第51話 神官に会おう
イフリートの首都に到着し、宮殿に行き親書を見せると直ぐさまに地の神の神官に会うことは出来たが、結論から言って、収穫はゼロだった。
神官は、祭事を司っているらしいが、召喚どころか魔術らしい魔術は一切使うことを許されて無く、そもそも魔術自体の知識が全くなかった。そして、火の神をもっとも信仰しているイフリートでは、地の神の神官の地位は低く、狙ったところで交渉材料にもならないという判断を下せた。
「神官って言っても、タダの冴えないおっさんだったな……」
神殿からの帰りに立ち寄ったのは、イフリートの武器屋だった。
鋼鉄製の刀剣類や鎧が置かれているが、照明は蝋燭だけなので店内はうす暗い。イフリートはフェニックスと違って確かに二、三階建ての煉瓦や石作りの建物が多いが、多く密集している分、建物に日光が入りにくい状況になっていた。日照権って概念はあるのだろうか。
「そうだな。だが、生まれたときから、没落した神の神官の役目を担うなど、意欲も出ないだろう?」
アレクサンダーが細身の剣を手にとって眺めている。見た目は完全に西洋人の金髪碧眼だからか、やけに似合う。一方俺と言えば、小さめの斧を手にとっていた。小さいが、ずっしりと重量感がある。柄が長いリーチにある武器よりも、こういった小振りな武器の方が初心者には良いのだろうか。アプリに剣技や体術を扱えるようになるものもあるが、当然のことながら資金不足で買っていない。
金がないと本当に何も出来ないな。
「大した役割も無く、ただ、一生を過ごすか」
窓際社員みたいなものか。仕事が無くて楽な気もするが、実際問題、仕事がないと時間をもてあまして中々辛いらしい。窓際社員だった叔父の酔ったときの言い分というか愚痴からの受け売りだが。
「曲がりなりにも職業自由の世界から来た身としては、なかなかヘビィな境遇だと思わないか?」
「今現在進行形で、俺達にも職業自由の選択肢が無いわけだが。俺、そもそも何も承諾せずに来たからな?」
「そうかい。いつまでも言っているがいい。僕はヒーローになれたのだから、感謝しているがね」
「お前もいつまでも言っていろよ」
どれだけヒーロー願望強いんだよ。いや、目立つとかチヤホヤされるとかの目的のためにヒーローを目指しているのだろうか。それは後からついてくる物であって、それ目的でヒーローはズレているだろうに。
「役割があるなら、その役割を全うするんだろうな、職業自由の概念が薄いこの世界だとだが」
フェニックスの巫女と香川の知事を思い出す。俺から見れば面倒としか思えないような役割に押しつぶされずに仕事をしている。
「何か思うことでも?」
「なに、俺の役割はなんだろうって思っただけだ」
「明確だ。救済士に選ばれた以上は、救済をするべきだ」
「はっきりとしているのか、ボンヤリしているのか」
世界を救うなんて、大げさで、これほど何をしたらいいのか判らない言葉もないだろうに。
では、何が世界を救うのか。
チャリティー番組みたいに愛と金が世界を救うのか。
大勢の人々の意識と変革が世界を救うのか。
神様とやらの慈悲と恵みが世界を救うのか。
さて、そもそも世界を救うって何から救うのか。
答えのない仕事にしても程があるように思えて仕方ない。
「しかし、武器は悪くはないな」
そういって、剣を元の場所に置き、さらに別の剣を手に取る。今度は、さらに細くて尖った剣だ。レイピアと種別される物だろう。
俺も、斧を置いて、隣のメイスを手に取る。斧以上に重量感があるが、柄も短く、扱いやすそうではある。しかし、リーチを考えると、もう少し長い方がいいのか。それとも、槍にでも手を出すべきか。
「フェニックスの武器屋の武器だが、半分はイフリートからの輸入品だとさ」
それはそれで、戦争時とかフェニックスは大丈夫なのかと思うが、そこまでは範囲外か。一応というか、なんというか、イフリートは大陸でも最も鉱物が取れ、最も武器類の生産が盛んらしい。だからこそ、ついでに武器を見に来たわけだが。どうせ輸入しているなら、フェニックスで買ってしまっても良かったか。いや、現地だからこそ、価格が安いメリットはあるが。
「ほう。なるほどな」
「つーか、お前、あのやかましい水鉄砲があるのに要るのか?」
「水鉄砲と言うな! 良いだろう? ヒーローには剣がつきものだ。君は君らしく鈍器を選べばいい」
「剣とか、オーソドックスに見えて難しいだろうに」
とまぁ、こんな感じでそれぞれ武器を購入。
次の目的地は、シャーマンのいる村だ。




