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休日前、千無月夜物語は夢の中で…。

前回のラストからのあらすじ…


目を離したら、すぐに消えてしまいそうな月路をずっと見はっている美星。

見はられていると帰れないと思った月路はいきなり何を思ったか。


「シャワー浴びてくる」とかいいだす。とはいえ絶対に逃げだすと予想する美星だが、月路はシャワー浴びると部屋に戻ってくる…


その結果は予想外のモノだったので…美星は…


というか、俺また…いいように扱われるのか?

呉羽の時みたいに…

俺はあの時の恐怖がよみがえってきた。


イヤだ…


月路は何をするかと思えば、ベッドの上にあったタオルケットをめくって、


「寝ようか」


と一言。


マジかよ?

それもこれ、かなり無理してないか?と思えるぐらいの落ち着いた態度だ。

いや、それでもホントに無理している様子はない。

俺が見てきた中で一番男慣れしている鈴々ですら、こんな時にここまで落ち着き払ってなかった。




こいつ天然?逆に男を何一つ知らんとか?

だとするなら、こいつ男をなめすぎている。

一回、痛い目見ないと分からんのなら…


と思いかけていた時だった。




「さぁ早く寝る!」


と言われて何されたか思ったら、俺はいきなりお姫様抱っこされて、ベッドの上に落とされてしまった。まさか、女相手にお姫様抱っこされるとは思わなかった。



ああ、これあの時のことを思い出す…


俺はまた女から襲われてしまうのか?


やめてくれ…

さすがにお前にまでそんなことをされるのは…



と思った時だった。


月路はそのまま俺にタオルケットをかぶせてきた。


「!?」


そして、椅子とエコバッグを持ってきて、ベッドのわきに座った。


「子供は寝る時間です。」


「ハァ―――!?」


「もう、いっぱい寝ないから、背が伸びないんだよ。だから、まだ子供!さぁ寝る!」


言われてみれば、俺は元バスケ部だが170ぐらいで、元バスケ部にしてはタッパがない…。

192あるオヤジとはかなり差はある。


それにしてもだ…


「ガキ扱いするな―――!」


これ、日芽子の弟扱いしてきたよりも、ひどい扱いだ。


「15歳までは、まだ小児科通いするような子どもなので、一応は合ってますけど何か?」


なんだよ?それ!?

そういうお前はいくつなんだよ!?

と問いただしくなったが、オヤジから「女性の年齢にはだけは、触れるな」ときつく言われてるので、聞くに聞けないこの辛さ。



「じゃあ俺が15過ぎれば、対等に見てくれるのか?」


「さぁそれはどうだろう?約束はできない。」


すごいのらりくらりとかわされた感ある。

これ絶対、俺のことを一生ガキ扱いするつもり満々だ。


そういえば今気づいたが、冷静に月路を見たら、こいつがっつり服を着てるではないか?


つまりはだ。

最初っから、そんな気はさっぱり無しということか?


こいつ完全に俺のことをなめてるんか?


「そんなことよりさ」


月路はエコバッグの中を漁って、何を出すかと思ったら。


「じゃーん」


「…」


もう言葉にならないほど、とんでもないものだった。



「…なにこれ?」


それを見て俺は呆れるしかなかった。


出されたのは、どこかの幼稚園児が描いたような、拙い絵だった。

いやそれでも描いたのが幼稚園児だったら、うまいかもしれない。

それも一枚だけではなく、何枚か重ねた状態で見せてきた。おそらく、その後ろにある絵をすべて見せつけられるのだろう。


「これ、あたしが5歳の時に描いた紙芝居。」


ん?紙芝居って?

5歳の時に描いた自分で考えたお話って?


ふぁぁ――――――――っ!?


なんか信じられん…


「あたしが初めて描いたお話。

まだ、幼馴染と弟にしか聞かせたことがないから、ぜひ聞いてほしいなと思って。」


と無邪気に言ってきた。


よくよくみたら「どろぼーさんのせえかつ」とかいたタイトルが、幼稚園児らしい全ひらがなで書かれていたことに気が付いた。


えっとこれ?つまり「泥棒の生活」だよな?


で?また更になんか書かれているけど…


「“しへらざぁと・あまかわ”って、なんだ?」


タイトルに比べて、小さめな字で記されていたので、思わず声に出して読んでしまったではないか。


「ああ、いわゆる芸名って奴?ママがね。「こういう時は自分の名前とはちょっと違った名前を使ってもいいのよ。」と言っていたから、この当時、何となく憧れていたアラビアンナイト系のお姫様の名前もらったんだ。」


ママって?お前?いい年して、母親のことをママって呼ぶんかよ?


