これから
「まずは何から話そうか」
自然と蓮が仕切ってくれている。
「湊くんがみーちゃんに避けられてると思ったのはなんで?家では変わった感じなかったよ?帰ってきたらダッシュで部屋に向かってたけどご飯の時とかに話す時はむしろ機嫌良かった気がする」
「学校で会ってもあんまり話したがらない感じがしたり、帰りに教室に迎えに行っても、もう帰ってたり用事があるって言われたりが続いてさ……」
「ふーん。……なんか湊くんメンヘラみたい!」
隣で蓮が小さく吹き出した。
「凛ちゃんおもしろいね。まあ、湊はちょっと気にしすぎだったのかもな」
続けてこれまでの話を整理する。
「二人の話からすると、学校では湊を避けているように見えたけど、家ではそんな様子はなかったってことか」
「うん。むしろなんか楽しそうだった気もする」
「楽しそう……?」
凛の言葉を繰り返す。
そういえば、元クラスメイトも言っていた。
美月は、何かを楽しみにしているようだった、と。
「楽しそうってよりなんかウキウキしてる感じかな。一年前のことだからはっきり覚えてるわけじゃないけど」
「佐々木くんたちも言ってたな。美月ちゃんはなにを楽しみにしてたんだろうな」
蓮の言葉を聞いて、昨日の朝、美月と交わしたメッセージが頭に浮かんだ。
「そういえば……」
「どこかおもしろいところ見つけたって言ってた。どこなのか教えてはくれなかったけど」
「そんなこと言ってたのか。楽しそうにしてたのと関係ありそうだな」
蓮には昨日話していたが、朝のメッセージのことを凛は知らない。
蓮はそれを汲んで、話を合わせてくれている。
「おもしろいところかー。みーちゃんからそんなのは聞いてないなー。そんな楽しそうなんだったら連れてって欲しかったな」
「凛にも話してないんだな。どこ行ってたんだろうな」
「放課後急いでたのはそこに行ってたのかな?でもさっき凛ちゃんがすぐ部屋に行ってたって言ってたよね」
「でも毎日じゃないですよ。早く帰ってきた日は部屋でなんかしてたし、そんなに帰ってくるのがすごく遅い日もなかった……と思う」
「部屋でのことも気になるな。でも、家での美月の様子がわかるのは助かるよ」
「ほんと?じゃあメロンソーダ頼んでいい?」
「……どうぞ」
「湊!俺もコーラいい?」
「お前は自分で払えよ」
それぞれに飲み物を注文し、一旦調査は中断した。
「蓮さんってイケメンだよね。あっ、敬語じゃなくても大丈夫?」
「そんなことないよ。もちろん敬語なんていらないよ。湊に話すのと同じようにしてくれてオッケー」
「凛ちゃんはすごく美月ちゃんの妹って感じがするね。湊の扱いとかも」
「ほんと?みーちゃんに似てるって言われるのは嬉しい!みーくんの扱いはみーちゃんを見て学びました!」
「学ばなくていいことばっかり学びやがって」
「湊はからかってやるくらいがちょうどいいよ。あっ、凛ちゃん、時間は大丈夫?」
蓮の言葉で俺と凛は時計を見た。
「あっ、もうこんな時間!明日も部活あるし今日はそろそろ帰ろうかな」
「じゃあお兄さんたちで送っていくよ」
「ありがとう!」
俺たちは会計を済ませ、カフェを後にした。
凛を送り届け、蓮と二人で今日の話を振り返りながら歩く。
「美月はやっぱり、どこかに出かけてたんだろうな。それと、家での様子を聞くと、避けられてたのは勘違いかもってのはちょっと納得できてきた」
「メンヘラ湊くんだもんな。どこに行ってたのかはこれから調べていかなきゃだな」
「うん。今のところ手がかりはほぼないけどな……」
「そこは三人で探していこうぜ。そういえば、凛ちゃん今日お前のこと一回みーくんって呼んでたな」
「気づいた?昔はずっとみーくんだったんだよ」
「そうなのか?みーちゃんとみーくんか」
「そう。わかりづらいだろ?昔はやめろって言ってたんだけど、実際呼び方変わると寂しいもんだな」
「勝手ですなみーくんは」
「お前はやめろ」
「まあ、一年近くまともに話してなかったんだろ?これからよ。今日みたいに自然に呼んでくれるようになるさ」
「そうだといいけど」
「明日も今日と同じ時間でいいか?」
「いいのか?」
「ゴールデンウィーク中一つも予定ありません」
「ありがとな」
蓮と明日の約束をして、それぞれ家路についた。




