第四話「エッフェル塔の人柱 前編」4
冬の夜は足が速い。
あっという間に闇に包まれる。
雪がぱらぱらと降る中、玉兎はエッフェル塔そばの茂みに隠れていた。
彼は朱雀の式を展開している。
陰陽五行思想において、朱雀は南、夏、火、火星などに関連する。
その式のおかげで、玉兎は火星が天にある限り、夏の加護を受ける事が出来るのである。
また、三の字の上の一本が二つに分かれたような八卦・兌により、猫のように夜目が利く。
このように二つの式を同時展開するのは極めて高度な技であり、玉兎以外にそんな事が出来るものはまずいない。
さて、草木も眠る丑三つ時。
それは現れた。
「……!」
闇に溶け込むような黒いローブの人物。
暗視の式を使っている玉兎でもなければ、視認できなかっただろう。
その手にはスコップと、ずた袋を引きずっていた。
そして、ざくざくと穴を掘り始める。
あっという間に穴が出来上がり、なるほど、それは墓穴に良く似ていた。
ローブの人物はずた袋の口を開くと、そこから骨を取り出した。
その頭蓋骨は明らかに人間のものである。
「……これ以上見ているわけにもいかんか」
玉兎は立ち上がり、ローブの人物へ向かって行く。
「貴様、何をしている!」
「Чернобог!」
ローブの人物は、弾かれるように飛びずさり、瞬時に何かを唱える。
直後、闇の中でも暗いとわかる闇が、光線のように玉兎へ放たれた。
「震!!」
玉兎は咄嗟に雷の式を放ち、これを相殺する。
「なっ!?」
それには相手も驚愕の声を漏らした。
「お、お前は何者だ!」