そりゃそうと「しへらざぁと」って?つまりは千夜一夜物語の主人公シェヘラザートのことだよな?

幼いながらにすごいペンネームだな。

「あまかわ」って?多分まんま名字だろうな。


つまりは本名「天川月路」だろうか?



「それでは今宵も語りましょう。巡るめく千もない物語を…」


「千も…ないのかよ…?」


「当たり前でしょ?あたし、本物のシェヘラザートと違って頭よくないもん。まだ、千も物語なんて作れてないよ。」


確かにな。月路が頭いいかどうかの問題よりも、普通は千も物語考えるなんて無理だろう。


「ていうか、何で読み聞かせって流れになったんだ?」


そもそも夜に男女が二人きりで、読み聞かせ状態になんて、まずありえなくないか?

でも確かシェヘラザートって、王と2人きりの部屋で物語を語るんだよな?

というか、話を聞かされる俺は、例の悪い王様役かよwいや、なんかちがうな。


「いいのー。あたしこういうの、やりたかったんだもん。」


「やりたかったって…」


まぁそんな大昔に作られたと思われる幼児が描いた絵の紙芝居なんて、今時小さい子でもまともに見ないであろう。

こんな作品を無理やり見てくれる奴といえば、たった今、事情を詳しく知った俺ぐらいなものだろう。



それにしても、ホントにこいつは俺のことをガキにしか見てないようなその態度は、いちいち引っかかる。

たが俺には、寝る前に親から読み聞かせをしてもらうという経験はなかった。だから、月路の読み聞かせは、やっぱり暖かくもあり、どうしてもそこは逆らえなかった。


「じゃ読むね。」


もういい。

乗り掛かった舟だ。



「どろぼーさんのせえかつ。しへらざぁと・あまかわ作。」


わざわざペンネームまで読むところ…



“おれはどろぼう。

どろぼうはあさにねてる。よるにおきる”



たったそれだけで、一枚目がめくられる。

まぁ、幼児が作者なら、こんなもんか。


“「いまだ、よるの12じだ。でかけるぞ。」

「おー――」

どろぼうはよるにしごとをする”


そして2枚目がめくられる。

単純すぎて、寝物語にもならんな。


“「きょうはここ、やまだのいえだ」

どろぼうたちは、やまだのいえにはいった。”


また一枚めくられる。

ていうか、山田って誰だよ?


“「けらいどもー、ぜんぶぬすんでくぞー」

「おぉー!」

やまだのものはぜんぶぬすんだ。”


家来どもって…?



“「よし、にげるぞ。きょうのしごとはだいせいこうだ。」

こうして、どろぼうたちはにげてった。”


なんだこの話…どう考えても変なんだけど…


“こうして、どろぼうはおかねもちになりました。

やまだのいえはびんぼうになりました。

めでたしめでたし”



これで終わりらしいが…




「おい……」

ツッコミどころが多すぎる。

「なんで山田が貧乏になってめでたしめでたしなんだよ。そもそも山田って誰だ?」

「いやさ、昔なんか知らないけど、最後に“めでたしめでたし”って書いてあったからさ。あれ、絶対つけるもんだと思ってたんだよねー」

「雑すぎるだろ……」

なんで山田なんだ。

その違和感だけが、妙に引っかかった。




「じゃあ、次のお話行くね。」


次は、少しはまともなお話になっているのだろうか?



「じゃーん。「ねこちゃんきょうだい」というお話。」


なんか、結構ありきたりな話だ。


相変わらず、幼稚園児が描いたような絵柄だった。

ただ、泥棒の話に比べて、カラフルな絵柄でかわいらしい感じになっていた。


ほぉ、一応こういうかわいい絵も描くことができるのか?


