「おもしろいところ」
5月6日、ゴールデンウィーク最終日。
『おはよう、湊』
美月からのメッセージ。
美月が見つけたという「おもしろいところ」
昨日は蓮と半日かけて探してみたが、結局見つけることはできなかった。
『おはよう。最近早く帰ってるけどさ、なんかあった?』
『なんもないよー!でもちょっといきたいところが何個かあったから』
『何個か?忙しそうだな』
『忙しいよー!時間もないから急がないと』
『なにか手伝えることがあったら言えよ』
『ありがとう!でも大丈夫!私がしないと意味ないの』
『そっか。無理するなよ』
『うん!湊もね!まだ高校生活は始まったばっかなんだから!』
何個か……
「おもしろいところ」以外にも、行く場所があったのか。
美月が放課後急いでいた理由は一つだけではなかったのかもしれない。
また考えることが増えた気がするが、美月とのメッセージを終えた俺は、蓮との待ち合わせのために出かける準備を進めた。
学校の正門前に着くと、蓮は既に待っていた。
「ごめん、待たせたな」
「いや、いまきたとこ。さて、どっから探そうか」
「まずはやっぱり帰り道だよな。美月が普段通っていた道を歩きながら、景色のよさそうな場所を探してみよう」
「よし!今日も歩くぞ!」
ここに来るまでに歩いてきた道を引き返していく。
俺の家と美月の家は近所だから帰り道もほぼ同じだ。
ただ、美月の目線になって、写真を撮りそうな場所を探して歩くと景色が違って見えた。
田んぼの広がる道、少し見晴らしのいい交差点、川に架かる橋……
美月だったらカメラを構えていたであろう場所はいくつかあった。
「こうやって歩いてみると結構写真映えしそうな場所ってあるもんだな」
「うん。でもどこも「おもしろいところ」とは違う気がする。なんとなくだけど」
「おっ、ここまで来るともう中学校が見えてきたな。一旦高校の方に引き返すか」
美月がその場所を見つけたのは高校に入ってからだ。中学の頃から通っていたこのあたりにある可能性は低いだろう。
俺たちは歩いてきた道を反対方向に歩き出した。
しばらく歩いていると蓮が口を開いた。
「同じ道でも歩く方向が違うとまた変わって見えるもんだな」
蓮の言葉に頷き、改めて周囲に目を向けると、道の脇に立つ小さな看板が目に入った。
「だな。あれ?あんなとこに看板あったっけ?……川北神社?」
「向こうからだと陰に隠れて気付かなかったのかな?行ってみようぜ!」
看板のある細い道を入っていくと、長い登り坂があった。
「うわぁ、これ登るの大変だな」
「蓮はここで休んでてもいいよ。俺はちょっと頑張ってみる」
正直、俺もかなりきつかった。昨日からずっと歩き回っている。それでも、少しでも手がかりが欲しかった。
「いや、行かないわけないでしょ!舐めないでくださいよ」
息を切らしながら坂を登っていくと、周りを木に囲まれた小さな神社にたどり着いた。
「やっと着いた……さすがに一旦休憩!」
「だな。結構登ったな」
俺たちは神社の境内に腰を下ろし、しばらく息を整えた。
一息ついたところで、俺は境内を一周して何かないか探してみた。
美月がおもしろいと思うようなもの……
すると、境内の裏手にさらに登り坂があることに気づいた。
「蓮!ちょっとこっちきてくれ!」
「なになに?何かあったか?」
小走りで寄ってきた蓮に、俺は坂道を指差した。
「え?……まだ登るの?」
「登ろう!」
今回の坂道はそこまで長くはなかった。
坂を登り切ると、急に視界が開けた。
少し広めの平地。落下防止のためか柵が設置されている。
柵に近づいて景色を眺めると、鳴瀬市を一望できる場所まで登ってきていた。
「すっげ……いつの間にかこんなとこまで登ってきてたのか」
蓮は柵の向こうに広がる景色を眺めている。
「市内がほとんど見渡せるな。あれはうちの高校、あっちが俺らの中学、湊の小学校見える?俺の小学校はちょっと遠いから見えないか」
「ああ。俺と美月の小学校は見える……」
高校も、中学校も、小学校も。
三つの学校を一度に見渡せるこの景色を見た時、なぜか確信できた。
美月が見つけたのはここだ。
美月はこの景色を見たとき、何を思ったのだろう。
きっとカメラを構えたんだろうな。
この場所を「そのうち」俺にも見せてくれるつもりだったのだろうか。




