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遠足大事典 -Ensoyclopedia- 作者:シェフ

~ 前日編 サスペンスパート ~

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15/21

持ち物15  祈り (下)




  10月2日 木曜日 20時50分



 お風呂上がりの頭にバスタオルをまいて、ブサコは2階の自室に向かっていた。

 いつもより、すこし遅くなった。
 とはいえ、休む時間はじゅうぶんに確保できるはずだ。
 あしたの準備は、もうすべて終わっている。
 宿題はきょうは出されていない。
 というのも、あしたは遠足だから宿題の提出ができないし、あした出される宿題は『遠足の思い出』を作文にまとめることだ。
 つまり、きょうはもう、とくに机に向かうことはない。

 だが、ブサコの準備は、『すべて』終わっている。
 遠足のための支度はもちろんのこと。
 漢字ドリルや計算ドリルなどは、宿題として出されているペースを見て、それを先回りして、遠足後の平日、つまり今度の月曜日に出されるであろう部分まで終わらせてある。

 そして、それだけではない。
 机の上においてあるのは、文字で埋まった原稿用紙。
 そう。ブサコは、あした行くはずの『遠足の思い出』までもを、すでに書き終えてしまっているのだ。
 つまり、ブサコは、きょうどころかあしたもあさっても、机に向かう必要はない。

 もとより、ブサコに予知能力のようなものがあるわけではない。
 といって、あしたの出来事を想像だけで書いたわけでもない。
 では、原稿用紙には、なにが書かれているのか。

 ブサコは今度の遠足をこう考えている。
 2週間も前に遠足のスケジュールが発表されて作文の宿題を出され、そのためのチームまで結成する。
 チームの存在理由は、遠足のテーマを絞りこんで誘導するため。
 2週間の猶予は、乙乎おとこたち以外のクラスメイト全員を味方につけて、当日の“行軍”の訓練を積ませるため。
 これらすべては、ミカドが乙乎を打ち負かすため、という目的に集約される。
 ミカドが乙乎をうとむ理由は、乙乎の陽気さと運動能力が彼の上を行っているから。
 そしてそれを超えるには、乙乎がそれらの要素をもっとも発揮する遠足で、周到な準備と策略をもってたたくのが最上の方法。
 ミカドは文武両道を目指しているのもそうだが、求心力やリーダーシップなどの人望面も重視している。
 来月の児童会役員選挙にそなえて熱心に選挙運動をするのもその一環だろう。
 乙乎と競争して勝ったとなれば、そのことが自信になって、ミカドはよりいっそう飛躍する。

 が、そういったことはあくまでミカド個人の事情、ブサコはそのために必要な仕事を依頼としてこなしたが、重要なのはそこではないと思っている。
 これがミカドのミカドによるミカドのための遠足でしかないのならば、ほかの人たちにとってはただ準備期間が長く壮大なだけだ。
 だとしたら今度の遠足は、荒唐無稽な行事にすぎないのだろうか。
 そうではない。

 ブサコは、本質をこう見る。
 いまは小学5年生だが、中学生になれば修学旅行がある。
 修学旅行には一部分だけとはいえ、計画性をもとめられる自由行動があるはず。
 そしてその、『明確な目的をもって、緻密な計画を立てて、実際に行動する』という能力は、学校生活だけにかぎらず、これからも一生ずっと必要になることのはず。
 あしたの遠足はその予行演習であり縮図なのだ。

 作文としては、あしたの出来事ではなくこれまでの出来事、準備内容やその行動、目的にひいては行動理念も、想定と現実の結果とを照らし合わせて書いてある。
 それを、ブサコ自身の考える本質とからめてまとめた。
 どちらかというと、論文に近い形式になった。

 ブサコは学年のだれよりも大人だった。
 バスタオルの端からのぞく長い髪はカラスの濡れ羽色につやめいて、すこし切れ長の目元にも数本流れている。
 顔立ちも大人びているし、背丈も麻門宮についで長身だ。
 自意識過剰でなければ、クラスメイトからの視線に、ときおり羨望や憧れのようなものが混じっていることも知っている。

