まずは一軒目
5月5日、こどもの日。
明日も休み。ゴールデンウィークも残すところ、今日と明日の二日間だ。
『おはよう、湊』
美月からのメッセージ。
昨日の稲葉くんの態度が気になっていた俺は深く考えもせず美月に質問していた。
『稲葉くんって知ってる?』
『知ってるよ!湊から稲葉くんの名前出てくるの意外だなー。何か聞いた?』
『蓮といる時に会ってさ、なんか俺に対してだけよそよそしい態度だったから気になって』
『蓮くん?蓮くんも稲葉くんと知り合いなの?私は同じクラスだから知ってるけど蓮くんすごいなー!もう他のクラスにまで手を伸ばしてるのか……』
『蓮は「人類皆兄弟」みたいなやつだから。稲葉くんってどんな人?』
『確かに!誰とでもすぐ仲良くなるもんね。稲葉くんはねー、同じクラスではあるけどまだあんまり話してないからわかんない!この間、放課後にお誘い受けたけど断っちゃった』
『放課後に?』
『そう!遊びに誘われたんだけど急いでたから断っちゃった』
『そっか』
返信をして時計を見ると7時8分になっていた。
今日はここまでか……
前に佐々木くんから聞いていた、美月を誘って断られていた男子。それが稲葉くんだった。
ただ、だからといって昨日俺によそよそしかった理由になるか?
断ったのは美月だし、俺だって昨日稲葉くんと初めて会ったようなものだったし。
考えても答えはわからない。
せっかく知り合ったんだ。今度会ったら、少し話してみよう。
昼前に蓮と待ち合わせをして今日も街を散策だ。
昨日と違って今日は美月が言っていた「おもしろいところ」探しだ。
「で、その「おもしろいところ」ってのはなんか目星ついてるのか?」
「まったく。でも、例えばあの頃新しくできた店とかは候補かなって」
「新しくできた店か。美月ちゃんが好きそうなところってこと?」
「そういうわけでもないんだけど」
「あの頃できたとこって何かあったっけ?」
「それはちゃんと調べてきた」
「おっ、シゴデキですね湊くん」
「まずは、駅前のパンケーキ屋、それと駅の1階にはコーヒーショップもできてた。駅近くだとそれくらい」
「コーヒーか。美月ちゃんってコーヒーとか飲むんだっけ?」
「飲まないよ。むしろ苦いの苦手」
「そうするとパンケーキ屋の方がありそうか」
「うん。でも一応コーヒーショップも行ってみよう」
「ちょうど昼時だし昼飯はパンケーキだな!」
「足りるかな……」
パンケーキ屋に向かう道中、蓮に今朝のメッセージのことを話した。
「例の遊びに誘ってたってやつが稲葉だったのか」
「そうみたい。まさか稲葉くんが、その相手だったとは思わなかったけど。俺によそよそしい態度だったのはなんだったんだろ。心当たりなさすぎる」
「まあ、稲葉もいいやつではあるけどなかなか尖ったやつだからな。何かあるんだろきっと」
「せっかく知り合えたし仲良くしたいんだけどなぁ」
話しているとパンケーキ屋が見えてきた。
店の前には長い行列ができている。
「うわっ!これ全部パンケーキ屋の並びか?すげーな」
「連休中で昼時とはいえ、ここまで並ぶのか……かなり人気なんだな」
「普段なら諦めて別の店を探すところだけど……」
「今回は美月の「おもしろいところ」探しだし、頑張って並ぼう」
「さすが湊!俺はもうすっかりパンケーキの舌になってたぜ!」
30分ほど並び、やっと店内に案内された。
「生クリームもフルーツも盛り盛りだな。悩んじゃうぜ」
蓮がメニューを見ながら悩んでいる。
「美月も凛ほどじゃないけど甘いもの好きだったからな。特にバナナ。美月がきてたらこれ頼んでそうだ」
「よし、決めた!俺は全部盛りのスペシャルパンケーキ!湊は?」
「俺はバナナのやつかな」
注文したパンケーキが届くまで店内を観察してみた。
思ったとおり、女性客が多い。
男同士できているのは俺と蓮くらいだ。
美月がここにきて、「おもしろいところ」と思うかどうか……
むしろおいしいパンケーキ屋を見つけたと喜んで、俺と凛を誘いそうな気がする。
しばらくするとパンケーキが届いた。
蓮は腹が減っていたのか、あっという間に食べ終わった。俺も、周りが女性客ばかりの中で男二人でいることに少し居心地の悪さを感じ、急いで食べ進めた。
会計を済ませ店の外に出る。
「うまかったな!でもやっぱり昼飯にするにはもうちょっと量が欲しいか。で、ここは『おもしろいところ』の候補としてどうだった?」
「パンケーキは確かにうまかったけど、どうだろうなぁ……なんか「おもしろいところ」とは違う気がする」
「俺もそんな気がするなぁ。ここがそうだとしたら別に隠さないだろ、美月ちゃんなら」
「だよなぁ……」
「まあ一発目から確信が持てる答えになんて辿り着けないんだからどんどん行こうぜ!次は駅中のコーヒーショップだな!」
「だな。よし!行こう!」