内容的には、猫の兄弟が街の不良ネコにさらわれた、自分たちの友達ミケ子を助けに行くお話だ。

それもなんでか、3兄弟で3匹ともマシンガンを持っているという物騒なお話だ。

弾はPP弾を使用したものらしいが、こいつホントにサバゲ―とかこういう遊び好きなんだなーって感じのお話だった。

今回のサバゲ―勝負にしても、それどう考えてもこいつの趣味に付き合わされてる感がすごいある気がしてきた。


話の内容は、さすがに前作よりかは長かったが、結構簡単に終わった。


「あ、そうだ。」


「なに?」


「そういや来週、サバゲ―勝負なんだけどさ」


「そうだな。」


あまり考えたくないことだった。


「美星さ、なんとか仲間集められないかな?」


「は?そんなこと言い出しっぺのお前が集めろよ。」


「あたし、友達いない。」


「はぁ?」


ここまで来て友達いないって…


「俺だってサバゲ―経験者の友達なんかいないぞ。」


「えーじゃあさ、できればあと3人ぐらい欲しいけど、最低あと2人でいい。人数さえそろえば、あたしがなんとかフォローするからさ。」


確かに月路の運動神経なら、信頼できる。

とはいえ俺だってまともに誘える相手なんて、都築と遠藤しかいない。

都築は簡単だか、面倒なのは遠藤だ。


「都築は大丈夫と思うけど、遠藤、来れるかな…。」


「難しいの?」


「まぁ遠藤の家は厳しいからな。」


「そうか…なんかわかる気がする…。」


「え?」


分かるって?何のことだ?


「要するに、遠藤君が家の人から怒られなきゃいいんでしょ?あたしそういうの得意だから、とにかく遠藤君を連れてくるだけ連れてきて。」


なんかもう、何をやるのかよくわからないが、とにかく月路は変なことが得意だということだけは分かった。おそらく、その日も俺が想像もつかないようなことをやってのけるのだろう。


「なんか楽しみだね。」


楽しみだねって…

決闘なんだけど…

やっぱり普通にサバゲ―やる気でいません?あなた?



というか、俺だってサバゲ―なんてやったことないのだが…


「月路は、サバゲ―やったことあるんか?」


「うん。お父さんに何度か連れてってもらえた。」


また、すごい趣味したオヤジだよな。

いっそ、こいつのオヤジさん連れていきたいぐらいだよな。

あ、でも今回は子供の喧嘩だ。大人はさすがにまずいよな。


「その時、めっちゃ楽しかったんだー。」


なんだか、すごくいい顔していた。

この間は、お父さんの話となるとあまり乗り気でなかったけど、今は明るい表情をしている。


「お父さんも、サバゲ―に行ったときはあたしを褒めてくれるし、だからサバゲ―大好き。」


ん?そのサバゲ―の時しか、オヤジさんがほめてくれないように聞こえたが、いったいどういうことなんだ?


それも知りたかったが、何分、人様の家庭の事情にこれ以上突っ込むのも野暮だと思って、そこはいろいろ察するだけにとどめた。



「じゃあ次行くねー。」



ってまだなんかネタはあるらしい。

千もないとかは言っていたけど、それなりにネタはあるらしい。


今度は何かと思ったら…




「つーかい!じゅげむひめ!

 BY シヘラザート天川

かたりて かつら月丸」


「って‼これ落語じゃないか!?」


「えへへ、すごいでしょ?」


「それも芸名が二つって?それも名前に漢字使ってる…」


「お察しの通り、ペンネームと高座名っていうの?学校上がってから描いた作品だから、そうなるよね。」


まさか、自分で落語家の高座名まで考えてしまうなんて…

絵柄的には、小学生の低学年あたりで描いたかと思われる作品に思えた。


「とはいえ、私も落語は寿限無ぐらいしかできなかったし、あまり面白くないかもしれないけど、小学2年生ぐらいに描いた作品。きいてね。」


寿限無ぐらいしかできなかったって?その歳で落語覚えるだけですごいわ!


「お前頭いいのな…」


「なわけないない。国語、算数、理科、社会全部C評価だったしさ。勉強全般は全然できなかったよ。」


なのにこれ?

イヤ信じられないんですけど…


「いやそれでも体育とかはよかったのでは?」


「あー、ずっと小学生まではA判定だったけど、中学入ってからはずっと3だった。まぁ他の教科よりかは比較的マシな方だったな。体育と家庭科と美術は…。」


体力お化けで体育が3って?それにあれだけ、手際よく料理が作れて家庭科が3って?


「あぁ、あたし筆記試験がさっぱりダメでね。それにあたし、料理は教科書どおりにやるのが嫌いで、どうしてもそこができなくてね。毎回減点されるんだよね。」


それかよ。こいつ欠点なしかと思っていた。

実技は問題ないが、勉強はさっぱりできないっていうタイプか。


「まぁそのせいで、一応誰でも受かるような中高一貫校に受験させられて、高校受験は逃れた身だから、まだよかったけど、中学受験受けてなかったら、ホントぞっとする。」



ん?待てよ?