 それらを思い出して、ドライヤーを当てながら、ブサコはひとりで軽く咳ばらいをした。
 すこし照れくさくなったのもそうだが、じつのところ、のどの調子もそれほどではない。
 このごろはスピーチコンテストの練習ではないが、長くしゃべることが多かった。
 くわえて将来的な宿題を作文もふくめてすませた分、入浴も遅れたのは事実。
 髪は念入りに乾かさなくてはならない。
 就寝にはあと30分は見ておくべきか。

 だが、『ブサコの遠足の準備は、すべて、終わっている』。



  10月2日 木曜日 20時55分



 床におかれたリュックサック。
 てっぺんの持ち手には、レジャーシートが留め具でつなげられている。

 音菜おんなの部屋はすでに消灯後。
 生活リズムがしっかりしているので、音菜はいつもこの時間には自動的に眠くなる。
 だから、遅くまで起きてなにかをするということは、そもそもできない。

 だから、てるてる坊主はふたつしか作れなかった。
 もっとたくさん、手早くできればよかったんだけど、こればかりは。

 せめて音菜は、あしたいい天気になりますようにと、さっき寝る前に手を組んでお祈りした。

 てるてる坊主は、ひとつは軒下に、もうひとつは枕元に、それぞれつるしてある。



  10月2日 木曜日 21時00分



 サイドテーブルの直通電話ではなく、ミカドは子機のほうで受話器をとった。
 コールは2回半。

「どうした、ソノタ!?」

 電話口から聞こえたのは、さびついて貫禄ある重低音だ。

「ミカドよ……やつら、起死回生の策に出たようだ」

 ミカドは廊下をすすみながら、あいたほうの手でバスローブの下のネクタイを直した。

「ふむ。具体的には?」

 電話の向こうから、息をのむ音がした。
 すこししてから、震えをおさえるようにソノタは言った。

「てるてる坊主だ……ただ1軒の家におそろしいまでの数が、つるされつつある……!」

 ふだんとはちがう、鬼気せまる様子のソノタの声音にミカドは気づいた。

「そうか……やつらも、なりふりかまってはいられないということだな」

 廊下の突き当たりでミカドは立ちどまり、ドアに手をかけた。

「だが、お前のその報告で、ボクの最後の策も決まった」

 ぎぎいっと、重たい鉄のドアがきしむ音をあげてひらいていく。

「それとともに、確実になった。ボクの勝利が……あるいは、大勝利が」

 電話を切ったあと、ミカドはオフィスビルの1室、その中に向かって声をかけ、部屋へとはいっていった。

「あすの朝……乙乎たちは準備をすませ、態勢をととのえて遠足にいどんでくる。だが、それゆえに、ボクとの差が決定的になるのだ……。
 やつは思い知る……誰が大岩の上に、人の上に立つのかをな……!」




  10月2日 木曜日 23時59分



 いまの友親ともちかを言い表わすなら、『一心不乱』の一言につきる。

 てるてる坊主。
 ちり紙をまるめて頭の芯にし、その上からもう1枚のちり紙をかぶせて頭巾と外套に見立て、首のところを糸でしばって軒先につるす、というのが本来のやりかただ。
 顔に目鼻をかきこむかどうかは地域によるが、手馬崎てばさき九十九つくも市では顔に限らず思い思いの絵柄をかきこんで晴天を祈願する、神社の絵馬みたいな感じが主流になっている。

 友親のてるてる坊主は、そのふつうのものとはあきらかにちがっていた。

 まず材質。
 基本的に、ちり紙だけだと強度に難があるし、コストもかかるので、芯はほかのものを使っている。
 わら半紙でできた、もういらないプリントとか、古新聞古雑誌。布の端切れも。
 それらを強く握りこんで圧縮、さらに丸く形をととのえる。

