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君と繋がる七分間  作者: ひだりみぎ


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クラスメイトの記憶

 通学路で蓮を見つけた。


「蓮!」


「おっ!湊!おはよう!」


「おはよう。蓮、一つ頼みがあるんだけどいいかな?」


「なになに?湊の頼みならなんでも聞いてやるよ!……あっ、ごめん。やっぱりなんでもはなし!」


「無理だったら断ってくれていいよ。他の人に頼むから」


「嘘だって、聞く聞く!俺にできないことを湊が頼んでこないのはわかってるって」


「ありがとな。実は、また美月のことで頼みがあるんだ」

 蓮の空気が変わった。


「それこそなんでも言ってくれよ。頼ってくれ」


 今朝考えたことを蓮に伝える。

「去年の美月のクラスメイトに話が聞きたいんだ。高校に入ってからの美月について、俺の知らない美月の話を聞きたい」


「美月ちゃんのクラスメイトか。何人か心当たりあるよ。昼休みまでに話つけとくから昼休みに屋上集合な」


「ありがとう。助かるよ」


「いいって。俺たちの仲だろ?」


 蓮はいつもの調子で笑った。


 それから俺たちは、他愛もない話をしながら学校へ向かった。


 美月のことを俺はどれだけ知っていたんだろう。

 小さい頃から一緒にいて、家族みたいに過ごしてきた。

 なんでも知ってるつもりだった。


 でも、それは俺と一緒にいる時の美月でしかなかったのかもしれない。


 俺のいないところで、俺の知らない人たちと過ごしていた美月は、どんな顔をしていたんだろう。


 そんなことを考えているうちに教室に着いた。


 

 そして、昼休み。


 俺は蓮との約束通り、屋上へ向かった。

 自分の知らない美月を知れるかもしれない希望と、少しの怖さを抱えながら。


 屋上に着くと、蓮は既に待っていた。


「ごめん、遅れた」


「大丈夫大丈夫!俺たちもいまきたとこだから。早速紹介するわ。佐々木くんと伊藤さん、あとは……山元さん。湊も知ってるよな?」


 あまり見慣れない顔が二人、学校で何度か見かけたことはある程度だ。

 山元さんはもちろん知っている。中三の時に俺と美月と同じクラスだった。


「湊くん、久しぶり」

 山元さんが口を開いた。


「久しぶり。高校ではあんまり会うことなかったもんね」

 中学時代も特別仲がよかったわけではないが、知らない仲ではなかった。


「今日は急に集まってもらってごめん。ありがとう。佐々木くんと伊藤さんは話すの初めてだよね?大崎湊です」


「気にしないで。それより白石さんの話だよね?私たち一週間くらいしか知らないから、そんなに深い話はできないと思うよ?」

 伊藤さんが申し訳なさそうに応じてくれた。


「それでいいんだ。高校に入ってからの一週間、美月がどんなふうに過ごしていたのか知りたくて。なんでもいいから覚えてることを話してくれると嬉しい」


 俺がそう頼むと佐々木くんが話し出してくれた。

「白石さんか……とにかく明るくて愛嬌があったよね。初日のHR前には『どこの中学校からきたの?』って何人かとすぐ仲良くなってた気がする」


「そうそう。私にも話しかけてくれたよ。初めて話したのに、前から友達だったみたいに自然に話せたんだよね。山元さんとも白石さんを通じて話すようになったんだよね」


「その辺は中学校の時から変わらないよね。美月ちゃんは誰とでもすぐ仲良くなってた。」


 言いながら、山元さんがこちらを見たので、俺も頷いた。

 

「うん。俺はそういうの得意じゃないから昔からすごいなって思ってたよ」



「そういえば……」

 山元さんが何かを思い出すように続ける。

「あの頃、美月ちゃんたまに変な顔してたかも」


「変な顔?」


「うん。なんかね、たまになにか考えてニヤニヤしてた」


「あー!してたかも!しばらく喋ってないなと思ったらすごく楽しそうな顔してた」

 山元さんの記憶に伊藤さんが同意した。


「あー、女子が集まって話してた時か? 俺らはなかなか入っていけなくて、遠くから見てたわ」


「わかる。女子って、盛り上がってるときは全然入る隙がないんだよな」

 佐々木くんと蓮が頷き合う。


「大崎くんの前で言うのもあれだけどさ。白石さんってかわいかったじゃん?気になってるやつがいたみたいでさ。放課後遊びに誘ってたよ。まあ、断られてたけど」

 

「それは無理無理!美月ちゃんは学校終わったら湊くんと帰るんだから。中学校の時ずっとそうだったもん。ね?湊くん」


「中学まではそうだったね。高校入ってからは別々に帰ってたよ」


「え?そうなの?授業終わると急いで教室から出て行ったりしてたから、てっきり湊くんのところに行ったんだと思ってた」


「幼馴染離れってやつかな」

 自嘲気味の笑みを浮かべてしまった。


「なにそれ。初めて聞いた。」

 伊藤さんが笑ってくれたので少し助かった。


「まあ、高校生にもなればそんなもんだろ」

 蓮が軽い調子で口を挟んだ。


「そういうものなのかな」


「そういうもんだって。……あ、やべ。そろそろ昼休み終わるぞ」


 蓮がスマホで時間を確認する。


「ほんとだ。みんな、今日は急に集まってくれてありがとう。話が聞けてよかったよ」


「ううん、たいした話できなくてごめんね」


「そんなことないよ。ありがとう」


 そうして俺たちは、屋上を後にした。



 教室へ戻る途中、山元さんの言葉を思い出した。

 

 授業が終わると、急いで教室を出ていった美月。


 俺は美月が放課後をどう過ごしていたのか、ほとんど知らない。

 中学の頃なら、俺も一緒に帰っていたから、そんなことを気にしたことはなかった。

 でも、高校に入ってからは違った。


 どこへ行っていたんだろう。

 美月に聞いてもわからなかった。


 誰かと約束でもしていたのか。それとも、何か用事があったのか。


 考えてみても、何も思い浮かばなかった。


 小さい時からずっと一緒にいたのに。


 でも、もう知らないままにはしておけない気がした。


 美月があの日、何をしていたのか。

 何を考えていたのか。


 そして、あの日から一年が経った今、どうして美月からメッセージが届くのか。

 まだ、わからないことばかりだ。

 だからこそ、俺はもっと美月のことを知りたい。

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