『ぽんくん 頑張る!』 (その4)
【(四)○○○姉さんに花束を♡】
『ぽんくん 頑張る!』
(その4)
4、
さあ、いよいよラスボス戦!
…の前に。先ほど わらしくん が何をしたのか説明しておきましょう。
彼は、同じ「座敷わらし」の わらしちゃん と全く同じレベルのチカラを持っていて、現在は2人で協力してアパートの守護をしてくれているのだけど、(余談だけど、2人の座敷わらしが守護している建物ってどんだけ贅沢で鉄壁な状態なんでしょう!)
つまり わらしくん は、 わらしちゃん と同じ様にアパート内の状況を常にサーチして異常が起きてないかを見てくれて居るのです。
そして、今回の幻術空間はそのアパート内に構築されているので、意識を研ぎ澄ます事で仕掛けられている幻術の仕組みも全て把握できてしまった。と言うワケなのです。
……あ、そうかぁ!『猫さんチーム』で わらしちゃん が予想外に活躍していたのは、彼女がそのチカラを持っていたせいですね!今更ながら気づきましたわ!
じゃあ、ホントに ななつ は何もしないで立ち会っていただけなんでしょうね(笑)
さてさて、改めてラスボス戦に向かいましょうかね。
ぽんくん が恐る恐る扉の中へ入っていく。もちろん私もその後を付いて行きますよ。
入って直ぐにラスボスが居る部屋なのかと思っていたけど、何故か5メートルほどの通路が延びていた。そして、その通路に何か銃の様な物体が置いてあった。
え?…銃ですと?もしかして銃を使う謎解きをするの?
それとも、まさかラスボス戦はアクションゲームなの?
いや、大家くんはそんな風には言って無かったはずよね。
ぽんくん が、おっかなビックリな感じでその銃を拾って泣きそうな顔をして私に見せる。
「砂かけお姉ちゃん、どうしよう。お姉ちゃん、僕にこれでラスボスと戦わせようとしてるのかなぁ…」
もしラスボス戦がアクション系の危険な展開ならば私は中止させるつもりだ。話しが違うものね。
で、ぽんくん が見せてきた銃を手に取り確認してみると…、
「これ、マーキングガンだわね。
弾丸とかレーザーとかで無くて、ペイント液を発射する銃なの。と言う事は、このペイント液をラスボスにぶっかける?みたいな感じなのかも知れない」
う〜ん、それならば危険は無いのかも知れないけど、まぁ、とりあえず通路の先で待っているだろうラスボスくんを見てみましょうか。それで判断しましょうか。
私たち2人が先に進むとそこにはちょっと広めの草原みたいな場所に出た。おお、最後はそう来ましたか!
周囲を見渡すと、私たちの背後では歩いて来た通路が消えていた。そして、前を向くとちょっと先に白い何かが現れた。………そう『白い何か』としか表現出来ない、全身真っ白けの人形みたいな代物であります。
「さあ、ぽん。そのマーキングガンを使って、あの人形に色を付けてごらんなさい。少しでも色を付けられたら ぽん の勝ちね。さあ、で・き・る・か・なぁ〜?」
私たちの横に突然 たぬちゃん が登場して ぽんくん に話しかけた。…いや、これは本人じゃ無いわね。単に通り抜けるだけの「どこでもドア(仮称)」と違って、幻術で構築している空間に術者本人が入る事は出来ないから、これはアバターだわね。でも、意識は本人とリンクしてるから普段通りに会話する事が可能みたい。
「たぬちゃん、始めから ぽんくん をラスボスと戦わせる気まんまんだったんでしょう。
もしかして、アパート暮らしだと使う機会が無い『アレ』をやらせたいの?」
「ふふっ、御名答よ砂かけちゃん。せっかく身につけたスキルなんだから、たまには使わせないとね♪ だからこのチームのラスボス戦は、ぽん専用の特別仕様なの」
「聞いた?ぽんくん。言い方を変えるなら、あなたの特殊スキルを使わないとあの人形に色を付ける事は出来ないみたいね」
「え〜。アレをすると疲れるからやりたく無いんだけどなぁ…。でもお姉ちゃんは言い出したら絶対だから、もう、しょうが無いかあ」
お!どうやら ぽんくん も本気を出すみたいね。
それじゃあ邪魔にならない様に私は少し離れていますか。
ぽんくん は渋々と言った感じでマーキングガンを持って白人形の前に進んだ。
すると、それまで微動だにせずに突っ立って居た白人形が静かに動き始めてそして………消えた!