 いちおう、ちり紙は使う。
 いや。『いちおう』だと語弊があるので、ちゃんと言い直すと、『頭の表面をおおうためにちり紙を使うことを選んだ』。

 ちり紙は当然、湿気に弱い。
 雨が降らなくても、外に一晩おくだけで夜露にぬれてダメになってしまうのがちり紙の強度だ。
 ところがそれをあえて使う。
 顔をしっかり白くして中の芯の色を目立たせなくするため。
 それはもちろんなのだが、これにはそれ以上に、ぜったいに雨など降らせるものかという、友親の強い決意が秘められている。

 外套もかねたちり紙の下には、縄で作った身体まである。
 頭を重くしてあるので、その重心のバランスをとる都合だ。
 だが、見えないところでもこだわるのが友親。
 縄の両端をほつれさせてから手前に持ってきて、より合わせてある。
 それが、手を組んで真摯に祈る姿に見える。

 首にまくのは木綿糸だが、白い糸を絵の具で赤く染めてある。
 染めていないものとより合わせて、縁起をかついだ紅白の糸にした。

 顔はサインペンで、笑顔から泣き顔、怒り顔まで、簡素だが表情豊かなものがそろっている。
 どれも一本線だが、雑にやっつけでかかれているものはない。
 ふざけてウケをねらったり、変に奇をてらったようなものも、ひとつもない。

 そもそも、晴天を願うということは、それ自体ただごとではない。
 古来より、水害に苦しんだ人々が、その社会生活の根幹をかけて、人身御供をささげて祈ったのがはじまりだ。
 てるてる坊主は、そのいけにえの代理人形としてこんにちに伝わっている。
 だから、あした天気にしておくれ、という言葉には、そのくらい壮絶な覚悟がこめられているのだ。

 こういった手のこんだてるてる坊主。
 およそ3時間前に、友親には気づくよしもなかったが、外からソノタが家の用事がてら偵察してミカドに報告していた。
 そのときに言ったのは、『おそろしいまでの数』と、たしかにこうだった。

 だが。いまとなっては、そんなものではすまされなかった。
 おそろしいはおそろしいが、それにくわえて、すさまじくおびただしいほどの、狂気すら感じられるもの。
 無数の、いや無限のてるてる坊主が、連なり折り重なり、千羽鶴もかくやと、友親の部屋の前、軒下に、白い壁となって立ちはだかっていた。


 ああ、それはたしかに祈りだった。

 せまりくる雨雲から守るため。

 約束の地をけがさせないため。

 仲間を先にすすませるため。

 自分の身をかえりみず、ただひとつ、わき目も振らずに戦い続ける無仁野むにの 友親ともちかの、それはたしかに祈りだった。


 はるか上空、黒い雲は地上の白い壁に近づいたと思うや、風向きがかわったのか、うずをまいてどこかべつのほうへと散らされていった。
 白い壁の直上は、ただひたすらに星がまたたき、月がきらめいて、煌々と、まぶしいくらいに彼らを照らしていた。

 果たして効果はあったのか。
 定かではなく、たしかめるすべはないが。
 この時点ではっきりしていたのは、あのピンク色の表紙をした小さい冊子、その中のメモスペースの最後のところに、いろんなネーミングといっしょに、こんな文字が書いてあったことだけだ――

太陽の天使クリアスカイ≫!!



  10月3日 金曜日 07時00分



 カーテンのすきまから差しこむ朝日を顔に受けた瞬間、乙乎はかっと目をみひらき飛び上がった。

「とあああっ!」

 空中で縦横に激しく回転しながら寝間着をまき散らかすと同時にいつものシャツとズボンとはちまきに着替え、着地した瞬間にはすでにバナナホルスターも装着完了していた。

 リュックサックをひっつかんで階段を滑るように駆けおり、洗面所にはいったと思ったらすぐに出た。

 リビングの食卓にダイビング。
 テーブルの上で箸が影を残してわずかにゆらめき、ごちそうさまのポーズを取って背を向けると、茶碗とお皿はピカピカになっていた。

 乙乎は朝からトップギアだった。
 睡眠中も遠足態勢を崩さない乙乎の全感覚器官は、特定の角度からかつ水準を満たす光度を検知するや、いても立ってもいられなくなったのだ。

