本当に、そうだったのか?
昼休み、いつものように蓮と昼食を取る。
今日は購買でパンを買ってきた。
「今朝もメッセージきたよ。やっぱり7時8分を過ぎると既読がつかないってので間違いないと思う」
「やっぱりそうか。じゃあこれからはその朝の7分間を大事にしないとな」
「……うん」
「ん?どうした?元気ないな」
蓮に言われて、俺は自分が俯いていることに気づいた。
「別に……」
「……あれ?」
蓮が何かを思い出したように声を上げる。
「そういえば今日って、湊の誕生日じゃん! おめでとう!」
「ありがとう」
蓮は俺の誕生日を覚えてくれていた。
蓮の誕生日は8月だったな。
俺も忘れないようにしないと。
そう思ったところで、ふと今朝のことを思い出した。
美月は、何も言わなかった。
俺の誕生日について、一言も。
今までなら、気にも留めなかったかもしれない。
でも、今日はなぜか引っかかった。
そして、亡くなる前の美月の様子を思い出す。
「なあ、蓮。美月ってさ……俺のこと避けてたよな?」
「そうか?俺にはそんな風には見えなかったけど」
「高校に入ったくらいからかな。なんとなくだけどそう感じるようになってた」
「いやあ、そんなことないと思うけどなぁ」
「むしろ、美月ちゃんはお前のこと心配してたぞ」
「心配?」
「そう。『高校でちゃんと新しい友達作れるかな』とか『新しい環境で大丈夫かな。湊って人見知りだから』とか」
「……そんなこと言ってたのか」
「言ってたよ。『男の子同士でしかわからないこともあるだろうし、高校でも湊のことお願いね』っても言われたな」
「でも、じゃあなんて俺にはあんな態度だったんだ?」
「あんな態度ってなんだよ。高校入ってからもいつも通りの美月ちゃんだったぞ?」
「うまく言えないけど避けられてるような……帰りの時間もあえてずらしてるようなところもあったし……」
「それで俺は美月に嫌われたんだなって思って、あんなこと言ってしまったんだ……」
「あんなことって?」
「……美月に、そんなに避けるくらいならもう俺に無理に関わらなくていいって……」
「……湊、お前そんなこと言ったのか?」
「……うん。それで言い合いになって」
「翌日、美月は……」
俺はそこで言葉を詰まらせた。
あの日の夜のメッセージ。
お互い意地を張って言い合ってしまった。
仲直りもできないまま。
次に学校で会ったら謝ろうと思っていた。
でも、翌日の朝——
「……事故に遭った」
ようやく、それだけを口にした。
2人の間に静寂が流れる。
「俺、美月に嫌われたんだと思ってた。」
「でも、蓮の話を聞いてるとわかんなくなってきた……本当にそうだったのかなって」
あの頃、美月は俺を避けていたと思っていた。
だから、俺も美月を突き放した。
でも——
もし、それが俺の思い込みだったとしたら。
あの時、美月は何を考えていたんだ?




