あの日の写真
午後の授業は、どうにも集中できなかった。
黒板に書かれた文字を目で追いながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
蓮に言われたことが頭から離れない。
考えれば考えるほど、わからなくなってくる。
ふと、昔のことを思い出した。
あれは小学五年生の時、林間学校の日だった。
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「湊、こっち向いて!」
美月のテンションがいつもより高い。
おじさんに借りたカメラを構えてこっちを見ている。
「なんで俺?」
「いいから、はやくはやく!」
「はいはい」
言われるままカメラを見る。
カシャッ
「撮れた!」
美月が嬉しそうに笑った。
「もう一枚!」
「まだ撮るの?」
「まだまだ撮るよ!今日は待ちに待った林間学校なんだから!はい!湊、もっと笑って!」
「そんなに言われても急に笑えないって」
「みーちゃん!」
美月の家の玄関から元気な声がして、ランドセルを背負った凛が飛び出してきた。
続いておじさんが追いかけてきた。
「凛、美月と湊くんの邪魔しちゃダメだぞ」
「えー!凛も撮ってもらいたい!みーちゃん、撮って撮って!」
「じゃあ凛も撮ってあげる」
美月が凛にカメラを向ける。
「違う!みーくんと一緒がいい!」
「それなら美月も一緒に入って3人で撮ったらどうだ?お父さんが撮ってあげるよ」
「ほんと?ありがとう!」
美月が嬉しそうにカメラをお父さんに渡した。
凛が俺と美月の間に入り、両側から俺たちと腕を組んだ。
「はい、みんな笑って」
「みーくん!もっと笑って!」
「凛まで言うなよ」
「ほら、撮るぞー」
カシャッ
「お父さん、ありがとう!じゃあ私たちは行ってくるね!湊、行こ!」
「おう。おじさん、写真ありがとうございました」
「うん。二人とも気をつけて行ってくるんだよ。楽しんでね」
「はい!行ってきまーす!」
美月は行きのバスの中でも、林間学校でも、俺や班のみんな、目に入った風景まで、何でも写真に撮っていた。
「そんなに写真撮ってどうするんだよ」
「あとで見たら今日のこと思い出せるじゃん!お父さんがたくさん写真撮ってるから私も撮ってみたかったの。現像してもらうのが楽しみ!写真ができたら湊も一緒に見ようね!」
目を細めて笑う美月。
小さい頃も高校生になってからも変わらなかった美月の笑顔だ。
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あれから美月はすっかり写真にハマって、ことあるごとにカメラを構えていたな……
そんなことを考えていると授業が終わりの時間を迎えた。




