第四話「エッフェル塔の人柱 前編」3
フランスは英国の対岸にある。
この時代、当然のように船で渡るわけだが、エッフェル塔のある巴里へはさらに陸路で遠い。
その巴里に入ると、半ばまで完成したエッフェル塔が見える。
玉兎はその真下で、陰陽八卦羅針盤をおもむろに取り出した。
羅針盤の上では、蛍のような光が暴れまわっている。
「……確かに、強力な呪いがこの辺りには充満しているらしい。しかし……これは相当な呪法だぞ……」
玉兎は深いため息をつき、辺りで聞き込みを始めた。
彼はフランス語も日常会話程度なら喋れる。
B・Bであればペラペラなのだが、あの風貌の彼はそもそも聞き込みにも向くまい。
作業員たちに話を聞くと、最近、不可解な事が多く起こる言う。
「どうもな、夜のうちに穴ぁ掘ってる奴がいるようなのよ」
「穴?」
「そう。朝になるとな、この塔の根元によ、いくつか穴があいてんだ。まるで『墓穴』みてえな……」
「……!」
墓穴、と聞き、玉兎の目が見開かれる。
「……失礼かもしれないが……一つ聞きたい事がある」
「何でえ?」
「これを作る際、『人柱』を埋めたりしていないだろうか」
「ば、バカ言うな! そんな事するわきゃあねえだろう!」
作業員は顔を真っ赤にして怒りだす。
「済まない……それは、そうだろうな」
「な、なんでえ、あの穴は、誰かが人柱を埋めようとしてたとでも言うつもりかい」
「……いや、単なる思い付きだ」
「怖ぇこと言うなよ。最近じゃ、幽霊見たなんて話もあるくらいでよ……」
「幽霊?」
「百年戦争んときの鎧騎士が、夜にうろついてたって言って寝込んじまった奴がいたんだよ」
「ふむ……」
話を終え、玉兎は考え込む。
「……張り込んでみるか」