この辺りで、受験勉強なしでも入れる中高一貫校……

……別名バカ中となると限られてくるな。

金出せば条件だと、ジョーサムとか、その手のとこか。

つまり――そこを当たれば、月路に辿り着ける。

だが、単なる私立バカ中学はガラが悪い奴が多いから、あまり関わりたくないのが本音だが…


「じゃあいくね。


あるとのさまがいた。

とのさまにはかつて3人の娘がいた。名は、いち、に、さんと名付けられた。でも三人とも3年も生きられなかった。

そして数年後…、とのさまにはまた、玉のようなかわいい女の子が生まれた。


領主は今度こそはと思い…」



寿限無の出だしって、確かこんなものだよな…

そこまでは一緒か…


「じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょ…」


ああ、あの長い名前が始まったか…


「ちょうきゅうめいのちょうひめ!」


なんだ…長助が長姫に変わっただけやんかw

ホントこいつはどういう感性してるのだか…





そう思ったまま…





俺は「姫」と聞いたところで…気が付けば、目の前に日芽子がいた。




え?




なんで?いきなり?


目の前に日芽子がいる。たったそれだけで、今まで何があったか?さっきまでどうしてたか?そんなことはどうでもよくなってきた。


今は目の前にいる日芽子のことだけを考えたい。


そうか、その寿限無姫の主人公である、ちょうきゅうめいの長姫を日芽子に置いて考えればいいお話か…。

なるほど、時代背景は多分江戸。日芽子がきれいな着物を着ているわけだ。


なかなかいいチョイスだ。


で?その長姫ちゃんが?

全然自分の名前を正確に言ってくれる人がいなくて怒ってるって?


もう、そんな怒り顔の日芽子もかわいいって。


え?間違えた者は処刑とな??


そんな恐ろしいことを、そんなかわいらしい顔でいうのは、なんと恐ろしいことで…

間違えた者たちは次々とお仕置きされて消えていった。



そしてそんな日芽子は俺の目の前まで来た。


「ねぇ私のこと、心から愛してるなら、私の名前を間違えずに言えるよね?」


げっ笑顔で、そんな黒い瞳でお願いされたからには間違えるわけにはいかないではないか?

それに名前を間違えずに言えた者は姫の婿とするとのことなので、またとないチャンスだ。


だが、困った事に俺は寿限無すら、まともに覚えてない。



マジで絶望的であった。



そこへ、笠を深くかぶった背が高い虚無僧現れた。



虚無僧は俺の耳元で、


「ダイジョーブ! ココハ ワタシ二 マカセルネ」


あれ?この喋り方どこかで聞いたような…


「オー ウツクシーヒメ コノモノノカワリニ ワタシガ ヒキウケマショー」


なんだこいつ?まさか…



「まぁ素敵なお方、それはぜひお願いいたしますわ。」




「オー マイ プリンセスジュゲム― 34バン リトナン イッキマース!」


おい!やっぱりリトナン!お前かよ!?


「ジュテェーム ジュテェーム アイシテイマース カワイイキンギョネン」



全然違うだろ!?



もうあかん、終わったなこいつ…

と思った瞬間だった。


日芽子が次のアクションをしようとする前に、こいつはなんと素早く日芽子にキスをしていた。



「ぬぁんだってぇ―――――――っ!!!」



それもガシッと日芽子の唇を離さないまま、濃厚な大人のキスをしていた。



「こら―――っ!おまえ、日芽子から離れろ―――っ!!」


いとも簡単に俺の目の前で日芽子のキスを奪いやがった。


それは絶対に許せない!


「まぁまぁ、口がくっついたぐらいのことでガタガタ言うなよ。大人げない。」


そこへ登場したのが…


「オヤジっ!」


着物を着崩したオヤジがいた。


「失敬な、俺はお前のようなでかいガキは、俺にはいねぇよ。」


「は?」


「悪いがそこの姫さんは、今から俺とそこの出会い茶屋で一息する予定だ。もらっていくぞ。」


オヤジは素早く、日芽子を肩に担ぎあげていた。もうそのまま出会い茶屋まで駆け出していく勢いだ。


「オー アノヒト エイチネー ヘンタイネ」


当たり前だろ!?


「なぁ出会い茶屋ってなんだよ?」


「イマデイウ ラブホテルネ」


「は?」


「ソーヨ ココデ ツカマエナイト マズイネ」



と言っていた時だった。


「こらー!そこ!教育に悪いこと言うなぁー!」


現れたのは侍姿した担任夏目だった。


「それゆえに某も助太刀いたす!」


「せっつぁんずるい―――――!!」


そのあとから時雨くんも追いかけてきた。


なんなんだ?この集団?