いや、正確に表現するならば、目で追う事は難しい程の俊敏なスピードで ぽんくん の周囲を廻わり出したのでした。
判りやすく言うなら、某サイボーグ戦士の「加速装置」か、某仮面戦士の「クロックアップ」みたいな感じかな?
特に白人形の方から何かをして来るワケでは無いみたいだけど、確かにこのスピードで動き廻っている相手にマーキングガンで狙って着色するのは至難の業だわね。
さて、ぽんくん はどうしているかと言うと、ガンを構えたりもせずに何かしら周囲を伺っている様子で立っているだけ。
そして、一瞬 ぽんくん の身体がブレた様に見えたのだけど………、それで終わっていました。
なんと ぽんくん の前方10メートル程の場所に、身体の数ヶ所に赤色のペイント液でマーキングされてしまった(元)白人形が横たわっていたのでした!
改めて説明すると、実は ぽんくん の持っている唯一のスキルがこの「加速装置?クロックアップ?的な、時間を超越した動き」なのです。
ぽんくん は生まれつき妖力量が少なくて『化け狸のあやかし』ならではの身体変化や幻術が上手く使いこなせないので、その代わりに持っている妖力を身体強化に全振りして、このスキルを習得していると言うワケなのですよ。
これは山奥の森で私たちが暮らして居る頃に、もし ぽんくん が一人だけの時に外敵に襲われても無事に逃げ切れる様にと、私と たぬちゃん で考案して習得させたスキルなのですが、しかし発動すると体内の妖力を一気に消費してしまい、その後まともに動けなくなってしまうリスクもあるので、これはあくまで最終的な奥の手・切り札のスキルなのです。
まあそれはともかく、はい!お見事でした♪ぽんくん の勝利でありますね。
「たぬちゃん、終わったわよ。これでゲームクリアよねぇ?」
「う〜ん、我が弟ながら呆れるほどの驚愕なスキルだわ。
…ええ、もちろんこれで終了よ!
お疲れ様でした、出口を開けます」
私と ぽんくん の前の空間に、先ほどの扉が多数あるホールへの通路が現れた。
私が軽く妖力エネルギーを分け与えたので何とか動ける様になった ぽんくん と室内に戻ると、彼は大歓声で迎えられたのでした!
子だぬきちゃんたちの ぽんくん を見る目も、ちょっと前と明らかに違ってキラキラしてますわ。
何かこう、カッコいいヒーローを見るような目つきだわ。
これはいったいどういう事かと思ったら、ラスボスステージに居た私たちには判らなかったけど、ラスボス戦の際にこのホールの扉だらけの壁が透明化して皆んなで ぽんくん の戦いっぷりを観戦していたらしいのよね。なるほど!
特に『家族』として一緒に暮らして居る わらしくん と花子ちゃんは、ぽんくん の隠されていたスキルに凄くビックリしつつも、本当に嬉しそうだわね!
そして、まだ少し妖力消費のダメージが残っていてふらつきながらも、ぽんくん もニッコリ笑顔で嬉しそう!彼がこんなに素直な表情を見せてるのは久しぶり♪
別に私自身はなんにもしてないけど、お姉ちゃんも嬉しいわ♪
あ、後で聞いてみると『猫さんチーム』のラスボス戦は、同じ草原ステージで白人形にマーキングガンで色を付けたら勝利。と言うのは変わらないけど、白人形がもぐら叩きみたいにアッチコッチのポイントに出ては消える動作を瞬間的に繰り返すという内容だったらしいわ。
ただ、わらしちゃんのチカラを使えば次に出現するポイントが判るので「苦労して構築した仕掛けだったのに、呆気なく瞬殺されちゃったのよぉ…」と、たぬちゃん が嘆いておりました。ご苦労様でした。




