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八意書房と異世界読者  作者: ディスマン


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15/20

皮剥いで因幡の兎にしてやるよ(殺意)

異世界ものムズいね

ミステリー考える方がよっぽど楽やわ

 こんにちは、皆さん。加藤彩綾です。

 今日は雲も少なく、日差しが良く照る快晴です。そんな空の下で私たちは今、



「キューーーーーーー!」

「掛かってこいやウサ公!生きたまま鍋に突っ込んでやるぜぇぇぇ!」

「うわぁ・・・」

「あはは・・・」


ウサギ相手にキレている阿賀野さんの所業にドン引きしています。





-10分前-

 西の森に入った阿賀野たちは、早速ホーンラビットを探して彷徨っていた。スライムみたいな雑魚敵を見かけることもあったが、依頼の魔物じゃないし労力を割きたくなかったのでスルーしていた。

 森に入って5分近く探していた時に、アンネから呼び出しがかかった。どうやら、お目当てのホーンラビットを見つけたようだ。

「ほら、あそこ」

 アンネの示す先には、頭に一角が生えた小型のウサギがいた。

 忙しなく周りをキョロキョロと見渡している。どうやら警戒しているらしい。


「で、どんなモンスター?」

「ホーンラビットは草食動物に見えるけど、ああして弱い魔物のフリして獲物を誘き寄せてるの。近づけば走ってきて頭の角でグサっていかれるわ」

「闘牛かよ」

 ただのウサギと舐めたらいかんと言うことだな。

 だが、その説明を聞いていの一番に挑みたくはない。まずは出方を見たいから、また彩綾を特攻させて観察でもしようかな。


「邪なこと考えるのやめてください」

「怖えよ、女怖えよ」

「本当に考えてたのね」


 陰でそんな会話をしていた時、頭上の木が突然弾けた。木片がパラパラと降り注ぐ。

 折れた木が倒れた頃に後ろを振り返ると、木片まみれのホーンラビットがこちらを見ていた。

 心なしか狙いが外れて悔しそうな雰囲気を感じる。

 彩綾が防御魔法を張ろうとしたが、その前に阿賀野が前に出てきた。

「あの、瑞樹さん?」

 並々ならぬ阿賀野のオーラにオドオドする彩綾。その阿賀野は、ホーンラビットに対して怒っていた。


「てめぇ、お気に入りの服が木屑だらけじゃねーか!!!」

「そこぉ!?」


 阿賀野は激怒した。かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)のウサギを殺さねばならぬと決意した。

「もう一回来いや!」

「うわぁ、殺る気満々だよ」

 ホーンラビットを挑発してヘイトを向ける阿賀野。ホーンラビットは挑発に乗ってしまい、近くの木々の間を高い脚力で高速移動してくる。

 それに対して、阿賀野はただ突っ立っているだけだった。

 狙いを定めて突進してくるホーンラビットに阿賀野がやったのは、たった一つのシンプルな方法だった。


「フラクチャー」

「キュッ!?」


 突然ホーンラビットの体勢が崩れ、地面に激突してしまう。すぐさま立ち上がろうとするも、何故か足に力が入らない様子だ。

「瑞樹さん、天理魔法使って何を?」

「ウサギってよ、骨がすげぇ脆いんだぜ。転倒や落下でもしない限りは基本折れねえが、あんな木の間を跳ぶような脚力だと足にくる負担はえげつない」

「でもホーンラビットはそんな柔じゃないわよ」

 この世界のウサギは地球のウサギとはわけが違う。なんせ、木の間を跳んだり穴開けるくらいの突進と角があるのだ。だが、阿賀野の天理魔法の最大の強みは、無理やり天理に従わせることではない。


「俺の常識では、あんなことやりゃバキッといくもんだぞ?」

 この魔法は、使用者の知識に依存する。よって、地球で培った阿賀野の知識がまんま反映されるのだ。つまり、阿賀野の前ではファンタジーは無効も同然。まさにファンタジーキラー。