そんな時ちょうど、オヤジが走っていく方向に桜野先輩がいた。


「さくらの先輩――――!!」


「え、人さらいですか?」


「それ!」


オヤジはそのまま通り過ぎた。



あぁとうとう、オヤジが出会い茶屋の前まで着いてしまった。

もう終わりだと思ったとたん。



オヤジの目の前には、大きなヒメヒマワリの花束が地面に刺さった。

ていうかその花束、俺が昼間に作った奴やん。

だとするとこいつの正体はおそらく、俺が花束を売ったあのおっさんだ。



「我が名は、花束仮面!ただいま見参!」



何なんだ?その時代遅れで、この江戸の舞台にしては前衛的な登場の仕方は?

おまけに適当に名乗った思われる名前も滅茶苦茶ダサい。


まぁいいや。



とにかくオヤジを引き留めてくれた時間稼ぎ要因としては感謝している。




そして、この江戸の舞台にタキシードという、その場に適してない姿に呆れをなしたオヤジに隙ができたらしく、日芽子はうまいことその花束仮面という謎の人物がお姫様抱っこしている状態となった。つまり日芽子がボールという例えなら、今はその謎の人物にボールが渡ったということだ。



というか日芽子をお姫様抱っこだ?それは俺のポジであり、俺以外がすることは許すまじ!


「こいつはいったん俺のモノとさせていただく!」


「は?」


何言ってるんだこいつは?


せっかく、一番危険人物とされるオヤジの手から逃れたいうのに結局これかよ!?


「俺にそんな権限があるかどうかなど、今ここではどうでもいい。」


「あるわけないだろうが!」


そしておっさんの脇には、あの不思議少女ナノカが黙ったままずっとこっちを見てきている。


「そこでだ。チャンスをやろう。」


そしてナノカはまた奇妙なことに、何かを空に向かって投げた。


そしたら花束のおっさんが


「さぁこれを受け取るか取らないかは君ら次第。ちなみに一度地面に落ちたものはただの石ころになるので意味がない。落ちるまでに何とか拾え。」


と言われたので、それはホントに一瞬だった。

あっという間に全部地面に落ちてしまった。


「では、誰も受け取らなかったので、次回で。」


おっさんが言い終わると


「待て!」


それを制止したのはやっぱりオヤジだった。


「だいたい投げてから説明するなんて、それってずる過ぎやしないか?もう一度チャンスをくれ!」



言ってることはもっともだ。


「多分、再度こうなることだろうとは想定してたわ。じゃもう一度」


ナノカはすでに投げた石ころたちを自分の手のひらに掃除機みたいに回収していた。

そしてナノカは自分の手にあるものをまた思いっきり空に投げた。

それはカラフルな石、パワーストーンか宝石みたいな感じなものだった。

そして形も様々でちぐはぐに見えた。


正直、それが何を意味するものなのか分からないが、何か一つはつかまえないと永遠にけじめがつけられなさそうな気はしていた。


俺はこれだと思うものが二つ見えた時、「これだ!」と思い両手で同時にそれに目を付け、腕をクロスさせる感じでなポーズをとっていた。幸い両方とも手の中に一つずつ捕まえることに成功したらしい。



オヤジや桜野先輩も利き手で何かをつかんだらしく、手は握ったままだ。


そしてリトナンはなぜか大当たりをキャッチしたらしく、リトナンの手にはほんのりと黄金に輝く基本的に透明感ある大きな水晶玉を手に持っていた。


なんなんだ?こいつは?


そして時雨くん、担任の夏目は一つもキャッチできなかったらしい。


そして不思議なことに石を捕まえたであろう手を開こうとしたが、なぜか開かなかった。

それはオヤジや桜野先輩とかもだったらしく、手のひらを開くことはできなかった。


「ちなみに俺が以前につかんだ石はこれな。」


とくに特徴などはないが、おっさんが持っていたのは白い石だった。

あれ?さっきナノカが放った色とりどりの石たち比べ、地味すぎる感じの石だ。


そしてナノカはまずは桜野先輩の前に立った。


ナノカが桜野先輩の手のひらを開ける。

どうやら、手のひらは自分では開くことはできないが、ナノカが力を貸すことで開けることができるようになっているらしい。


「わぁ…」


桜野先輩は自分の手のひらの中を見て、にこやかな表情で愛でていた。


「かわいらしい石ね。おめでとう。」


あの喋らないナノカが喋った!?

それもこの声どこかで聞いたことがある声だ。


そしてナノカが次に行った先は


「あの、手の中痛いんだけど?早く開けてくれない?」


オヤジの前だった。

よく見るとオヤジの握られた手からは血がしたたり落ちていた。

なんだそれ?血が流れるほど強く握りしめ過ぎじゃないか?


