Scene.23「彼と彼女」
僕は一瞬あっけに取られ、つい立ち止まってしまった。タイミングを逸し、しかたなくその場からカオリと彼の様子を見守ることに。
置いてけぼりをくらっている感は否めない。いや、誰の目からも2人が作り出した光景は明らかに奇跡の産物に違いなかった。
劇的な再会……言葉以上に知らしめられた。
カオリの信念が間違いではなかったのだと。ほんの1時間もしない単なるS駅までの道案内からはまったく想像できなかった。デートの待ちあわせならいざ知らず、2人に共通する意思があってこそ成り立ったまさに“運命”。
話す内容はわからなかったものの、遠くからでもわかる感情の振れ幅。棒立ちから腕を取りあい、体の押し引き。
彼の腕を先に掴んだはずのカオリが、彼から置かれた肩の手をふり解こうと左右に揺れる。いくつか会話を経て、カオリは相手の胸を押してそのまま突っ伏す。彼は再び彼女を抱き寄せ、溢れ出る感情を必死で受け止めていた。
最後はカオリが力を使い果たしたようだった。彼はじっとしたまま、足元から伸びる2つの長い影がしっかりとひとつになる。
2人はようやくわかりあえた。
取り返しがつかなくなる、まさに寸前のところで。
僕はそんなリアルに関係が修復される光景を目の当たりにしながら、自身が抱える問題に思いを馳せる。
これまで知りたいと思ってやまなかった彼の本心を確認することができたカオリ。これからは何があってもたやすく解けない絆が生まれたはず。とはいえときにまた同じようないい争いだったり、嫌なできごとはかならず訪れる。けれど2人が互いを想い、そばにいることで守りあうに違いない。まさにカオリはそんな幸せへ辿り着いた人のように思えた。
そして僕も、ようやく決心がついた。
自分にとって今一番大事な人、結那とこれからどう真剣に向きあうべきか。
手紙で伝えられたことを責めるほど、僕は結那を想っていたのか。あらかじめ異変を察知し、話をすることはいくらでもできたのではないかという新たな疑問が湧いてきた。
僕はふと思い出した記憶を頼りに、抱きしめう2人をよそにS駅へ向かっていった。
→1年後へ




