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八意書房と異世界読者  作者: ディスマン


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12/20

ここからは科学の時間です

魔法が弱いからハリー・ポッターでマグル侵攻を止められたんだけどね。

科学最強!

自然摂理最強!

 急に次の科目が中止となり、大講堂に集められた学園の生徒たち。彼らには、学園長きっての通達で特別授業が開かれるとしか聞かされていなかった。

 続々と集まって席につく生徒たち。学園の教師たちも勢揃いで教壇横の席に着いたり立っていたりしているのが見えた。特別とはいえ先生も集まるほどの違和感だらけの授業。疑いすら持ちかけていたところに、見知らぬ男女3人組が扉を開けて入ってきた。


「はーいどーもー」

「初めましてー!」

「はあ、なんで私まで・・・」


 恐らくは今回の講師たちなのだろうと察した生徒たちは、取り敢えず礼儀として拍手を送った。礼儀がなっていると感心した阿賀野は、早速教壇に立ち、彩綾とアンネは教師たちと同じ席に座る。

 格好もこの国では見かけないため、国外から呼んだ先生かと思ったが、今更そんなことで学園長がこんな大々的なことをする訳がない。つまり、この男はそんな人たちよりも遥かに凄い知識を持っていると、生徒の数名は推察した。

 満を辞して、阿賀野の科学講義が開かれる。


「特別講師のミズキ・アガノだ。先に言っとくが、俺はただの書房の店主だ。魔法研究者とかではないからそこんとこ宜しく」

急なカミングアウト。まさか教師ですらなかったとは・・・。そんな人に何ができると訝しむ人もいれば、それでここにいるとは何者なのだろうと興味が湧いた人もいた。

 阿賀野は講談を続ける。


「いやー皆さん魔法勉強してるんだよね?」

阿賀野の確認に生徒たちは頷く。

「結構結構。その上で言わせてもらうとしよう・・・。魔法至上主義はクソだと」


 突然の爆弾発言に、生徒たちの目が開かれた。魔法のことをまるで分かっていないと、嘲笑が起こる始末である。耐えかねた生徒の1人が挙手した。


「失礼します」

「おう。お前名前は?」

「グラブ・エーブルです。先生は、本当に魔法のことを分かっているのですか?」

「なきゃここに立ってねえだろ」

シンプルな正論で返すが、グラブはまだ止まらない。

「魔法はあらゆる事象を可能にする叡智の結晶です。魔法の秘めている可能性にどれだけの価値があるのか、アガノ先生はご存知ないでしょう?」

 あの教師とまではいかないが、魔法優遇思想の影響を受けていることは間違いない。

 生徒たちの冷えてきた雰囲気を見て、学園長が一言添えた。


 「これからアガノによって常識を疑う授業が繰り広げられることだろうが、これで心折れるようでは魔法の理解は深められんぞ。この男は魔法界に革命をもたらす。ワシが保証しよう」


 侮っていないわけではないが、学園長の言葉に全員の気持ちが引き締まる。ある程度やりやすくなった雰囲気を見て、羽柴が教鞭を取った。


「もう教師陣にはやったが、魔法は千差万別だ。雷だ炎だ変身だ、あらゆる魔法が存在するな?」

 教卓の上に羽柴がガラスの蓋を置く。教務室で行ったことを再現するのだ。

「よく見とけよー」

 いざ再現すると、個人差はあれど皆が信じられないものを見たような表情をした。

「馬鹿な!あり得ない!」

「どーゆうこと?!」

 今の現象の仕組みをわかるものはいなかった。もちろん教師たちも二度見てもわかっていない。

 羽柴は、この現象のメカニズムを解説した。


「はーい今から解説しまーす」

 生徒たちが一斉にノートに向かった。教師たちも阿賀野の言葉を聞き逃さまいと真剣である。

「なぜ火が燃え続けているか分かるか?」

 阿賀野の問題に誰も手を挙げなかった。火は基本的に燃え続けるものだと信じて疑わなかったからだ。だから、なぜ燃え続けるのかなんて考えたこともなかったのだ。


「まあ、燃える物だったり気体だったりと色々あるが、今回は火属性の魔法を題材にするぞ。火ってのはな、酸素がないと燃えねえのさ。お前らが日々吸ってる空気の中にある目に見えない物質が酸素だ。まあ、他に窒素とか色々あるが今はどうでもいい」

 阿賀野が黒板に酸素の説明と火の仕組みを書いている。生徒たちは必死に板書をしている。

「可燃物・酸素・熱、この3つの中で起きる連鎖反応が燃焼という現象だ。魔法だと可燃物も熱もないよな。つまり、火属性の魔法は魔力を可燃物とし、それに熱を発生させる。それがこの魔法の真相だ」

 ガラスの蓋を開けて、みんなに見えるように掲げた。何も仕掛けがなく、さっき言った可燃物もない証拠だ。

「つまり、密閉された空間で酸素を消費して燃え続ければ、やがて酸素が燃えるほどの量じゃなくなる。だから消えたってわけだ」

 なるほど、と生徒と教師から声が漏れてきた。どうやら科学について理解が深まってきたようだ。横を見れば学園長がうんうんと頷いていた。

「あと炎は、固体でも液体でも気体でもない、プラズマという特殊な状態だ。 気体を高温にすると、気体を構成している原子や分子という、これまた小さい物質の細胞みたいなものが激しく衝突し、プラスの電気を帯びた陽イオンと、マイナスの電気を帯びた電子に分かれる。あ、原子はそれぞれ電気の粒を持ってることも忘れるなよ?で、この状態がプラズマであり、通常の気体とは異なる性質を持つわけだ」

