街を見渡す場所
「こんなとこあったんだな。鳴瀬市がほぼ見えてるぞ」
高台からの景色を眺めていると、蓮が改めて感心したように口にした。
見慣れた街並みも、こうして上から眺めるとまた違って見える。
美月と通った小学校、中学校、そして高校。
それぞれは遠いはずなのに、ここからみると全て一望できる。
「美月もここから見てたのかな」
そう口にしてから、俺はもう一度街を見渡した。
「夕方、日が沈むころだともっと綺麗かもな」
「夕方か……」
美月が放課後にここを見つけたのなら、きっとそんな景色を写真に収めたんだろう。
カメラを構える美月の背中が見えた気がした。
写真か……
そういえば、美月のアルバムにはどんな写真があっただろう。
学校行事の写真や、凛と一緒に写った写真。
俺や友達の何気ない姿を撮ったものもあった。
でも、ここから見えるような景色の写真はあっただろうか。
少なくとも、俺が見たアルバムにはなかった気がする。
亡くなる直前に撮った写真なら、まだ現像していなかったのかもしれない。
それとも、アルバムとは別に保管しているのだろうか。
考え込んでいると、蓮がそれに気付いた。
「どうした?ここじゃなさそうか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
「なにか気になることでもあったのか?」
「ここからの景色を見て思ったんだ。美月なら写真に撮ってそうだなって。美月もここに来たんじゃないかってさ。でも、アルバムにはここからの景色の写真はなかった気がする」
「アルバムに?」
「うん。俺が見た範囲では、だけど」
「そっか。アルバムに入れてない写真があるかもしれないな」
「……うん。とりあえずここからの景色を撮って凛に送っておこうかな。もしかしたら何か見覚えがあるかもしれない」
そう言ってスマホを構える。
美月ならどう撮っただろう。
なんとなく小学校、中学校、高校が収まるように撮りたかった。
『この景色見覚えある?美月が撮った写真とかで』
写真を添付して凛にメッセージを送った。
凛からの返事を待つことにして、俺たちは一旦ふもとにおりることにした。
「坂ってさ、登るのはもちろんきついけど下るのもしんどいな」
神社へ続く脇道まで戻ってきたところで、一息つきながら蓮が呟いた。
「だな。付き合ってくれてありがとな」
「いいってことよ!むしろ俺が好きでついてきてる。明日からまた学校か。凛ちゃんからの返事で何かわかったら教えてくれな」
「もちろん。今日はこの辺にして帰るか」
俺たちはそれぞれ帰路についた。