ナノカがオヤジの手を取り、オヤジの手のひらを開く…


「…」


「やっと開いた…ってこれ?」


「石、結構…妬いちゃってる。」


ナノカがむくれた顔をしてオヤジに説教していた。


「あ、あはははははは…」


「この子。大事にして…」


なんかよく分からないけど、石がオヤジを傷つけたいと思うほど、石が怒っているらしい。


「あと、それと同時に悲しんでいる。」


「…え?」


オヤジは何か心当たりがあるような反応だった。


「たまには見てあげて!」


「…あ、はい…」


何なんだろう?



ナノカが次に向かった先はリトナンだった…



「3つね…」


リトナンは、あの大きなゴールド水晶以外にも二つほど宝石がついてきたらしい。

それも品がある水晶に比べて、なんか豪勢すぎて奇抜な感じの宝石だった。


「まぁあなたなら、どうにでもなるでしょう」


「ワタシ  コノコ ダケホシイ」


リトナンは自分が手にしている水晶だけを自分に寄せ、他の二つはナノカに返そうとした。


「そこは、どうにもならない。分かってるよね?」


「ノー…」


「大丈夫。この二つもあなたが持っているだけで、納得してくれる。」


ホント意味が分からなかった。



そして、ナノカが最後に来たのは俺の目の前だった。



「やっぱり、二つ同時に取ってしまったのね…」



それがいけないことだったか?

そしたらナノカはリトナンのことを指して、


「まぁあちらの3つもとっているので、一つしかとってはいけない言うルールはハナからなかったからいいけど。」


ナノカは片側の手のひらに触れて、俺に手のひらが開いた。

そこには卵型のムーンストーンがあった…


「この子になんて説明するの?」


そのムーストーンは本当に初々しい感じで、まるで何も知らない無垢な赤ん坊みたいだった。


これでは、俺が何も知らない相手をこれから思いっきり傷つけるって感じじゃないか?


俺はそのムーンストーンをナノカに返そうとした。

とてもじゃないけど、俺がこのムーンストーンを持つこと自体が重すぎる思った。

多分、持っているだけで、ただでは済まないであろうということは直感で分かった。


それはこれまでナノカが桜野先輩やオヤジ、リトナンに対する接し方を見てきて、イヤというほど判った。


「だめ。」


「!?」


「ここで一度捕まえた者は離れない…」


なんだって!?


今日はナノカが饒舌すぎるほど、喋ると反比例して俺の口からは何も言葉が出てこない。


「仕方ないわね…。やっぱり、あなた……選ばなかった…。」


どういうことだ?


「責任はとるのよ」


あの普段は表情一つ変えなさそうなナノカが、すごく悲しげな表情をしていた。


「あなたのお父さんも、そこはしてた。」



え?オヤジって?え?



「じゃ、もう一個開けようか?」


もう、後戻りはできない感じだった。


「大丈夫、この子はもうあなたのすべてを受け入れる気でいる…」


ナノカが俺の手を握って手を開いた瞬間!

虹のような光を放ったとおもったら、それと同時にすごい勢いのまぶしい光も放たれた。


本当に見たこともない光だった。


「この子は――……だから…。」


すごい光と共に


俺は目が覚めた…


って⁉夢だったわけかい!?



あ、やばい月路は?


気が付けば俺の部屋のは、昨日、月路が持っていたあの花束の一部が飾られていた。

あの花束は無駄にボリュームがあって、ホントにセンスが悪かったが、月路がうまいこといけたのか?夏らしいヒメヒマワリが、かなりきれいにまとまっていた。


こんな特技もあるとは…


勉強はできないとは言っていたが、いろんな意味でかなりできる奴とは思う。


それにしても…

……まただ。

あいつ、毎回何も言わずに消える。

こっちが寝てたのも悪いけど――

さすがに、おかしいだろ。


あ、


リビングの方から何か音がする。

慌ててリビングに行くと、




「よっおはよう。」


いたのはオヤジだった。

って、これ月路がまだここにいるとしたら、まずくないか?


「オヤジ…」


あれ?オヤジだけ?



月路がいない。


「お前、知らんうちに飯作るのこんなにうまくなってたのな。」


「へ?」



「もう、うますぎて全部食ってしまった。ごちそうさまでした。」



「ふぁーーーーーーっ!!?」


よりにもよって、あの大量にあったはずのカレーを全部平らげてしまっただと――――っ‼‼


「……朝も食べようと思っていたのに…」


俺は思わず本音が漏れてしまった。

ていうか朝カレーなんてホントに久しぶりに味わえる思った楽しみが――――っ!


