『昨日のこと、覚えてる?』
『おはよう、湊』
その一文を、俺は何度も読み返していた。
昨日と同じだった。
送られてきた時間も、文章も。
違うのは、昨日まであったはずのやり取りが、すべて消えていること。
まるで、昨日なんて最初から存在しなかったみたいに。
俺はしばらく画面を見つめた。
犯人を突き止める。昨日、蓮とそう決めた。
指を動かし、メッセージを打ち込む。
『昨日のこと、覚えてる?』
7時3分、送信。
すぐに既読がついた。
『覚えてるよ』
『昨日、湊のことすごく怒らせちゃった。ごめんね。』
それはそうだ。
昨日のことなら、俺は今だってまだ怒っている。
返信に迷っていると、さらにメッセージが届いた。
7時5分
『私が悪かったから』
悪かった?自覚があるのか?
それなら、もうこんなことはやめてくれ。
怒りのまま、俺は指を動かした。
『お前以外に誰が悪いんだよ。そんなことよりこんな悪趣味なマネをするお前は一体誰なんだ?もうこんなことやめてくれ』
7時6分
すぐに既読がつく
7時7分
『悪趣味なマネってなに?誰って言われても私は美月だよ!!』
『昨日は私が悪かった。本当にごめんなさい。でもこれからも湊と仲良くいたいの…』
話が噛み合わない。わざとなのか?
俺はスマホを握りしめた。
美月なわけがない。
美月はもういないんだ…
『頼むよ。もう本当にやめてくれ。どうしてこんなことをするんだ?俺が何かしたのか?したんだったら謝る。謝るから。だからもうこんな美月になりすますようなことはやめてくれ。やめてください。お願いします。』
7時8分、送信
既読はつかない。
俺はスマホを握ったまま、画面を見つめる。
7時13分
5分待っても、まだ既読はつかなかった。
階下から、母が朝食に呼ぶ声が聞こえた。
学校に間に合わなくなってしまう。
いっそ、今日は休んでしまおうか。
そう思ったが、昨日のやり取りが消えていたことも、今朝の出来事も、蓮に話さなくてはならない。
俺はスマホをベッドに置いた。
「今行く」
母に返事をして、階段を下りた。




