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君と繋がる七分間  作者: ひだりみぎ


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残されたアルバム

「……美月の……部屋……」


「無理にとは言わないわよ。」


「……いえ。見せてもらいたいです」


「ねえ、私も一緒に行っていい?」


 凛の言葉に、おばさんは一瞬だけ目を丸くした。

 それから、優しく微笑んだ。

「もちろん。二人でいってらっしゃい」


 おばさんは食器の片付けを始め、俺たちは二階の美月の部屋へ向かった。

 扉を開けると懐かしい匂いがした気がした。


「あっ!このソファ懐かしいね!」


「だな。よく凛が寝転んでたな」


「よくそのまま寝ちゃって、ご飯に呼ばれて起きてた。起きた時には湊くん帰ってるんだもん」

 あの頃のように寝転びながら、凛がほおを膨らませた。


「どれだけ起こしても起きなかったからな」



 部屋の中を見回すと、ベッドの上に懐かしいものを見つけた。

「これ……チンアナゴの抱き枕。まだ持ってたんだ」


「それみーちゃんのお気に入りだからいつも抱っこして寝てたよ」


 小学校の時、こども会の旅行で水族館に行った時だったな……


 

 ----

「みなとー!次行こう!次!」

 美月は水槽を少し見るとすぐに次に走っていっていた。


「はやいって。もうちょっとちゃんとみようよ」


「たくさんおさかなさんいるんだからはやくいかないと全部見れなくなっちゃうよ!」


「美月!危ないから走らない!」


「はーい、お父さんごめんなさい」


「湊くんも無理に美月に付き合わないで好きなの見て大丈夫だからね」


「うん。……でも美月と一緒に見る」


「ありがとうね。湊くんがいれば美月のことは安心だな」



 おじさんに注意され走りこそしなくなったが、美月は変わらずどんどん先に進む。

 そんな美月がある水槽の前でピタリと立ち止まった。


「みなと!みてみて!これかわいい!」


「チンアナゴだね」

 おじさんが水槽を覗き込む。


「にょろにょろ出たり引っ込んだりしてる!」

 美月は水槽に顔を近づけ、じっとチンアナゴを見つめていた。


 その隣で俺も一緒にチンアナゴを見ていた。

 顔を出すたび美月が反応する。


「あっ!また出てきた!あぁ……引っ込んじゃった」

 

 さっきまであんなに動き回っていた美月が釘付けだ。

 こうなると美月は長い。


「美月、そろそろ次行こうよ。全部見れなくなっちゃうよ」


「もうちょっと!もうちょっとだけこれ見たい!」


 結局、美月はなかなかチンアナゴの水槽から離れようとしなかった。

 そのせいで、後半は急ぎ足で水槽を回ることになった。

 そして、最後に立ち寄ったお土産コーナー。


「あっ! これ欲しい!」


 美月が指さした先にあったのは、チンアナゴの抱き枕だった。


「お父さん!これ買って!」


「お母さんのお土産のお菓子選んでからね」


「はーい。お母さんにはこれ!このクッキー!」

 お土産を選ぶと美月は一目散に抱き枕のところにかけていった。

 おじさんは少し呆れていたような気がする。


 無事抱き枕を買ってもらった美月は、帰りのバスの中でもずっとチンアナゴを抱きかかえ、幸せそうに眠っていた。


 ----


「本当に気に入ってたんだな」

 あのバスの中での美月の寝顔が思い出された。


「それ買ってもらった時の写真も残ってるんじゃない?みーちゃんたくさん写真撮ってたし!たしか、この辺にアルバムが……」

 凛は本棚を覗き込み、何冊かのアルバムを引っ張り出した。


「うわー、アルバムたくさん!湊くん、写真見てみようよ!」

 

 テーブルの上のアルバムから一冊を選び、凛がページをめくっていく。


「これはみーちゃんたちが中学校の時のやつかー。湊くん走ってる!珍しい!」

 中学の運動会の写真だ。


「俺は美月と違って運動は得意じゃないから。俺の写真はいいから他見ようぜ」


「みーちゃんは足も速かったよね。リレーもいっつもアンカー!」


 中学時代の写真を見ているうちに、一冊目のアルバムは最後のページまできていた。

 凛が次のアルバムに手を伸ばす。


「こっちは小学校かな?こども会の時のやつあるかなー」

 凛はアルバムのページを次々めくっていく。


「あっ!あった!これじゃない?」

 そこには抱き枕を抱えて嬉しそうな美月、その横には疲れた顔をした俺が写っていた。

 この頃はまだ美月はカメラに目覚めていなかったのでおじさんが撮ってくれた写真だ。


 美月が自分のカメラを持つようになったのは、小五の林間学校からだった。

 それ以来、何かあるたびに写真を撮るようになった。

 

 ふと、林間学校に出発する朝のことを思い出した。


「俺たちが林間学校にいく日の朝に写真撮ったの覚えてるか?凛も写りたがった時のやつ。あの写真もあるかな」


「もうちょっと後ろの方かなー。……あれ?ないなー」


「これは修学旅行のやつか。ここまで来ちゃうと小六だもんな。もうちょい前か」


 ページを行き来しても、林間学校の写真は見つからなかった。

 ふと、ページの一角に目が留まった。

 写真があったであろう場所が、不自然に空いている。


「写真の順番としては多分ここだよね。林間学校中の写真はあるし」


「……うん。さっきの中学のアルバムでも空いてるところなかったか?」


「あったかも。見直してみよ」


 凛とアルバムを見直してみると、林間学校の朝の写真以外にも、何枚か同じように空いている場所があった。

 そこにどんな写真があったのかまではわからない。


 ただ、写真がなくなっていることが、妙に気になった。

 

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