第50話 酒場に行こう
馬車に揺られて二日、イフリートの宿場町にたどり着いた。あと一日も乗っていけばイフリートの首都にたどり着く。そこで、神官に関して調べてみる必要はあるが、あまり期待できない気がする。
「歩きの方がましな気がしてきた」
ただ、ひたすらに馬車に揺られ続ける退屈な旅だ。いっそのこと、本当に、歩いていったほうがましだろうか。
「場合が場合だ、急ぎと言うほどでもないが、早く着くに超したことはないだろう。とはいえ、確かにきついな」
アレクサンダーが大きく伸びをしながら言う。実際問題、きついんだろうに。
「もっと速く、楽に行く方法とかアプリってねーの?」
「僕は水上なら、スクリュー代わりに船の加速が出来るが、馬車ではどうにもならない」
「あ、そう」
だったら、船で行きたいところだが、フェニックスからイフリートへの定期便というのは無いらしい。というよりも、この現地の国々自体が船に関する技術が未熟だ。せいぜい漁船が関の山で、貨物の輸送や戦闘に使えるような船の技術は無いらしい。
そもそも、この現地国自体さほど大きくもなく、香川以外の外部との交易はほぼ無いらしい。
この世界に、この12の国々しか無いのか、それとも絶海の孤島なのか、マップアプリで調べてみれば出てくるだろうか?
つか、世界を救済するなんてご大層なこと言いながらローカルすぎるわけだが。
「どうした?」
「ローカルヒーロー過ぎないか?」
「何がだ? ヒーローに変わりないなら構わないが」
「欲があるんだか無いんだか、わからんなお前は」
その後、宿場町の宿屋兼酒場に入る。宿場町だけあって、そういう建物だらけだが、吟味する気も無いので、一応は見かけだけでも一番綺麗なところにした。時間はあることはあるが、一日中馬車に揺られていたせいで、とにかく休みたいだけだ。
建物に入り、二人部屋を一つ借りる。そこから少しだけ部屋で休んでから酒場に向かった。
「はいよ。何にする?」
酒場の男が聞いてくる。メニューを見ると、飲み物はエールとカラス麦の蒸留酒、リンゴの果実酒それだけ。食べ物は、パンと茹でじゃがいもとソーセージとスープぐらいしか書いてない。うどんは無いのだろうかと思っていたら、俺達の前にうどんが置かれた。
「頼んでないけど?」
「駆けつけ一杯だ。うちは昔からうどんを出すのが伝統でね」
「伝統もなにも、うどんが伝わったの最近だろうが」
どれだけ早くても2年だよな?
何を伝統料理のような顔をして出しているんだか。
「そいつは言わないお約束だ」
茶目っ気をだして言ってくるが、何がお約束だこの野郎。
仕方なく、うどんをするり出すと、恐ろしく伸びている。コシも何も合ったもんじゃない。うどんをスープか何かの具材のように永遠と煮込んでいたのではないだろうか。
「文化って、伝わる途中で変わるもんだな」
「この魔改造は期待したく無いがね」
アレクサンダーも渋い顔をしながらうどんをすすっている。うーん、出汁もいまいちだろうかな。煮込み料理にするならせめて、何か野菜でも入れて具材を増やして欲しいところだ。
「さて、とりあえず、お茶か水無いか?」
「無い!」
店の男は迷いもなく堂々と言いはなった。うん、そう思っていたよ。お茶なんて高級品なのは香川でも同じだったし。実は、野草やハーブでお茶を作ってのんでいるぐらいだった。
アレクサンダーが小さくためいきをついて、別に頼んでいたエールに口をつけるが、思ったよりも味が悪かったのか、さらにため息をついた。
「さて、それよりも、ミズXだが」
「あくまでもその呼称使うわけな?」
「今、何処にいると思う?」
「何処ね」
恐らく、フェニックスの巫女狙いであればフェニックスに残っているかもしれない。だが、フェニックスの巫女は既に常に衛兵がついて警備が固められている。再び狙うのは難しいだろう。
ここで、狙っているのが、各国の巫女やシャーマン、神官であればどうなるか。フェニックスから一番近場となるとイフリートになる。つまり、イフリートのシャーマンが狙われる可能性は高い。
「杞憂かもしれないが、一応急ぐ必要はある。だから、とれる手段で最速を使う必要がある」
「もう一度、聞くが、相手がこっちよりも早い移動手段を使う可能性は?」
「それは十分にある。が、かといってこちらものんびり行くわけにはいかないだろう?」
「さいですか」
物事を悪く考えすぎない方が良いのだろうが、それでも、今回は悪く状況を想定しておいてもいいぐらいだろう。後手にまわるのは得策ではないが、かといって、先手を打ちようもないわけで。
俺は色々とあきらめて、エールを注文した。