「オーヤージ――――!」


「ん?」


「許すまじ―――――っ!!」


俺はオヤジに飛び掛かった。


「あはは、許せやもう…」


こういう時、どうやってもオヤジには敵わない。

そしてどうやってもあのカレーは帰ってこない。


「和心定食おごってやるから」


その和心定食10回分でも、あのカレーは帰ってこないんだぞ!

とホントに食べ物の恨みは強かった。

ホント家にカレーがあるというこんな日に限って、なぜか久しぶりにオヤジが帰ってきた。


そしてオヤジは


「ほらこないだのお前の写真。」


オヤジは律儀にも俺と日芽子が二人だけで写っている写真を持ってきた。

なかなかいい出来具合だ。

あの日、オヤジは日芽子のことを得意のカメラで落としかけていたが、同じ人物が撮ったとは思えないほどの出来栄えだった。


「ま、俺にはこっちの写真。」


と見せてきたのが何と…

日芽子のビキニスタイルの写真だった。


「おい!いつ撮ったんだよっ!!?そんな写真!!」


無論、俺も欲しい思うが、それを独り占めしたくなる代物だった。まずその前に保存場所から壊さないと…


「残念だけど合成だ。」


「紛らわしいことするなー!」


「あはは。お前の反応みて楽しみたかっただけだ。今日は残念なことにエイプリルフールじゃないから、さすがに思い切ったうそはつけなかったな。」


「エイプリルフールだったらどうしてただと?」


「そうだな。日芽子先生からヌード写真撮ってと頼まれたとウソついてたかもなw」


「お前―――!!」


ホントにこの人ならやりかねないんだよな。

たまに知人友人元カノの中には自分のヌード写真撮ってくれとか依頼する人もいるのはしっている。だから不思議ではないし、そこはどうでもいいけど、日芽子だけは許さん!


「要らんのか?」


「当たり前だろ!それきちんと捨てておけよ!」


合成と聞いてがっかりした。それなら欲しくない。

つまり顔は日芽子でも身体は日芽子じゃないのだから、そんなの意味がない。


「でもこっちは欲しいだろ?」


これは、俺たちが集まる前に撮っていた写真だ。

そればっかりはきれいに撮れている。

こっちは欲しいって、やっぱりオヤジはこういうところは分かってるな。



「いただいておく。」



オヤジはニコニコするだけで、こういう時は何も聞かない。

いろいろ察してるところがまた敵わない点でもある。


俺の歴代彼女を連れてきた時も、一緒に写真だけは撮ってくれたものの、それ以上は何も踏み込んでは来なかった。あ、でも藍沢限っては家バレするのも嫌だったので、連れてきたことはないけど。



あれ?オヤジが帰ってきたとなると聞くに聞けないことがある。


月路のことだ。



「なぁお前ってさ、園芸部に入った聞いたけど、こうやって花まで活けることまで教えてもらってるのか?」


「ん?」


よく見たら、あと3か所ぐらいに花が活けてあった。俺に部屋にあった花が一番大きかったが、他はミニブーケみたいにまとめられていたりした。


「玄関にも一瓶あってびっくりしたが、あれも全部お前がやったんか?」


「え?」


よく見たら下駄箱のところにも一輪挿しみたいな感じで一瓶、細くきれいにまとめられていた。



なんかすごいセンスが良すぎないか?と思うぐらいに、あのでかい花束がきれいに飾られていた。



俺は、もういいわけが思いつかず…


「えっと日芽子先生がその…」



「へぇやるねぇ、彼女。ここまで教えることができるとは、ホントにいい女じゃないかー。」


ホッなんとかごまかせた。

てことは月路とオヤジはこの家ではかち合ってないわけだ。

よかったぁ。


「惚れ直した。」


「…へ?」


イヤな予感しかない…


「どれ、ここはいっちょまた日芽子ちゃんにサービスするとしますか…」


そのサービスって…



「だめだぁーーーー!そうはさせるかぁーーーーっ!!」



気づいたら俺は、オヤジの腰に巻き付いてまで阻止していた。



「あはははははは―おもしろいなぁー美星は。ホントこの反応がたまんねぇー。」


また、からかったんかよ!?この人は…

俺は毎度この人のノリについていけなかった。




そして休日が明け…


「ホントにいいのこれ?」


オヤジから日芽子先生に写真渡しておいてくれと頼まれたから、言いつけの通り今、写真を渡している。


「オヤジもいい出来だったから、日芽子先生にも、ぜひもらってほしいんだって。」


「へぇもう本格的過ぎて、タダでいただくなんてもったいないぐらいだわ。何かお礼しておかないと。」


「気にしなくてもいいって。あのオヤジ甘やかしたら、ろくなことないですから。」


そうそう、日芽子はホントに人をすぐに甘やかしてしまう癖があるから、そこのところは気をつけさせた方がいい。


「ホント親子そろってそうなのね。なんか似てるかも。」


「冗談じゃない。あんなのに似てるなんて!俺、絶対にイヤだぞ。」


日芽子は笑っていた。


「こわい人とか聞いていたけど、いいお父さんじゃない。まさか、去年から知ってる人が美星君のお父様とは思わなかったけどね。」


そういえば、日芽子は去年からこの学校にいるんだっけ?

