第四話「エッフェル塔の人柱 前編」6
「……なるほど、最近の騒乱は貴様らのせいか」
「あんなもの、実験に過ぎぬ。ついでに黒服の力を確認したかっただけだ」
「金烏の札、返してもらうぞ……!」
「返すだと? 何様のつもりだ! 貴様らが独占する神秘は……」
「黙れ」
烈火の怒りをもって、玉兎が距離を詰める。
「……な!?」
術師同士の戦いを想像していたカシュマールが驚愕する。
それは明らかな武術の動きであった。
「ふん!」
玉兎の踏み込みが大地を揺らす。
文字通りの震脚、即ち八極拳である。
その踏み込みから放たれる拳は、大砲が如き一撃となってカシュマールに突き刺さった。
「ごはぁっ!」
反閇と震脚を組み合わせた一撃は、カシュマールの内臓を一撃で破砕した。
大量の血を吐きだすカシュマール。どう見ても致命傷である。
「く……くく。さ、流石だな黒服……だが、貴様の負けだ……」
「なに?」
「我が命を食らえЧернобог! 死霊の秘儀をもって偉大なる死者を蘇らせ給え!!」
カシュマールは天高く両手を突き出すと、空に向かってエネルギーを放出した。
本人はみるみるうちに衰弱し、白骨化する。
一方で、天に昇ったエネルギーは落雷となってエッフェル塔に落ちた。
その雷は、その根元に埋められた何かを呼び覚ます。
地面がめくれ上がり、馬を駆る英雄が飛び出した。
それはまさに絵画の如く。
『お前がいつの日か出会う禍は、お前がおろそかにした時間の報いである』
「……奴が真にロシア人なら……これを呼び出すのは……皮肉が効きすぎているな」
出現したのは、ナポレオン・ボナパルト、その人であった。




