『ぽんくん 頑張る!』 (その5)
【(四)○○○姉さんに花束を♡】
『ぽんくん 頑張る!』
(その5)
5、
「みなさんお疲れ様でした〜!」
『謎解き宝探しゲーム大会』が無事に終了した後の夕食タイム。
本日のアパート1階の大部屋 兼 食堂には、私たちアパートの住人11人・隠れ里の子だぬきちゃん10人+たぬきっ娘2人の、合計24人もの人数が集まり大変賑やかな事になっております(なお、未だぬら爺は帰って来ておりませんわ)
最初、今日は人数が多いから全員が一度に夕食タイムに入るのは無理かな?と思ったのだけど、幸い大半が小柄なチビちゃんたちなので何とか全員揃って長机に座れましたわね。
いやぁ良かった、良かった。
実際、私の知る限りこんな大人数でこの大部屋を利用した事なんて、学生寮の頃だって無かったからね。
アパートの倉庫に予備の丸椅子がたくさんあって助かったわ。
今夜の机上(食卓)に並んでいるご馳走夕食メニューは、チビちゃんたちが多い事を踏まえてワンプレートで済む『あずさん特製お子様ランチスペシャル』であります。
『お子様ランチ』と言っても、あずさんがノリノリで腕を振るった料理がてんこ盛りなうえ、当然ながらその味も絶品。
特に、隠れ里の皆んなにとっては初めて味合う本格料理らしく、元々てんこ盛りなのに更におかわりするチビちゃんも居ましたわ!
もちろん、あずさんもそれを見越して多めに調理済み。…で、もし残っても彼女の管理下にある食材や料理は傷まないんだから、ホントに凄いと言うのか便利なチカラだと思うわねえ。
そして、さらにチビちゃんたちの手元には『謎解き宝探しゲーム大会』クリア後のお宝として大家くんが配った可愛い『たぬきのぬいぐるみ』があった。
………ちょっと待って!リアルなたぬきちゃん達に『たぬきのぬいぐるみ』を配ってどうするのよ!
と思ったんだけど、実は隠れ里の子だぬきちゃん+たぬきっ娘の皆んなには大好評だったのでした。
理由を聞くと、まず子だぬきちゃんたちは「隠れ里に居る子だぬきはココに居る10人だけしか居ないから友だちが増えたみたいで嬉しい」との事。
たぬきっ娘の2人は「隠れ里にはぬいぐるみなんて無いし、それに凄く可愛い♡」と言って抱きしめていました。
あ、ぽんくん もぬいぐるみを眺めてニコニコ笑顔で嬉しそうね。
なんでも、わらしちゃんの部屋を見てちょっと(いや、かなり)羨ましかったらしい。…もう、それならそうと早く言ってくれれば良いのに!
彼は昔っから遠慮しいなのよねぇ。
よし、判ったわ!次からはチビちゃんたち皆んなの分もゲーセンのぬいぐるみをゲットして来ましょう!なに、私の腕なら簡単な事ですわよ。
そんなこんなで和やかに夕食タイムが終わった後、隠れ里の子たちはちゃんと自分たちの使った食器を洗い場に持って行って、さらに「ごちそうさまでしたぁ!ありがとうございましたぁ!」とキチンとしっかり頭を下げて食後のお礼をしていました。
私は、まだ皆んなチビちゃんなのに偉いなあと思って見ていたのだけど、その時のあずさんが嬉しそうにしながらも目を潤ませていたのが印象深かったわね。
さて夕食の後はチビちゃんたち皆んなでお風呂タイムです。
普段、ウチのアパートのチビちゃんたちは男の子も女の子も2階の風呂場を利用してるのだけど、今日は人数が多いので1階の風呂場と2階のとに分かれて入浴する事になりました。
で、八百八狸の隠れ里にだってもちろん風呂はあるものの、ここにある様な大勢が一度に入れる大きな風呂は無いらしく、もう入浴するだけで子だぬきちゃんたちは喜んで大騒ぎです。
なんて言うか、子だぬきちゃんたちは私たちが忘れてしまった様な素直でピュアな感性を失って無いのよね。無邪気な笑顔がホント凄く素敵なの。
今更なんだけど、隠れ里での騒動を無事に解決する事ができて良かったなぁと思います。
この素敵な笑顔が失われる事が無くて、本当に良かったと思います。
そんなお風呂タイムも終わり、チビちゃんたちは2階の大部屋に敷き詰められた布団の上でお眠タイム前のお喋り大会を始めました。
もちろん話題の中心は皆んなが参加した『謎解き宝探しゲーム大会』の事。そして、子だぬきちゃんたちにとって何もかも初めての今回の『アパートでのお泊り会』そのものについての事みたいね。
ちなみに、今夜は わらしちゃん・わらしくん・ミケタマちゃん、花子ちゃん、そして ぽんくん も自分の部屋では無く皆んなと一緒に大部屋で寝るのだそうです。…これはもう絶対に皆んなまともに寝ないのが確定じゃないの。
ーーーーーー
チビちゃん達が2階の大部屋でお眠タイムに突入した頃、先程とは打って変わって静かになった1階の大部屋で(あ、あずさんだけは明日の朝食と昼食分の仕込みでキッチン内で忙しそうにしてますが)
私と たぬちゃん、ななつ 、ユウキ、大家くんの5人で本日の反省会?などをしていた処に、天狗の隠れ里に出向いていた ぬら爺 が帰宅して来た。
