01 避暑地での舞踏会!
朝食の後はローズに付き合わされてサマセットにあるメインストリートに行くことになった。
どうやらローズは今、サマセットで流行している服を調べたいみたいだった。
ローズは何を着ても似合うと思うけど、自分が着飾る事について無邪気な喜びを感じるタイプみたい。
ということで、お店を何軒も梯子して「あーでもない、こーでもない」と色々な服を試着している。
「うーん、これはどうかしら?」
「あー、うん、素敵よローズ」
「そう?じゃこれも買おうかしら」
もう何度目になるか分からない会話を繰り返す。
「取りえず、こんな所かな」
やっと満足のいく買い物が出来たらしい。
はぁ、これでやっと帰れる、そう思ったのですが……。
「さぁ、次はシビルの番よ」
と、思っても無い言葉が飛び出した。
「えっ!?」
はぁ、とローズは溜息をついて首をふると、ベルを鳴らして店員を呼んだ。
店員は冊子を抱えており、それにはどうもサマセットで流行しているドレスのイラストが描かれているようだ。
「シビルも私の隣に居る以上、流行遅れのドレスを着て社交会館に行くとか許されないからね?で、シビルにはこのスプリンググリーンを基調とした色が似合うと思うのよ。で、差し色にこのカーマインを使ったドレスを……ちょっとシビル、聞いてるの?貴女のドレスの話をしてるよの?」
ローズの口は止まらない。
こうして、私は暫くの間ローズの着せ替え人形に徹するしかなかったのでした。
そして、その夜、いよいよ私達は社交界会館に足を踏み言れる時がやって来た。
ローズの侍女の力を借りて髪を綺麗に整えられ、これまた同じ侍女の手によってドレスの着付けがされました。
「うん、良いと思うわ。やっぱり私が見立てたとうりね。これなら私がシビルの隣に居ても恥ずかしくないわね」
そう言ってローズは私を褒めているのか、それとも自身を褒めているのか分からない様な事を言いながらうんうんと頷く。
とはいえ、私も褒められれば悪い気はしない。
「えへへへ、そうかな?」
「そうよ、今のシビルの格好ならどの社交界でも恥ずかしくないと思うわよ?ではさっさと他の準備も済ませてしまいましょう。あまり遅くなるようだと舞踏会のお相手がみんな塞がってしまうかもしれないから」
そう言って私達は再び自身の準備へと注力したのだけど……。
結論から言うと、私達が舞踏会場に入ったのはそれから大分時間がたった後なのでした。
なぜならローズの母親である侯爵夫人の準備にたっぷり時間がかかったからです。
というわけで遅れて舞踏会場に入った私達でしたが、案の定というか会場は人でごった返していました。
さすが社交シーズンって感じです。
そんな中を私達はなんとか人の間をすり抜けるようにして部屋に入る。
コーンウェル侯爵は舞踏会には興味がないようで、建物に入るなりスグにカードをやる部屋に直行してしまいました。
侯爵夫人はそんな侯爵の様子をみて憤慨しながらも、人の間を通り抜けるたびに自身のドレスの乱れを気にしていました。
私とローズはそんな侯爵夫人の後ろにぴったりとくっ付いて、時には腕にしがみつくようにしていたので多少の事でははぐれるような事は無かったのですが……。
人の間を抜けても抜けても、また次々と人が現れては私達を別の場所へと押しやろうとしてきます。
なんか入り口が一番空いていて、奥へ進むたびに混雑具合が増していくような気がする……。
うぐぐ……。
会場に入る前は中に入ってさえしまえばスグに開いている場所を見つけて、椅子にでも腰かけながらゆっくりと食事を摘まんだりドリンクを飲んだりできると思ったのにぃ……。
現実はそれほど甘くはなかったようです。
それでも奥へ、ひたすら奥へと進んでいく侯爵夫人の後を必死でついて行く。
そしてようやっと最奥と思える場所へとたどり着いたのですが、混雑具合は気持ち人が少くなった程度であり、大して変わらなかったのでした。
辺りを見回しても踊っている人の姿は殆どみえずにいました。
混雑にうんざりしているのは私達だけでなく侯爵夫人も同じようで、
「あ、あそこなら少し空いてるわね。向こうに行きましょう」
そう言ってさらに人の間を抜けていくと、やっと視界が開けるぐらい人が少ない場所にやってきました。
そこは少し高台になっていて、舞踏会場全体を見回せる場所になっていました。
私はそこから今まで進んできた道を確認するように辺りを見回す。
ここからは今まで進んできた場所と違って、やっと人々が踊る姿を見る事ができた。
その姿を見て私はようやく自身が舞踏会場に来ている事を実感する事が出来たのでした。
「やっと休める場所に着いたわね。あぁ疲れた」
ローズはそう言って溜息を吐く。
「ホントだよ、もう途中で帰ろうかと思っちゃった」
そう言って私も頷く。
「貴女達もお相手が見付かると良いわね」
侯爵夫人はそう言いつつ、自身のドレスの乱れを確認していました。
「おば様はおじ様と最初に踊られるのですか?」
「それは無理よ、あの人はカード室に行ってしまったもの」
「おじ様のカードは長いんでしょうか?」
「勝っている時はね。負けたらスグに帰ってくるわ」
そう言って侯爵夫人は肩を竦めるのでした。