「それにしても骨折(フラクチャー)って・・・」

「前みたいに完全な理論の詠唱がいらないってことが分かった。でもあれだな、なんか詠唱って中二感エグいな」


「キュ、キュ〜・・・」

「あ、瑞樹さん。ホーンラビットが」

 なんとか逃げようと足を引き摺るホーンラビットに、阿賀野はゆったりと近づいていく。右手には、カムランから貰った黒いナイフが握られていた。

「どこに行こうというのかね?」

「キュキュ!?」

 ニタリと笑いながら殺そうと近づいてくる阿賀野にホーンラビットは戦意を喪失した。非捕食者らしく逃走することしか考えていない、いや考えられなくなったのだ。

 生物としての恐怖が体を硬直させる。


「俺の世界にはよぉ、皮を剥がれたウサギの神話があんだけどよ。お前の皮剥いだら神話再現みたいで面白そうだな?」


 なんたるドSか。いや、これが人間に向かなかっただけまだマシか。

「まあ、俺も鬼じゃない。お前らの生態がどれだけ違うか、標本として可愛がってやるよ!」

「キューーーーーー!」

 グサリと、瀕死の魔物にナイフを突き立てる様は引くものがあった。なんなら高笑いしている。

 魔物に同情する日が来るとは夢にも思わなかったと、この時のことをアンネは後に語った。


「よし、コイツは標本として持って帰ろう。クエスト分のウサギ狩りに行くぞー」

「私の防御魔法も使い方広げたいですしね」

「なんなのこの凹凸コンビ」






 そして現在に至る。

 怒りでおかしくなった阿賀野は、彩綾たちと森の中を巡りながらホーンラビット狩りに没頭した。とっくに依頼達成に必要な数は揃えたのだが、もっと魔法の応用を見つけたいと思っていたからだ。

 阿賀野はホーンラビットを含めたこの世界の生物と自分の知識のズレを模索し、彩綾は防御はもちろんカウンターや攻撃に応用しようと奮闘していた。


「なあ、魔物って絶滅したりすんの?」

 狩りに満足した阿賀野がアンネに問いかける。

 もし、魔物が普通に生物として生まれてくるならこれ以上の狩猟はやめた方がいい。しかし、ゲームみたいにスポーンするのなら、なぜスポーンするのかというメカニズム自体を解明したい。


「魔物は生物なんだから、普通に生まれてくるし絶滅もするわよ?」

「マジか。やっちまったなぁ・・・」

 スポーンではなく摂理通りだったか。とするとやり過ぎたな。殺傷力の高い技を使うべきじゃなかった。

「もしくは回復魔法でひたすら繰り返したり・・・」

「拷問すぎます!」

 彩綾に咎められたが、阿賀野は本気でやろうとしていたのでナイスな是正だった。

「じゃあ今日はここまでかな。あーあ、どうせならデカい魔物か山賊でも相手したかったな」

「私は出来るだけ守るだけで終わらせたいんですが・・・」

「俺がいる限り諦めな」

「そんなぁ〜」



 阿賀野のエゲつない魔法もあったが、これで初心者クエストは完了した。あとは死体をギルドに持ち帰って報酬と素材を売るだけである。

「ちなみに幾らなんでしょうね。このホーンラビット」

「地球なら皮と肉で5000円くらいだが、角があるもんな」

「すっかり冒険者らしくなったね」

「あ、やべえ。オレ本屋なのに、このままじゃアイデンティティーが!」

「それは十分にあるから安心しな」

 彩綾は異世界を楽しめればそれでいい。阿賀野は異世界の未知を知りながら本屋をやりたい。

 今のところは彩綾しか目的を果たせていないように見えるが、扉さえあればこっちの物だ。

 阿賀野は、今後の書房展開にウキウキしながらギルドへと向かった。

なんか阿賀野に羽柴が憑依してない?

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