


浪士。


新選組。


そして――


池田屋。



俺は知っている。

歴史が。

動き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。