 火だけじゃなく、さらにおまけの真実まで出てきた。この世のあらゆるものは原始や分子と呼ばれる小さな粒で構成されており、極小の電気も浴びているらしい。そして、火はプラズマと呼ばれる特殊な状態で、電気を帯びていることも・・・。

 阿賀野の科学講義を聞いていた生徒の中から、一人の手を挙げる女子生徒が現れた。銀髪の髪がサラリと流れる。

「お、そこの君どーした?」

「アガノ先生。火がプラズマで電気を帯びている状態と言いましたね?」

「おう」


「つまり、雷魔法とほぼ同じだということですよね?」

 彼女の仮説に、多くの生徒がハッとした。火=プラズマ=雷という方程式が成り立つということは、雷属性の魔法で火も起こせることになるのだ。一部とはいえ、魔法に革命を起こす発見だった。


「正解!ちゃんと火とは何かを理解し解釈を広げるだけで、こんなにも応用の幅が広がる。結論、科学は万能。・・・これで講義は終わりだ」


 生徒たちが立ち上がり大きな拍手を送る。まさにスタンディングオベーションだ。

「あーそうだ。俺は一応本屋だからよ。近々この国で2号店を展開する予定だ。そんときゃ買いに来な?」





 講義に大満足したと思いきや、生徒先生を問わず質疑の嵐だった。その場で答えられるだけ答えたが、後は自分で研究するかウチの本を買えと言って終わらせた。本が自動翻訳されるのは確認済みなので、読めないから売れないという事態にはならないだろう。

 それより、あのプラズマに気づいた娘が気になった。ちょうど講堂を出て行こうとしているところを見つけたので呼び止める。

「Hey!そこの君ー!」

「?・・・私ですか?」

「そーそー。ちょちょちょこっち来て」

 阿賀野に言われて戻ってくる銀髪の女子生徒。

「名前は?」

「シーラ・エヴェリンです」

「シーラね。大変良くできました!」

 肩を叩いて彼女に称賛を送った。表情に出てはいないが、雰囲気で満更でもないようだ。

「そんな君に優秀賞。ってことではいこれ」

 阿賀野は、シーラに2冊の本を手渡した。勿論、シーラにはこれが何なのかは分からない。

「これは・・・?」

「お前はどうやら科学に向いてるようだからな。今時、常識とか定説とかに疑問を持てる人間は一握りだ。まして魔法があればなおさらな。てことでこの本を授けよう」

 阿賀野はシーラに本の説明を始めた。最初は、表紙に原子の図が書かれている本だ。

「こっちは『一度読んだら絶対忘れない化学の教科書』。さっきの原子や分子とかに関する化学っていう学問の分かりやすい教科書」

 今度は、帆船と海に浮かぶ丸い島が描かれた本を見せた。

「もう一冊は『折れた竜骨』。これだけはミステリー小説だな。世界観近いから読みやすいはずだけど」

「なぜミステリー小説を?」

「まずここの人間に必要なのは、凝り固まった頭をほぐすこと。つまり疑い考える力だ。ミステリーなんておあつらえ向きだろ?」

 シーラに2冊の本を渡した阿賀野は、その使い道を尋ねた。

「さあ、どうする?その本を自分のために使うのか、それともここの図書室なりに寄贈して学園のために使うか」

「・・・決まってます。図書室に寄贈します」

「ハハハハハッ、よろしい!」

 やはり、この娘は教育の上に立つ才能がある。知識は得ることも大事だが、周りや世界に発信しないと意味がない。だから図書館という施設が存在するのだ。


「ということで、よろしくの?アガノ先生」

「・・・・・・・・・え?」


 いやそれはおかしい。俺は交換条件で講義しただけだ。扉の移設さえしてくれればそれっきりのつもりだった。なのに、なぜか魔法学園の先生扱いされそうになってる。

「何を呆けておる。お主しか科学とやらに詳しい人間はいないのじゃから、その専門教師になるのは当然じゃろ」

「いや俺本屋つったじゃん?知識があるだけの一般ピーポーなの。たまにギルドで仕事しなきゃいけないの。そもそもダンジョンの扉をこっちに移動させたくてここ来てんの!」

「心配するな。約束は果たすし報酬も出そう。それに、ここの教師になればギルドの身分証も必要なくなるぞ?」

 サラが期待のこもった目で見てくる。せっかくの異世界でなんで足止めなぞされなきゃならんのだ。この世界を回って未知を探求する計画が長引いてしまうではないか。

 悩みながらふと横を見ると、シーラが本を抱えながらキラキラした目で阿賀野を見ていた。上目遣いやめて?なんか捨てたはずの罪悪感が再発しそうだから。

 阿賀野は10秒たっぷり考えた結果、ある決断を下した。


「うーーーん・・・いいや。めんどくせぇし。じゃあ条件だ。週に最大で3日だけ出てやる」

「よし、成立じゃな!」


 断ってもよかったが、この世界に知識を広めるには教育機関は適切だと判断した。それに、こっちの3日は現代では1日になる。そうすれば、俺の都合でいくらでも休業したりして時間を作れる。その代わり彩綾は学校あるから時間そんなにないけど。


 まぁ、それはそうとようやく扉を動かせる。これだけ働いたんだから、ちゃんとやってもらわないと割に合わない。


「よしアンネ、一緒に同行してくれ」

「えぇ・・・まあ今日は暇だし、いい授業も聞けたからよしとするわ」

「彩綾、俺と来い。宿取りに行くぞ」

「はい。勿論2人部y「別個だバカヤロー」(´・ω・)」


 予定ではあと2日で帰る予定だから、それまでに下地くらいは整えておかないといけないな。

定説の恐ろしいところって、誰も本当か調べなくなるところだと思います。

だから、新しい説を生み出す人より

正しいとされている説を疑う人が、一番研究者に向いてると思いますよ。

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