 フルスロットルで部屋を飛び出してからようやく、ラジオから朝の天気予報が流れてきた。
 遅れてこれを聞きのがすことも多い乙乎だが、きょうは逆だった。

『本日、九十九市とその周辺は広く晴れ、雲ひとつない陽気になるでしょう。日中の気温も高くなり、およそ2週間ぶりに30度を超え、10月としては2年ぶりの真夏日になる模様です。お出かけの際には、熱中症にご注意を……』

 だが、そんなものはもう確認する必要がなかった。
 外に出なくてもわかる。
 玄関からでも伝わる明るさ。
 干したての布団のような太陽のにおい。
 綿毛にくるまれたみたいに聞こえてくる、どこか遠くの生活音。

 まちがいない。

 友親がやってくれた!



 乙乎は青空の下、遅刻しそうなときでもしないほどの全力疾走で友親の家に向かった。

 学校に行く途中、ちょっと寄り道すると友親の家がある。
 だいたい通り道だし、乙乎は毎日こうやって迎えに行く。時間が相当ヤバくなければ。

 特にきょうは、悪魔の大軍を単身しりぞけた英雄の凱旋だ!
 学校まで、おみこしかつぐみたいに褒めたたえていかなくては!

「友親ーっ!」

 かどの向こうに家が見えてくるところで、乙乎は走りながら友親を呼んだ。
 場合によっては、向こうからも大声で返事が返ってくることもあるし、本人が急いで飛び出してくるときもある。

 きょうは返事がなかった。
 乙乎はそのままかどを曲がった。

 家の前、2階の軒下には、大量のてるてる坊主が、白いすだれみたいに風になびいていた。
 壁、というよりはすだれだった。
 あちこちすり切れて、ところどころはずれているものもあった。
 天気がよかったのもあって、網で獲った小魚をいっぱいつるして干しているかのようだった。
 水分がぬけて、しおれているようだった。
 はやい話が、ボロボロだった。

「と……」

 乙乎は、視線をてるてる坊主に吸い寄せられたまま、友親の家に飛びこんでいった。

 奥の部屋から、友親のカーチャンが出てきた。
 なんだか、申しわけなさそうな顔で笑いかけてきた。

 その顔は、これまでに何回か見たことがあるものだった。
 だから、というのもあって。

 その顔のわけは、事情を聞く前から。
 乙乎には、わかっていた。

 今朝の登校は、英雄の凱旋なんかじゃあないってことを。

 かどの向こうから呼んでも、返事が返ってくることはないってことを。

 友親の工作が、すぐにボロボロになるわけがないってことを。

 そんな手抜きのものを作るわけがないってことを。

 あのてるてる坊主は、一晩だけもてばいいやという即席のものなんかじゃなく、一晩のうちにすべての力をこめた、とても繊細な最高の力作だったことを。

 それを大量に、とにかく大量に作って作って、一晩中作り続けたってことを。

 だから。

 だから……

「友親っ!」

 乙乎が部屋にはいって真っ先にみたのは、ベッドの上だった。
 友親は、そこに横になっていた。

「大丈夫か、友親!?」

 糸目がちの顔にはぎゅうっとしわが寄って全体的に赤く、頭の先から首筋まで汗まみれでドロドロだった。
 角ばったスポーツ刈りの髪は、つぶれたたわしみたいにぐっちゃぐちゃだった。

 ひたいにはぬれたタオルがたたんでおかれ、当然服はパジャマのままだった。

 全然、大丈夫じゃなかった。

 変わり果てた姿が、そこにあった。

「お……オレは! オレは……っ!」

 乙乎は床にひざをつき、こぶしをにぎってうなだれた。

 手の震えが身体中に伝わった。
 頭もぶるぶる震えてきた。

 ここまでの記憶が、思いが、ふりかけを出すようにばらばらと落ちてきた。

 友親がこうなったのはなぜだ。
 ひとりで徹夜仕事なんてさせたからだ。
 どうしてとめなかった。
 そうするしかなかったからだ。
 なんのために。
 大岩に登るために。
 なんでそこを目指した。
 それが一番楽しそうだし、でないと作文が書けない。
 自分だけのためか。
 そうじゃない。仲間で行くのが目的だ。
 では、それは……
 仲間を犠牲にしてまですることなのか?

