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君と繋がる七分間  作者: ひだりみぎ


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湊くん、か

 中学校に着いた俺は校舎を見上げた。

「懐かしいな」


 あちこちから、中学生の声が聞こえてくる。

 体育館の方へ歩いて行くと、ボールが床を弾む音とバスケットシューズが床を擦る音が響いていた。

 俺は校門近くまで戻り、練習が終わるのを待つことにした。





 しばらく待つと、部活を終えた中学生たちが次々と帰っていく。

 その中に凛の姿を見つけた。


 声をかけようとしたとき、凛が俺に気づいた。

 驚いたように目を見開く。

 それから笑顔になりかけて、ほんの一瞬、表情が止まった。

 

「湊くん! どうしたの?こんなところで」


「少し凛と話したいなと思って。この間はあんまり話せなかったからさ」


「……うん、いいよ!」


 凛は一度だけ俺の顔を確かめるように見てから、笑顔で頷いた。


「どこか行くの?」


「そうだな。河川敷に行こうか。向かいながら何か奢るよ」


「えっ、本当?じゃあコンビニ寄っていこうよ!」


 弾んだ声を聞いて、少しだけ懐かしい気持ちになった。



 コンビニに着いた俺たちはそれぞれ店内を見て回る。

 飲み物を手に取り、スイーツ売り場に目をやると、凛がプリンを見つめていた。


「プリンでいいのか?」


「うん」

 凛はプリンから目を離さないまま答えた。

 

「あ、あと飲み物もいい? いいよね。ありがとう!」

 返事をする前に礼を言われてしまった。変わらないな。





 買い物を終えた俺たちは河川敷へ向かう。


「そういえば、凛ってプリン好きだったっけ?」


「好きだよ!それと、これみたら思い出しちゃって……」


「思い出す?」


「うん……昔、私が楽しみに取っておいたプリンをみーちゃんが勝手に食べちゃってさ」

「怒ったの。なんで勝手に食べるの?楽しみにしてたのにって」

「そしたらみーちゃんは『食べたかったんだから仕方ない!』って」


「子どもっぽいな」

 いかにも美月が言いそうなことだ。俺は小さく笑った。


「でもね、次の日、冷蔵庫みたら同じプリンが二個あったの。『今日は一緒に食べようよ!』って」


「そっか。凛が美月に怒ってたのってそういうこともあったんだな」



 プリンの話が終わる頃には河川敷に着いた。

 俺たちは並んで座り、凛はプリンを食べている。


「ここでよく三人で駄菓子とか食べてたよな」

「俺や凛が食べてるのを美月が欲しがってさ」


「そうだね。プリンと一緒だ」

 凛は笑った。

 懐かしむようなその笑顔に、少しだけ寂しさが混じっていた。


「こうやって話すの、久しぶりだね」

「昔はみーく……湊くんとみーちゃんと三人でいろんなところで遊んだよね」


 俺は、凛の言い直した呼び方が少し気になった。


「……そうだな」


「……なあ、凛」


「ん?」


「美月が事故に遭った日のこと、覚えてるか?」


 その言葉を聞いた凛は一度こちらを見つめたあと、手元のプリンに視線を落とした。


「……もちろん覚えてるよ」

「朝、出かけて行くみーちゃんに『いってらっしゃい』って言ったことは今でも覚えてる」

「でも、事故のことを聞いてからのことはほとんど覚えてない」


「……そっか」

 俺は少しだけ言葉に詰まった。


「ごめんな。つらいこと思い出させて」


「ううん。大丈夫だよ」

 凛は小さく首を振った。


「……美月はあの日どこにいこうとしてたんだろうな。凛は何か聞いてないか?」


 凛は、少し考えてから答えた。


「……わかんない。出かけていくのを見送っただけだから」


「……そっか」



「凛も部活終わりで疲れてるだろうし、そろそろ帰ろうか」


「うん。今日は会いにきてくれてありがとう!」

「またこうやって話せるかな?」


「ああ、また会いに行くよ」


「うん!湊くん、またね!」


「気をつけてな」



 

 凛と別れ、家へ向かって歩き出す。

 しばらくして、俺はふと足を止めた。

「……湊くん、か」

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