沖田沖田沖田!!
「沖田に会ってきます!」
そう叫んで道場へ走り出した俺の背後から、
「待て、勇さん!」
土方の声が飛んできた。
だが、待てと言われて待つほど、俺は冷静じゃなかった。
何しろ、これから会うのは――
沖田総司だ!
新選組一番隊組長。
天才剣士。
幕末最強クラスの剣士。
そして――
若くして、この世を去る男。
俺は走りながら考えた。
結核。
たしか、結核だった。
でも、現代なら治療できる。
抗生物質?
ストレプトマイシン……?
だったか?
いや、そもそもこの時代にそんなものはないし、俺では作れない…
じゃあどうする?
栄養?
休養?
衛生管理?
そもそも結核菌に感染しているかどうかなんて、俺には分からない。
「……俺、医者じゃないじゃん」
当たり前のことに気づいてしまった。
歴史を知っている。
でも医学は知らない。
「……詰んでない?」
「何が詰んでるんだ?」
背後から声がした。
「うわっ!」
振り返る。
土方だった。
いつの間にか追いついている。
「勇さん、お前さん、今日どうした?」
「どうしたって……」
「朝から妙だぞ」
「……そうですか?」
「そうだ」
土方は俺の顔をじっと見た。
「何か悪いものでも食ったか?」
「食べてません」
「なら頭だな」
「頭って何ですか!」
「いつもより馬鹿になってる」
「ひどい!」
土方はため息をついた。
「総司なら道場だ」
「知ってます」
「なら、走る必要はない」
「早く会いたいんです」
「なぜ?」
俺は答えに詰まった。
なぜなら――
死なせたくないから。
でも、そんなことを言えるわけがない。
「……有名人だから」
「総司が?」
「はい」
土方は少し考えた。
「まあ、剣は強いがな」
「ですよね!」
俺は嬉しくなった。
「やっぱり天才剣士なんですよね!」
「天才?」
「はい!」
「……まあ、そうかもしれんな」
土方が少し笑った。
「ただし、あいつは――」
その先は聞けなかった。
道場の扉が開いた。
「近藤先生!」
中から声がした。
俺は息を呑んだ。