だから、あそこまでオヤジと慣れ親しんでいたとしてもおかしくないわけか。


俺より先にこの人に出会っていたことに少し嫉妬してしまった。


日芽子は一枚一枚写真を確認すると


「…あ……ウフフ…」


「どうした?」


「あ、ううん何でもない。」


多分、俺とのツーショット写真も混ざっていて驚いたのだろう。


そして二枚ほど確認し終わったときに…



日芽子は言葉に出せないぐらいに驚いた顔をしていた。

そして日芽子の体は思いっきり震えていた…



「どうした?」


「……美星…くん……?」


「?」


「これはいったいどういうことっ!!?」


日芽子は自分がビキニ姿になっている合成写真を俺に見せてきた。



「あ―――――――っ!!」



あのクソオヤジ―――――っ‼‼



「もう、変ないたずらしないでください!」


「え?先生…?これオヤジが……」


「嘘をつくのはやめなさいー。もうっ。

思春期だから仕方ないかもしれないけど、こんなの学校に持ってこないでー。」



俺は逃げ回っていたが、先生はさすがに許してくれなかった。


というかウソはついてない。

それ改造したのは、マジでオヤジであり、俺じゃないのに…。

何で怒られるんだ?


っとにオヤジもオヤジで変ないたずらするなよー!


そこへ…



「オーヒメコ ハレンチー イイネー」


「リトナン君!?ダメ!見ないで!」


「ヒメコ ワタシニダマッテ イツ ブラジアアイドル デビュー シタノデス?」


「いや。グラビアアイドルな。」


「ソレネ」


多分ブラジャーとかの下着写真アイドルとか思ったのだろうか?

あくまでこれは水着だけどな。


「ワタシニ ダマッテ カッテナ コトハ ユルセマセンヨ」


もう何なんだ?意味わからんくなってきてるが、なんかこの光景もおもしろい。

というか最近、リトナンの本気のボケが面白くなってきている日常であった。


「もう。これ、私じゃないのにー」


「もうこれ、リトナンが欲しがってるんだから、あげておけば?」




「だめです!事実は正さないといけません!私は清廉潔白です!」




「ソウネ ヒメコㇵ カンペキナ ヴァージンネ」


「もう!リトナンくんまで、恥ずかしいこと言わないでください!」


こんなことで怒っている日芽子がかわいく思えてきた。

いつもじゃ見られない顔を見て、俺もうれしかった。


俺はこのいたずらが、後に笑い事では済まされないことになるとは、思ってもみなかった。

とはいえ、結果を聞いてからは遅かれ早かれって感じだったが…



少しだけあとがきトーク。


いつもお話に付き合っていただきありがとうございます。


ちなみにね。ちょっとした小話で申し訳ないですが、作中にだした「どろぼーさんのせえかつ」というお話は、私本人が5歳ぐらいの時に、本当に書いた処女作だったりします。

さすがに月路みたく、原本はまで残してはいなくて、正式な原作ではありませんが、自分が子どもだった頃のことを思い出しながら、今回は適当に描かせていただきました。


あと、もう一つ出ていた「ネコちゃんのお話」も次作として、だいたい同時期である幼稚園年長の時に描いた作品のネタです。今回こちらのお話は大人の事情でお話の中身は全く違うお話してしまいましたが、一応昔に描いた作品をアレンジして表現してみました。


「寿限無ひめ」は、まぁ自分が親になってから、子どもに読み聞かせをする時に本持つのが重くてめんどうだなと思った時に、適当に思いついたまま語っていたというお話がまさにそれでした。

月路の高座名を見てお察しの通り、わたくし本人は今でも、桂歌丸師匠の大ファンです。


久しぶりにお話を書いていて懐かしくなったので、懐かしの作品をいろいろ引っ張り出してみました。今回のサブストーリーも楽しんでいただけたら幸いです。


私のつたないお話ばかりで申し訳ないですが、これからも見ていただけるとありがたいです。

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