急いで帰る理由
美月は、俺の知らないところで何をしていたんだろう。
昨日から、そんなことばかり考えている。
明るくて、誰とでも仲良くなれて。
それなのに、放課後の誘いを断ってまで、どこかへ向かっていた。
その理由を、俺は知らない。
スマホが震えた。
『おはよう、湊』
『おはよう。そういえば佐々木くんから聞いたよ。なんか遊びに誘われたの断ったんだって?』
『断ったよー!だって忙しかったし、あんまり知らない人だし!何?嫉妬?(笑)』
『嫉妬じゃねーよ。美月に対して嫉妬とかしたことないし』
『えー!たまには嫉妬してくれてもいいのに!』
『しねーよ』
『ていうか、湊って佐々木くんと仲良かったんだ。いつの間に。手が早いね。』
『蓮の紹介でな』
『蓮くんか!それなら納得!』
『なんだよそれ。それより美月が忙しいってのも珍しいな。なんかあるのか?』
『うーん、どうしよっかなぁ。教えてあげようかなぁ。』
『やっぱ教えない!考えてみて!』
教えてはくれないか。
放課後急いで帰っていたことと、関係あるとは思うけど……
『考えろって言われてもわかんねーよ。ヒントないの?』
『当たってても教える気ないからヒントもなし!』
『結局教えるつもりないんじゃねーか』
『ごめんね!謎多き女ってことで、ここはどうか収めてください!』
謎多き女か……
本当にそうだよ……
前までは、こんなに美月のことを知らないなんて思ってもなかった。
気付けば時間がきていた。
七分間はあっという間だ。
美月とのやりとりを終えた俺は考えていた。
放課後、遊びに誘われても断っていた。
本人は忙しかったと言っていた。
誰かと会う約束でもあったのだろうか。それとも、どこかへ通っていたのか。
考えてみても、答えは出てこない。
ただ、美月は教えないと言った。
何もないとは言わなかった。
あの時の美月が何を考えていたのか知りたい。
ちょうどよく今日は祝日だ。
俺は凛と連絡を取ることにした。
『凛、今日って部活?』
『部活だよ!でも午前中で終わりー』
『なに?早速カフェに連れてってくれるの?』
『そうだな。そうしようか。部活終わったら連絡くれ』
昼前、凛から連絡がきた。
『部活終わったよー!』
『おつかれさま。現地集合でいいか?』
『了解であります( ̄Λ ̄)ヾ』
カフェに着くと既に凛が待っていた。
「湊くん、遅いよー」
「凛が早いんだよ」
「はやくはやく!お腹すいた!」
一番奥の席へ案内されメニューに目を通す。
「昼まだだよな?なんでも好きなの食べていいぞ」
「やったー!じゃあカルボナーラとメロンソーダ、あとは食後にプリンパフェ!」
「またプリンかよ。本当にプリン好きだな」
「そうだよ!だからあの時もすごい怒ったんだから。それでみーちゃんは次の日買ってきてくれたのかもね」
「三人でいるときは美月が凛を怒らせて俺がなだめてたもんな」
「そうそう。でもみーちゃんが怒るとこはあんまり見たことなかったね。みーくんはよくみーちゃんに怒ってたけど。……あっ、湊くん」
「まあ、大体は美月が悪い」
「それはそう!」
凛が笑った。
その笑顔が、美月にとてもよく似ている。
「そういえばさ、学校で聞いたんだけど美月のやつ高校入ってすぐに男子に遊びに誘われてたらしいぞ」
「そうなの?みーちゃんモテてたもんなぁ。羨ましい!湊くんは知ってた?みーちゃん結構そういうことあったみたいだよ」
「知らないなぁ。あんまりそういう話はしなかったし」
「そうなんだ。意外!でもみーちゃんってそういう誘いは断ってたんじゃないかな?その人も多分断られてたでしょ?」
「うん。断って急いで帰ったらしい。その頃は俺も帰り別だったんだよなぁ。なあ、凛。高校入ったくらいの頃、美月帰り遅かったりしなかったか?」
「うーん、どうだったかなぁ。遅いまではいかないけど、どっか寄ってきたっては聞いたことあった気がする。でも大体帰りは早かったよ!すぐ部屋に駆け込んでた」
「なんか当時忙しかったらしいんだよなぁ。学校でもそっけなかったし。それでちょっと美月とケンカした」
「えー!ケンカしてたの?みーちゃん見ててもわかんなかった。どうせみーちゃんが悪いんでしょ?」
「いや、あれに関しては俺の勘違いが原因かもしれないって今になって思ってさ。それもあって凛に当時の美月のこと聞きたかったんだ」
「そっか。湊くんでも色々考えてるんだね」
「でもってなんだよ」
「ごめんごめん。でも、知りたいことがあったら私でよかったらなんでも聞いて!湊くんより知ってるかはわかんないけど。あっ、情報料は甘いもので!」
「ありがとな」
「ちなみにゴールデンウィークは部活あるけど今日と同じで大体午前中で終わるよ!久しぶりに家くる?お母さんも湊くんに会いたいと思うし!」
ゴールデンウィークの予定を聞こうと思っていたら凛の方から教えてくれた。
凛の家、つまり美月の家だ。
昔はよく遊びに行っていた白石家。
おばさんにもあれからほとんど会っていない。
「そうだな。お邪魔しようかな」
詳細な日程は後々決めることにして、この日は解散することにした。
「はー、食べた食べた!湊くん、ごちそうさま!」
「どういたしまして。こっちこそありがとな。また連絡する」
「うん!待ってるね!」
久しぶりに訪れる白石家。
そこには、俺の知らない美月の姿が残っているのだろうか。




