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第五話「エッフェル塔の人柱 後編」4
『……死ぬことなど何でもない。しかし征服され、名誉を失ったまま生き長らえるのは、毎日死ぬようなものである』
そう言い遺し、骸骨から魂が抜け出るように、彼は消滅した。
後にはバラバラになった遺骸が残るのみである。
「……偉大なる皇帝よ。貴方が本来の体であったら、俺の首など飛んでいただろう」
そう、この遺骸はナポレオンのものではない。
カシュマールには知る由もない事であるが、他ならぬ黒服である玉兎は知っている。
「廃兵院に返還されたのは別人の遺骸……ナポレオン本人の遺体は、未だウエストミンスター寺院に眠っている……」
なぜ遺骸をすり替えたのか。
それは英国がナポレオンという稀代の英雄を恐れたからだ。
死後の影響力、呪術的象徴としての力を抑え込むべく、英国は遺体を封印したのである。
「……む」
遠くを見つめる玉兎の前に、三枚の黄金の符が舞い寄った。
ナポレオンか、或いはこの塔に仕込まれていたであろう金烏の符である。
「……ようやく、これで四〇枚、か……」




