ノアはこんらんした!
「ごめんエヌ!ちょっと遅れちゃった!」
「ううん、気にしないで。私もちょっと前に着いたとこだから」
息を切らしながら俺は待ち合わせ場所である噴水の前に足を動かす。遅れた時間はおそらく数分ではあるが、数分でも相手を待たせてしまったことにとてつもないほどの申し訳なさを感じる。
「それでも待たせちゃったことに変わりはないから……ってわ!?」
「そんなに気にしてるならこれで無かったことにしてあげる」
そう言うとエヌは俺の手をきゅっと握り、体と体が触れ合う距離まで引き寄せてくる。おそらくこの距離感で歩けと言う事だろう。とても恥ずかしいし心臓がうるさいけど……遅刻しちゃった以上俺に拒否権はない。
「わ、わかった……それじゃあ行こっか。それという順番がおかしくなっちゃったけど可愛いね」
普段のローブ姿とは異なりシンプルながら上品さを感じさせる洋服に身を包んだエヌに、俺は月並みだが称賛の言葉を贈る。
「かっこいいの方が嬉しいけど……でも褒めてくれてありがと。ノアもその洋服と帽子すごく似合ってるよ」
「ありがとうエヌ」
そうか、こっちの世界だと女の子に対して使う誉め言葉はかっこいいの方が良いのか。うーん……日本だと女の子に対してかっこいいって言う機会が少なかったから違和感がすごいなぁ。
「それじゃあ行こっか……ベッドは大きい方が良い?それとも小さい方が良い?」
「何処に行こうとしてるの?買い物のはずだよね?」
「ふふ、冗談。それじゃあ行こうノア」
「う、うん」
エヌが言うと冗談に聞こえないんだけど……。
俺とエヌは今日一日買い物をする約束をしていた。ティオの機嫌を治すのに協力してくれたエヌに何かお礼をしたいと伝えると一日買い物に付き合って欲しいと言われたのだ。大金というわけではないが日々の冒険者稼業のおかげで少しはお金もあるし、のんびり街を見て回りたいという思いもあったためエヌのお願いを快諾し今に至る。
普段からあれな発言が多いエヌだけど……まぁきっと俺が本当に嫌がるようなことはしないだろう……きっと。
まず俺とエヌは露店を見て回ることにした。ここは多くの露店商が集まる場所らしく賑わいを見せていた。客引きの声に楽しそうに会話をする通行人の声が混ざり合いまるでお祭りに来たような感覚を覚える。すごい……異世界って感じだぁ(小並感)。
「ここは食べ物とかアクセサリーとか色々なものが売ってる。どうせ人混みにノアを連れていくのは危ないとかの理由でティオはここを紹介してないと思う」
「うん、初めてきた」
「やっぱり。ティオはちょっと過保護すぎる。誰かに絡まれたとしたらその絡んできた人をボコボコにすればいいだけなのに」
「その……あんまり騒動を起こさないでね?」
「大丈夫、今日はそんなことしない」
今日は……?その言い方だと以前騒動を起こしたと言っているようなものだと思うんですけど……?
「お昼はここの露店で買って食べよう、いいお店を知ってるから」
「あ、うん。エヌに任せるよ」
聞かなかったことにしよう。まぁ本人曰く何も問題を起こす気はないらしいし今日は何も考えずに楽しく街の散策をしようそうしよう。
エヌが紹介してくれた食べ物を食べたり、色々なお店を見て回った後は少し落ち着きのある商店街らしき場所へとやって来た。ちなみにエヌの紹介してくれた食べ物はどれも美味しかったです。
「ここ、ここが今日一番紹介したかったお店」
エヌが指をさしたお店、それは洋服屋さんだった。
「エヌってファッション……じゃなくて洋服好きなの?」
「うん、おしゃれするの好き。それにおしゃれすれば高確率でモテるから」
欲望に忠実なエヌさん……でもまぁおしゃれしないよりおしゃれした方が良いしモテるのは分かる。俺も昔かっこよっくなろうと頑張った時期があったしなぁ……まぁ結局かっこよくはなれず挙句の果てに姉に可愛い服を見繕ってもらう結果になったのだが。
「後ここの店主がすごい良い人。だからノアもここで洋服を買うべき」
「へ~そんなに良い人なんだ」
「うん、すごい優しい」
優しい人って言うのはとてもいいね。洋服とかを買う時に知識があって優しい人が近くにいると自分に合った洋服を自分のセンスを傷つけることなく選べることが多いと思うからありがたいね。
「それじゃあ行こう」
「うん」
「店長、遊びに来た」
「エヌちゃんじゃな~い……ってあら?」
「ど、どうも……」
一瞬脳がフリーズしたが俺はすぐさま意識を取り戻し挨拶の言葉を口に出す。
「紹介する。この子はノア、未来の私の旦那さん」
「エヌ?違うからね?嘘はつかないでね?」
何もおかしくはないと言った様子で俺のことを未来の旦那呼ばわりするエヌに訂正する様に求める。流石に無いとは思うけどそれで変な誤解を招いたらどうするの。
「初めましてノア君、私はモーレ。ここの店長をしてるわ」
「は、始めましてノアです」
俺が知ってる感じの女性だぁ……。
モーレと名乗った金髪の女性は今までに出会った女性とは違い、聞き馴染みのある喋り方で話をしている。普通かと言われると素直に頷くことは出来ないのだが、それでもこちらの世界の女性とは異なる喋り方に俺はある種の安心感を覚える。
「ノア、心配しなくていいこの店長は体は女でも心は男だから」
「はーい。見た目は女、心は男の超絶可愛いモーレ君でーす」
……オネェ……いやこれはオネェって言って良いのか???
ノアはこんらんした!!