 ――ちがう!

「オレの……」

 少ししてからもう一言、口をひらこうとしたら、聞こえてくる声があった。

「あやまるのは、なしだぜ……」

 友親だ。うっすら目をあけているようだが、しわが寄りすぎていてよくわからない。

「後悔も、すんなよ……」

 乙乎はばっと顔をあげて、寝ている友親をのぞきこんだ。

「でも! オレはお前を、わかってて……!」

「バーカ……オレが自分で選んだんだよ……」

 友親の答えは。
 たぶん、乙乎がそう言ってくれると助かるというものを、気をつかって言っているんだろう。

「うらやましかったんだよ、お前がな……。針にとおすような集中力と、自由奔放な発想力でどこまでも行ける……お前みてーなやりかたがよ。だから、オレもちょっとだけ、マネしてみたって、わけだ……」

 それは実際、気が楽にはなるし、そこまで思いやれる友親はやっぱり大人なんだとも乙乎は思った。

「戦力になれねーのは、残念だがな……」

 だけど、そんな友親に対して、乙乎はやっぱりなにも返せない。

「バナナ・オレがあるぞ! これさえ飲めば、元気いっぱいだ!」

 なにも、してやれない。

「体力がもどっても、風邪がいきなり、治るわけじゃあ……ねーからな。……それに、そいつは、調略で必要なやつだろ……オレたちのじゃなくな」

 できることといえば、もはやただひとつ。

「だから、乙乎。お前は遠足……楽しんで来い。オレの分もな」

 かならず勝つ。
 この勝利を、友親に誓うこと。

 そのためには……

 決して立ち止まらない!

「ああ……行ってくる。見ていてくれ、友親……!」

 乙乎が立ち上がると、友親は枕元に手を伸ばして、ゆっくりとなにやら持ってきた。

「こいつをな。オレだと思って……連れてってやってくれ」

 一体のてるてる坊主だ。
 つくりはたぶん、ほかのものと同じ。手のこんだ逸品だ。
 ニコニコと楽しそうな表情がえがかれている。

 これをわざわざひとつだけ、夜風をさけて持っていたということは、と乙乎は気づいた。
 友親は、こうなることを覚悟していたというよりは、予定のうちにさえいれていた。
 そしていま、こうして迎えに来た乙乎に渡すことまで考えていたんだ。

 彼らのあいだに、言語コミュニケーションは半分しか必要としない。
 このもろくちっぽけな人形にこめられた万感の思い、乙乎はたしかに受け取った。



 乙乎が力強い足取りで部屋を去ったあと、見送った友親は入り口のほうに視線を落とした。
 六畳、板の間。
 木目の模様まで知っている、その見慣れた床の上に、ぽつりとなにか、しみのようなものを見つけた。

 友親は仰向けに身体をもどし、ぬれタオルをひたいに押しつけて目元までぎゅっとおおった。

「へへ……一滴、とおしちまった……か」

 その言葉は、誰にも聞かれることはなかった。
 ☆★ 次回予告 ★☆

ついにはじまった遠足当日。

大勢はすでに圧倒的不利。
一瞬の油断、一手の誤りが致命傷になる。
乙乎と音菜ただふたり、力を合わせて彼方へ挑む。

次回、遠足大事典 -Ensoyclopedia-
当日編 レースパート
持ち物16  強さと優しさ

――その男、遠足大好きにつき。


―――――――――――――――――――――――――

※作者より

いつもご愛読、ありがとうございます。
次回より『前日編 サスペンスパート』から『当日編 レースパート』に移ります。

ここまでの話で、『当日編』に関する要素はすべて出揃っていますので、
遠足のレース展開を予想することもできます。
ミステリーでいう『出題編』と『解答編』のような関係ですね。

では、また小説本文でお目にかかることを。
お楽しみいただければ幸いです。
+注意+
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