二人しか知らないこと
昼休みのチャイムが鳴った。
先生が教室から出ていくのを待ってから、俺は蓮の席へ向かった。
「蓮」
「ん?」
「ちょっといい?」
「昨日の件か?」
蓮は俺の顔を見るなり何かを察したように眉を上げた。
「教室だとちょっとあれだな。屋上でも行こうぜ」
蓮の提案で2人で屋上へ向かう。
「今朝またメッセージが届いたよ。でもなんか変なんだ。昨日のやりとりも消えてた」
「消えてた?どういうことだ?送信取り消しされてるとかじゃなくて?」
「ちがう。やりとり自体がなかったみたいに、痕跡も残さず消えてる。でも美月が死ぬ前のやりとりは変わらず残ってるんだ」
「わけわかんないな。肝心の今朝のやりとりはどうなんだ?」
「それもなんか変な感じ。うまく言えないけど噛み合ってない感じがする。最後に送ったメッセージにはまだ既読もついてない」
そう言って蓮にやりとりを見せる。
「うん。確かになんかズレてるな」
蓮は画面を見つめながら、少し考えるように黙った。
「それにさ、俺は美月ちゃんとあんまりメッセージしたことないけど……なんか、すごく俺の知ってる美月ちゃんっぽいんだよな」
「うん、そうなんだよ。俺も驚いてる。かなり美月っぽい。偽物にしてはクオリティが高い」
「そんなことありえないとはわかってるけど美月ちゃんなんじゃないかって思えてきちゃうな。前日のメッセージが消えてるのもわけわかんないし」
「うん……」
「湊。もしさ、明日の朝も今日のメッセージが消えてて、これまでと同じようにメッセージが届いたらさ…」
「届いたら?」
「確認してみないか?美月ちゃん本人かどうか」
「どうやって?」
「お前らくらい付き合い長くて仲良かったら、なんかあるだろ?2人しか知らないようなこと」
「俺と美月しか知らないこと……」
俺は右足の太ももに手を当てた。
そして、幼い頃のある日の夕方のことを思い返していた。




