俺が!?
第一章 近藤勇になった
「近藤先生!」
誰かに肩を揺さぶられていた。
「近藤先生!!」
うるさい。
耳元で叫ばないで欲しい。
俺は目を開けた。
「……ん」
知らない天井だった。
白い天井じゃない。
木の梁。
畳。
障子。
「…………」
俺は目を閉じた。
もう一度開ける。
同じだった。
「夢?」
「近藤さん?」
声の主を見る。
知らない中年の男だ。
髷を結っている。
着物を着ている。
俺は飛び起きた。
「誰!?」
男も驚いた。
「誰って……」
「ここどこ!?」
「試衛館ですが」
「……は?」
「試衛館です」
「どこ、それ!?」
男が困った顔をした。
「近藤先生、本当に大丈夫ですか?」
「だから近藤って誰!?」
男が固まった。
そして小さく呟いた。
「……近藤先生?」
俺は自分の身体を見た。
着物。
知らない手。
知らない腕。
「…………」
嫌な予感がした。
俺は立ち上がった。
ふらふらしながら部屋を出る。
廊下を歩く。
廊下の突き当たりに水瓶を見つけた。
そして――
固まった。
その水面に映っている男。
その顔を。
俺は知っている。
本で。
写真で。
祖父の話で。
何度も見た。
「…………嘘」
頬に触れる。
水面に映る男も頬に触れる。
髪を触る。
鏡の男も触る。
「嘘だろ……」
俺は呟いた。
「俺……」
水面の中の男を見つめる。
「近藤勇?」




