異世界チンピラが如く
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-冒険者ギルド-
「依頼クリアを受理しました。こちらが報酬と素材売却の合計銀貨3枚です」
クエストを終えた阿賀野たちは、受付に依頼達成の証拠と報告をし、報酬を受領していた。初級クエストなだけあって報酬も素材も安めだが、階級が低いので仕方ない。
だが銀貨は、正直言って現代の紙幣と硬貨に慣れ親しんだ阿賀野たちからしたら希少で大金に見える。そんな、初心者が稼いだ金を素行の悪い冒険者がカツアゲするのも珍しくない世界だ。
とは言っても、先日の試合を見たここのギルドの連中が絡んでくる可能性は低いだろう。となれば、注意すべきはギルドに属していない無所属のならず者か、他国のギルドに属している人間だ。
どちらにしろ、この銀貨は大切に持っておこう。
ギルドを後にし、銀貨をチャリンチャリンと鳴らしながら無用心に外を練り歩く。先ほど大切に持っておこうと考えたばかりなのに、どんな風の吹き回しか。
「瑞樹さん、そんなこれ見よがしに銀貨持ってていいんですか?」
「どうぞスリなりカツアゲなりしてくださいって感じよ」
阿賀野の意図が不明な行動に疑念を抱く二人だが、阿賀野は阿賀野で理由があってこの行動をとっているのだ。
それは、治安の調査である。
「この銀貨を取りにくる奴が誰なのかを確かめんだよ。俺はこの世界でも書房やる予定なんだからな」
「具体的には?」
「最初に盗りに来たヤツの性別・年齢・種族・単独かグループか、そんなところを見極めてハーラル王国内の犯罪を把握する」
阿賀野は二人に距離を取ってもらい、あたかも一人で歩いているような状況を作った。そして、しばらく歩いた後に路地に入る。10mほど路地奥に足を踏み入れれば、鴨がネギを背負って這い出てきた。
「ニーチャン、そんな銀貨を見せびらかしながら歩いたらダメだぜ?怖〜いおじさんが盗りにくるからなぁ」
「そうそう」
「金だけ置いていくなら何もしないぜ?」
性別は若年層後半であろ人間種の男性で複数犯、獲物はダガーナイフと短い曲刀。後ろに一人、前に二人の隊形だ。
明らかに典型的な強盗グループだ。だが、この三人を見ただけでこの国の治安維持と法律が分かった。
「なるほど。この国は治安が良いんだな」
「・・・・・・は?」
「表でスリを働く人間はいなかったし、堂々とひったくる奴もいない。つまり、この国の治安組織は充分に機能しているってこと。そして、わざわざ刃物で脅すやり口。殺して奪ろうとしない点から見て、強盗殺人も少ないとみた」
「そ、それがどうだってんだよ!」
「結論」
言い終わると同時に、後ろの男の肋に爪先蹴りを入れた。肋が折れた感触が伝わる。
「ギャアアアアアアアア!」
「ギムル!」
この男はギムルという名前か。まあ所詮は盗賊なので覚える価値もないだろう。
「さらに一つ、お前らはよそ者だな?」
「何故それを!?」
「この国に前から巣食う常習犯ならウワサが広まる。だが、俺もよそ者だがお前らに関する話なんてこれっぽっちも聞いたことがない」
更にギムルの持っていたダガーナイフを拾って投げつけ、片方の男の左足に刺した。
「アァッ、ガッ!」
「ワンド!」
今度はワンドという男が戦闘不能になったらしいが、手加減する気は毛頭ない。銀貨3枚を狙ったということは、逆に銀貨3枚分の何かを奪われるということを覚悟しなければならない。これは人間界の摂理である。更に、摂理ならば阿賀野の土俵だ。
「な、なんなんだよお前!」
「銀貨3枚をジャラジャラ鳴らしながらお前みたいな奴をカモにする本屋の主」
「意味分かんねえよ!」
最後に残った男は、半分パニック状態で突っ込んできた。両手で曲刀を構えて振り下ろそうとしている。
なので、ギムルとやらを盾にすることにした。
「え?」
仲間を盾にされるとは夢にも思ってなかったのだろう。その隙に、男の鳩尾に指の間に銀貨を挟んだ拳を叩き込んだ。
「ウッ・・・ウオェェェェェ」
「あ〜あ、景観のいい街が汚れちまうじゃあないか」
盾にしていた肉を投げ捨て、地面に蹲り苦しみ悶える男の前にしゃがむ。
「どうだ?銀貨3枚分の苦しみは」
「ヒィーーーーーー!!!」
「最後まで名も知らぬ男はギムルを担いで闇の中に逃げていった。ワンドはとっくに逃げ仰せた後だった。
「瑞樹さん、大丈夫でしたか!?」
「何もされなかった!?」
「おいおい、俺が脳足りんに遅れを取ると思ってんの?」
路地裏から出ると、心配そうに彩綾とアンネが待っていた。
「この国の犯罪はグループ性が高いな。それに、治安維持力が高いから凶悪犯罪も多発しない。チンピラやチンケな犯罪組織程度なら何とかなるだろ」
間違っても銀貨で殴りましたなんて言わない。絶対にアンネがうるさいから。
「でもいいの?仕返しに来たりしないかしら」
「意味不明というのは恐怖の根幹の一つだ。理解できないものを、人は何よりも恐れる。だから俺という理解不能なものに近づくことすらしてこねえよ」
先日の図書館で法律を勉強した際に、「凶悪犯である場合は生死を問わず対処してよい」と明記されていた。さすがは異世界。そこも中世的価値観かと関心した。
だが、今回はただの小物でありお世辞にも凶悪犯などと呼べる代物ではなかった。
「あれが犯罪の限界なら、書房を開いても問題ないだろう」
「じゃあまたマンガが読めるのね!」
「お前ハマりすぎじゃね?」
異世界お客様第一号がこれなのだ。開いたら常連が増えるのは想像に難くない。
しかし、そのせいで自分の探究に支障が出ては本末転倒だ。だからいつかは、この世界での従業員を確保しなければワンオペもいいとこである。
最近は、病院で医者が過労自殺したとかいう物騒なニュースも聞いた。
自殺はともかく過労にはなりたくない。仕事が恋人はシャレにならない。
休憩のため一旦宿に戻ってみると、主人が阿賀野宛てに手紙を預かっていたらしく、阿賀野にそれを渡した。
封を切ってみると、サラからだった。手紙の内容は簡潔に、北区の通りのある場所に来て欲しいというものだった。
このタイミングで場所まで指定する時点で、阿賀野は何の用で自分を呼び出したのか理解した。
「よし、休憩してる暇はない。俺はちょっと北区に用があるが、お前らどーする?」
「私たちはついて行くわ。アンタのその顔からして、少なくとも朗報なんでしょ?」
「もしかして・・・アレですか?」
「あぁ、八意書房異世界一号店の兆しだ」
アンフェール書きすぎて羽柴の人格憑依してません?




