第五話「エッフェル塔の人柱 後編」2
『欲しいものは何でも吾輩に言うがいい。ただし時間以外だ』
ナポレオンの号令により、骸骨兵たちがサーベルを構える。
中には、マスケット銃を持つものもいるが、腐った銃はおそらく撃てまい。
だが、その数は百近い。
「流石にこの量は……とも言ってはおれんか」
玉兎は冷や汗が流れるのを自覚しながら、多数の符を展開する。
(――元より引けん。これほどの呪法、鬼門の力がほぼ枯渇した現在では不可能なはず。……金烏の符が複数使われているはずだ……!)
火を示す八卦の形に組み合わさった符が、炎を吹き上げる。
あらゆる文化圏において火は浄化に通ず。
蘇った死者に対しては、もっとも有効なのである。
『GAAAAAA!!』
それでも数が多すぎる。
火が燃え移ろうが構わず飛び込んで来る骸骨兵たち。
「ふん!」
サーベルをかわし、掌底を叩き込む。
馬車にでもはねられたかの如く、骸骨兵が吹き飛ぶ。
が、その隙に別の骸骨兵が次々襲いかかる。
「ぬ、ぐ……!」
雪崩のように襲いかかるそれは、殺到という言葉がふさわしい。
そうして団子のように固まったそこに、ナポレオンが騎馬突撃した。
「まずい……!」
『死ぬよりも苦しむほうが勇気を必要とするだろう』
サーベルの一撃は、群がる骸骨兵たちごと玉兎を切り裂いた。
「ぐあああああああっ!?」
凄まじい衝撃に、玉兎の体が打ち上げられた。
腹を割かれ、体を構成する霊符がまき散らされる。
落下する玉兎を狙い、再び骸骨兵が殺到してゆく。
が――
「!?」
その玉兎の体を掴み上げ、宙に持ち上げた者がいた。
背中の羽根をバタつかせ、必死に上昇するのは――