「あ、おかえりなさい。ご苦労様でした」
「お疲れ様。それで、何かしら有益な情報とかありました?」
たぬちゃん と私が労いながら声をかける。
「うむ、まだ確定情報では無いのだがの。今回、八百八狸の隠れ里で悪さをした者はどうやら『悪鬼』である可能性が高い様じゃな」
『悪鬼』
その名の通り、様々な悪辣な行為をしでかす鬼種族の『あやかし』で、基本的には群れで行動している鬼族のチンピラ集団。
旧くは室町時代辺りからその存在が確認されているものの、天空の神々や天狗族らの手により徐々に数を減らし、現代ではかなり少数のみが生存しているらしい。
「『悪鬼』ね。名前は聞いた事があるけど、もしそうならば何でそんな連中があんな騒動を起こしたのか理由は判明してるの?」
「『悪鬼』共は、隠れ里の地下深くに封印されていた『鬼神』と何やら繋がりがあったらしい。
これは白狐のここのつ嬢が神々から聞いた情報らしいが、ただ、何故今になって『鬼神』を復活させようとしたのかは判っておらんのだ。その気があるなら今まで幾らでも機会はあったろうにのぉ」
「姉さん、神様から直接情報を貰ってるなんて相変わらず半端ないなぁ。普通なら畏れ多くて近寄る事すら出来ない存在なのに」
ななつ が呆れ混じりに呟く。
「ふうん…。そうよね、復活させる気があるならとっくの昔に動いているはずよねぇ。封印されたのなんて大昔の話しなんだし、何で『今になって』なのか?…確かに気になるわね」
「もしかして『鬼神』の復活そのものが目的では無くて、魔薬の開発に成功したからその効果を試してみたとか?
『鬼神』って神様に近い存在なんだよね。つまり、神様に使っても効くのかどうかを実験してみたのかも?」
そんな事を たぬちゃん が何気に言う。
ああ確かに! 開発者にしたら同じ効果の実験をするのであれば、その辺に居る『あやかし』よりも『神様』に効くのかどうかを試した方がより満足のいく高い結果を得られるわよねぇ。
…まぁ、そんな代物を造り出してどうするのかは知らないけどね。
とは言え。この場でどれだけ私たちが話し合ったとしても、それはあくまで考察でしか無いし、そもそも私たちは何かと戦ったり捜査するためにこのアパートに集まって居るワケじゃ無いのよ。
私たちは『家族』だからこのアパートで一緒に暮らして居るの!
『家族』と楽しく生きていくために皆んなでチカラを合わせて居るの!
それがいちばん大事な事なのです!!
そして、もしまた私たちの家族や仲間たちに災いを及ぼす者が出て来たのなら、その時は私が全力で守る、救う。……それだけだわね!
ーーーーーー
翌日の午後。
賑やかな昼食も終わり、皆んなでマッタリしていた頃に隠れ里の里長や貉のムジ氏たちが迎えに来て、子だぬきちゃんたちとたぬきっ娘姉妹はいよいよ帰る時間となりました。
私たちアパートの住人に元気にお礼の挨拶をして、そしてそれぞれ「たぬきちゃんぬいぐるみ」を大事そうに抱えて(あ、たぬきっ娘姉妹はさらにユウキからプレゼントされた『まりあ先生コミックス』がたくさん入ってる袋も持ってますね)
皆んな笑顔いっぱいで帰って行きました。
「…なんか急に寂しくなってきちゃいましたね」
大家くんがボソッと呟いた。
何だかんだ言って、彼はアパートの管理人として凄く気合いを入れていたものね。
もちろん私も大家くんと同じ気持ちだし、他の皆んなも同じ気持ちでしょうね。
チラッと見ると、あずさんはキッチンの影で泣いてました。
そうだよね。彼女は本当に嬉しそうに『喜んで美味しそうにたくさん食べてくれる子だぬきちゃんたち』の料理を作ってたからね。
でも、いちばん寂しそうなのはアパートのチビちゃんたちだわね。
特に初めて同じたぬき種族の友だちが出来た ぽんくん は泣きそうな顔をしてるわ。
「皆んな、私が居るから何時でも隠れ里への扉を繋げられるんだからね!アッチにだってムジ兄さんが居るんだし、私たちの住んでいる処がどれだけ離れていたってお互いに隣の部屋に行くのと変わらないって事を忘れちゃだめだぞ♪」
あぁそうでした。たぬちゃん の言う通り、私たちはもう繫がっているんだった!隠れ里の皆んなは『隣の部屋に住んでいる家族』だって思って良いのよね。
ならば、ぽんくん にかける言葉はこれね。
「ほら、ぽんくん もそんな顔をしてないで!今度は ぽんくん の方から会いに行けば良いのよ!」
私にそう言われた ぽんくん は、ちょっと思案してからグッと両手で拳を握って言った。
「うん、そうする。今度は僕の方からがんばって会いに行く!」
…いやまぁ、がんばるも何もホントに隣の部屋に、友だちの家に行くだけの事なんだけど、きっと彼にとっては初めての場所に行くのは大冒険なんでしょうねえ。
私と たぬちゃん 『2人のお姉ちゃん』は、そんな『弟』を微笑ましく見つめるのでした。
【(四)○○○姉さんに花束を♡】
『ぽんくん 頑張る!』
(完)




