一緒に知りたい
蓮とは早めに解散し、夕方には部屋に戻ってきた。
本棚に手を伸ばし、美月と見た映画の原作小説を取り出す。
夕食の時間まで夢中で読み進めた。
美月と見た映画の場面が思い浮かぶ。
そして、見終わったあとの楽しそうな美月の笑顔も。
夕食を済ませた後、すぐに連絡を入れた。
『さっそくだけどさ、明日の午後って暇?』
『午後は何もない!』
『凛に話しておきたいことと、頼みたいことがあるんだ。カフェで話せる?』
『今回はお団子がいいです。ずんだ!』
『了解。それと、俺の友達も来るかも。名前は聞いたことあるかな?蓮って言うんだけど』
『名前は知ってる!緊張するなー』
『びっくりするほどいいやつだから安心して』
凛との約束を取り付けた俺は蓮とも連絡を取った。
蓮は二つ返事で快諾してくれた。
翌朝も、いつもどおり美月とメッセージを交わした。
凛が来るのは部活の後だ。それまで、蓮と少し打ち合わせをすることにした。
「連日悪いな。ありがとう」
「どうせ特にすることもない連休だしむしろありがたいよ。それに凛ちゃんとも会ってみたかったしな」
「その凛なんだけどさ、まだ凛には美月が亡くなる前日のケンカのこと話してないんだよ」
「そっか。今日話すのか?」
「うん。協力してくれるかはまだわからないけど、当時の美月のことを調べるならケンカのことは話しておかないと」
「そうだな。メッセージのことは伏せておくんだろ?」
「それはまだ話せないな……」
「オッケー!把握した。あとは臨機応変にうまいことやるわ」
本当に頼りになる。
凛との関係は、だいぶ修復されてきた。
それでも、まだ完全に元通りじゃないことは、俺自身が一番よくわかっている。
少しして、凛がカフェにやってきた。
「こんにちはー」
いつもより勢いがない。
「どうも!蓮です!凛ちゃんだよね?」
「はい。はじめまして」
「そんなに緊張しなくていいよ!」
凛が借りてきた猫みたいになっている。
その姿がおかしくて吹き出してしまった。
「あー!湊くん笑ったな!バカにしてるんだ。ずんだだけじゃ足りない!みたらし団子も頼むからね!」
「はいはい。好きに頼んでいいよ」
「おっ!凛ちゃんも調子出てきたじゃん。その調子!」
「なんか湊くんと蓮さんが仲良いの意外!これからも湊くんのことよろしくお願いします」
「凛、お前どんな立場から言ってんの?」
さっきまでしおらしかったくせにもうこれだ。
白石家の血は恐ろしい。
「それより湊くん、話したいことってなに?頼みもあるって言ってたよね?」
「……ああ。今まで言ってなかったんだけどさ」
「うん」
「事故の前の日、俺と美月、ケンカしてたんだよ。俺が余計なこと言ったせいで」
「え?」
「幼馴染離れしようだとか無理に関わらなくていいとか言っちゃってさ」
「みーちゃんもそれに言い返した?」
「もう知らないって言われたよ」
「言いそう。意地っ張りだから……」
凛は少し考えてから、続けて尋ねた。
「でも湊くんもなんでそんなこと言ったの?なんかあったの?」
蓮は俺たちのやりとりを黙って見つめている。
凛に、どこまで話すべきだろう。
少し迷ったが、あの日の自分が何を考えていたのかだけは、正直に話そうと思った。
「高校に入ってからさ、少し美月との間に距離を感じてた。もっと言えば避けられてるように感じてた。」
当時の心境を思い出しながら話し続ける。
「環境も変わって、お互い新しく友達もできるだろうし仕方ないのかなとも思ったんだけどさ。」
話しているうちに、あのときの自分が何に戸惑っていたのか、少しずつわかってきた。
「美月はこれからもずっとそばにいてくれるって、どこかで当たり前に思ってたんだろうな。だから、急に距離を感じて戸惑っちゃったのかもしれない」
「みーちゃんと湊くんはずっと一緒にいるんだろうなって私も思ってたよ」
「ケンカしたまま、仲直りもできないまま美月に会えなくなっちゃったんだ……」
「……みーちゃん、ケンカのこと一言も言ってなかった」
「そっか……」
「でも、きっと湊くんを避けたりはしてなかったんだと思うよ。少なくとも家ではずっといつものみーちゃんだった」
「……それでさ、凛に頼みたいことの話なんだけど」
「うん」
「美月があの頃、何をして、何を考えてたのか知りたいんだ。凛が嫌じゃなかったら、一緒に調べてくれないか?」
「湊くんがそう感じるくらい、学校ではみーちゃんの様子が違ってたのかな……。私、家でのみーちゃんしか知らないから」
凛がこちらを見つめた。
「私も、私が知らなかったみーちゃんのことをちゃんと知りたい」
「よし!決まりだな!」
ここまで黙っていた蓮が声を上げた。




